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第31話 愛は海峡を越えて

○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近 (昭和34年8月16日 夜)

  ネオンの七色の光が水面に揺れている

  豆千代 欄干に手をついて水面を見つめている 膝の上に置いた手の甲に涙が落ちる

  バイク 木屋町通りを甲高いエンジン音と共に疾走して行く

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 先斗町置屋「松本」の2階座敷(昭和26年12月 朝)

  好江 立って手紙を読んでいる


○ 先斗町置屋「松本」の帳場

  ドンドンドンドン!

  階段を勢い良く降りて来る音がする

  好江 来て金庫を開ける


   好江 大声で叫ぶ

  好江   「春ちゃん! 春ちゃん!」

      ドンドンドンドン!

   廊下を勢い良く走る音がする

   もみ春 帳場に入って来る

  もみ春  「お母さん 大きな声で 何ごとどす?」

  好江   「これ 見てみい!」

   好江 もみ春に手紙を渡す

   もみ春 手紙に目を落とす

  もみ春  「暫く お暇をもらいます 捜さないで下さい すんまへん 小鶴・・・」

  好江   「これどうゆうことえ!」

  もみ春  「さぁー」

   もみ春 とぼける

  好江   「あんた 知ってるやろ?」

  もみ春  「さぁー」

    もみ春 とぼける

  好江   「嘘つかんときよし! 金庫の中の小鶴の貯金なくなってますのや この金庫の

        番号 知ってるの この家で うちとあんただけどすし!」

  もみ春  「・・・」

  好江   「あんた開けて 小鶴に渡したんどすやろ!」

   もみ春 舌をぺろっと出して微笑む

  好江   「笑い事や ありまへん! この暮れの忙しい時に・・・ いったい 小鶴 

        どこに 行きましたんや!」

  もみ春  「さぁー」

   もみ春 とぼけて首を横に振る


○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近(昭和26年12月 早朝) 

  薄っすらと雪が積もっている

  小鶴(訪問着 羽織姿 小さなカバンを持っている) 豆千代 もみ春 リンダ

  白い息を吐いて立っている(豆千代 リンダと手を繋いでいる)


  小鶴   「春ちゃん おおきに」

   小鶴 頭を下げる

   もみ春 微笑み 首を振り

  もみ春  「これで金庫番 クビどすわぁ」

  小鶴   「お善哉 やったな」

  もみ春  「へー お餅が入った 濃いーのどっせ」

   小鶴 うなずく

  小鶴   「豆!」

   豆千代 ビクッとする

  小鶴   「これ 持っといて」

   小鶴 カバンからカメラを出して豆千代に差し出す

   豆千代 恐る恐る受け取って

  豆千代  「な 何どす?」

  もみ春  「へー カメラ・・・ 何か 写ってるんどすかぁー?」

   小鶴 微笑んで

  小鶴   「何やろな」

   小鶴 リンダを見て

  小鶴   「リン 元気でな」

   小鶴 リンダの頭を撫でる

   リンダ 微笑む

  もみ春  「そいで 何時 帰って来はるおつもりどす?」

   木屋町通り 車が止まる 運転席から田中が小鶴に会釈する

   小鶴 それを見て

  小鶴   「ほな 行くわ お母さんに あんじょうゆうといて」

  もみ春  「あんじょうにって・・・ 姉さん・・・」 

   小鶴 目に涙を溜めて微笑む

  もみ春  「・・・」

   豆千代 目に涙を溜めている

  豆千代  「・・・」

   小鶴  「泣くな!」

   豆千代 びっくとして

  豆千代  「はい!」

   小鶴 にっこりと微笑んで背を向けて歩いて行く

  もみ春  「姉ーさーん! 来週の月曜日 家元のお稽古どすしなぁー」

   小鶴 背を向けながら歩き 右腕を上げて手を振る 

  もみ春  「帰ってこんと こんどこそ追い出されまっせー」

   小鶴 背を向けて手を振る

   豆千代(リンダと手を繋いでいる) もみ春 目に涙を溜めて小鶴に手を振る  

  

  美砂子(N)「チヨさんが小鶴さんの姿を見たのは これが最後となりました」


○ 高瀬川の水面

  朝日に照らされてキラキラ光っている


○ 京都駅のホーム(昭和26年12月 朝)

  列車 白い煙を吐き止まっている

  小鶴 列車に乗って扉に立っている

  田中 ホームに立って小鶴に封筒を渡す

  汽笛が鳴り 列車 動き出す

  小鶴 田中に頭を下げる

  小鶴 遠ざかって行く


○ 車外

  雪化粧をした東寺の五重塔が遠ざかって行く


○ 回想 松本の帳場

  小鶴 受話器を耳に当てている

  田中(声)「実は 一カ月ほど前に大尉からあなたに伝言をお預かりしてたんです」

  小鶴   「うちに・・・」

  田中(声)「はい  京都に帰ったら最後に別れたあの橋の上で また お会いしたいと」

  小鶴   「・・・」

  田中(声)「それが 明後日 京都に到着されるはずだったんですが・・・・」

  小鶴   「・・・」

  田中(声)「さっき 司令部から連絡ありまして 大尉 大怪我を されているそうなんです」

   小鶴 受話器を握り締める

  田中(声)「で・・・ 小鶴さん 聞いてます?」

  小鶴   「へー・・・」

  田中(声)「幸い 命には別条ないみたいで 昨日 ソウルから福岡に向けて 飛行機に

        乗られたそうなんですが・・・」

  小鶴   「・・・」

  田中(声)「その 飛行機がですね・・・ 小鶴さん? 聞いてます?」

   小鶴 受話器を握り締める


○ 車内

  小鶴 窓際の席から車窓を見つめいる

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング


○ 車外

  桂川を渡る 小雪が舞っている


  田中(声)「そう 福岡の芦屋です・・・」

   小鶴 写真を見つめている


○ 車内(夜)

  小鶴 窓際の席に座って 暗い車窓を見つめている

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング

  小鶴 ふと上を向く


○ 夜空に浮かぶ月

  もみじ(声)「小鶴ちゃんは うちみたいに ならんといてね 好きな人と一緒になってね」


○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近 (昭和34年8月16日 夜)

  豆千代 欄干に座って 夜空を見つめている

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 関門海峡(昭和26年12月 朝)

  吹雪で荒れた海

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング


○ 連絡船のデッキ

  小鶴(ストールを頭に巻いている) 強い風に吹かれて吹雪の海を見つめている


○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近 (昭和34年8月16日 夜)

  豆千代 欄干に座って 夜空を見つめている 頬に涙が頬をつたう

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 吹雪で荒れる海

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング


○ 連絡船のデッキ

  小鶴(ストールを頭に巻いている) 強い風に吹かれて吹雪の海を見つめている

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング

  連絡船の気笛が大きく鳴る

  

○ 夜空に浮かぶ月 

  月が雲に隠れる

  ベッドサイドモニタの音が響く

  「ピーーーーーー」


○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近(昭和27年1月 夕)

  路上に薄っすらと積もった雪が夕日に染まっている

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング

  

○ 夕日に染まる松葉杖

  小鶴(小声)テネーシーワルツのハミング








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