第26話 再会
○ 如意ガ岳(右大文字)
大の字が赤々と燃えている
○ 高瀬川 (夜)
赤いネオンの灯りが揺れている
ジャズが流る
○ キャバレー ラッキーの店内 (昭和34年8月16日)
ジャズが流れている
客とホステス達で賑わっている
○ キャバレー ラッキーの楽屋
ホールからのジャズが小さく流れている
雅幸(派手なアロハシャツ) 楽屋の中を歌う楽曲(監獄ロック)を口ずさみながら落ち着かな
い様子で うろうろしている
ボーイ ドアから顔を出して
ボーイ 「マーボー お客さん!」
雅幸 「お客さん? あ ありがとうございます」
○ キャバレー ラッキーの裏口(外)
雅幸 ドアを開ける
雅幸 「まゆちゃん・・・」
真由美(純白のブラウス ピンクのスカート ポニーテール)立っている
雅幸 「ほんまに 来てくれたん?」
真由美 「来るって ゆうたやん!」
雅幸 「あー 入って 入って!」
真由美 「ありがとう この子も・・・ ええ?」
真由美の後から リンダ(13歳) 顔を出す
真由美 「この子 リンちゃん」
リンダ 恥ずかしそうに 会釈する
雅幸 「こ 今晩は・・・ え ええよ 支配人に ゆうたあるし 入って」
真由美 「ありがとう!」
真由美 リンダ 入る
○ キャバレー ラッキーの楽屋
ホールからのジャズが小さく流れている
雅幸 鏡の前で ヘヤースタイルを整えている
真由美 リンダ 後に立っている
支配人 ドアから顔を出し
支配人 「マーボー レディ?」
雅幸 親指を立て
雅幸 「オ オッケー!」
支配人 楽屋に入って来て
支配人 「マーボー 顔 引きつっとるで」
雅幸 「えっ?」
雅幸 鏡を見る
支配人 真由美 リンダを見て
支配人 「あー この子達が 噂の・・・」
真由美 雅幸を見て 小声で
真由美 「噂?」
雅幸 「あー こっちが 稲垣真由美さん 小学校からの幼馴染なんです」
真由美 恥ずかしそうに会釈する
雅幸 「それから こっちは・・・」
真由美 「リンちゃんです リンちゃん こう見えて 歌も踊りもうまいんですよ」
支配人 「ほー 1回 見てみたいな」
リンダ 恥ずかしそうに会釈する
支配人 「マーボーは これからの わしとこの スターや きばって 応援したってや」
真由美 リンダ うなずく
雅幸 恥ずかしそうに
雅幸 「支配人・・・ スターって まだ 早いですよ・・・」
ボーイ ドアから顔を出し
ボーイ 「マーボー また お客さん!」
雅幸 振り向き
雅幸 「あ ありがとう・・・」
雅幸 テーブルの角に置いた 赤いリボンが付いた小さな箱と手紙に目をやる
○ キャバレー ラッキーの裏口(外)
雅幸 ドアを開ける
泰史 和夫 立っている
泰史 「よっ!」
泰史 手を挙げる
和夫 「よっ!」
和夫 手を挙げる
雅幸 「何や お前らか・・・」
泰史 「何やとは 何や・・・ 親友に それは ないやろ!」
雅幸 「ゴ ゴメン・・・ で どないしたん?」
和夫 「どないしたんって・・・ それも ないやろ」
泰史 「応援しに 来たったんやんけ」
雅幸 「あ ありがとう・・・」
○ キャバレー ラッキーの楽屋
ホールからのジャズが小さく流れている
真由美 リンダ 支配人 笑顔で雅幸を囲んで立っている
泰史 和夫 入って来る
支配人 泰史 和夫を見て
支配人 「マーボー チンピラにも もてんのかいな」
泰史 「おっちゃん チンピラは ないわぁー」
支配人 「お おっちゃん?」
雅幸 「すいません こいつ 口 わるーて・・・」
支配人 「かまへん かまへん チンピラでも 応援してくれる人が多いほどええ」
泰史 「おっちゃん また チンピラって・・・」
泰史 真由美を見て
泰史 「真由美・・・」
真由美 うつむく
○ 室町通り 蛸薬師付近 (昭和26年 春 昼)
小鶴 好江 呉服屋から出て来る
小鶴 反物を持っている
○ 四条烏丸の路上
平日で 慌ただしく大勢の人達 車が行き交っている
好江 「うち 錦 寄って行くし あんた これ持って 先 帰りよし」
好江 小鶴に反物を渡す
小鶴 「はーい!」
好江 「油売らんと まっすぐ 帰るんえ!」
小鶴 「はーい!」
通りがかりの女が好江に
女 「いや! 姉さん!」
好江 「いや! お駒はん お久しぶり!」
好江 女 立ち話を始める
好江 小鶴に
好江 「どこにも 寄らんと 帰りよしや!」
小鶴 女に会釈する
女 小鶴に会釈して 好江と立ち話を始める
小鶴 歩きながら 小声で
小鶴 「そうは いくかい せっかく 鳥籠から出れたんや・・・」
小鶴 人混みの中を歩いて行く
美砂子(N)「昭和26年 この年の日本は第1回紅白歌合戦が放送され 日本初の総天然色映画
カルメン故郷へ帰るが上映されるなど 敗戦で疲弊していた国民がやっと娯楽を楽
しみ始めた年でした 一方 前の年に始まった朝鮮戦争が泥沼化の兆しを見せ始め
て マッカッサーが連合軍最高司令官を解任された年でもありました」
○ とある喫茶店 (カフェー)
店内 ジャズが流れて 客 まばばらに座っている
小鶴 窓際の席で外を眺めて 美味しそうにアイスクリームを食べている
マシュー(スーツ姿)と田中(日本政府連絡官) 談笑しながら入って来て小鶴の前の席に座る
小鶴 気づかず アイスクリームを食べている
マシュー 田中と話をしている
小鶴 アイスクリームを食べている
マシュー 田中と話をしている
小鶴 アイスクリームを食べている
マシュー 話しながら 小鶴を見る
小鶴 気づかず アイスクリームを食べている
マシュー 話しながら 小鶴を見る
マシュー 立ち上がる
小鶴 気づかず アイスクリームを食べている
マシュー(声)「ミス?」
小鶴 気づかず アイスクリームを食べている
マシュー(声)「ミス?」
小鶴 びくっとして 見上げる
マシュー 「アー・・・ ドゥ ユー リメンバー ミー?」
小鶴 「・・・」
小鶴 びっくりして 声がでない
マシュー 微笑み
マシュー 「リメンバー ミー?」
小鶴 「・・・」
小鶴 びっくりした顔で マシューを見つめる
マシュー 「アー・・・ オケイ・・・ ワタシ オボエテマスカ?」
小鶴 「・・・」
小鶴 困った顔をする
マシュー 「ソーリー アイ ハヴ ロング パーソン・・・ ゴメンナサイ」
マシュー 席に戻ろうとする
〇 回想 山荘へ続く雪道
マシュー 雪の中 微笑み 手を差し出す
〇 とある喫茶店 (カフェー)
小鶴 「あっ!」
マシュー 振り返る
小鶴 マシューを見つめ
小鶴 「メ・・・ メリークリスマス・・・」
マシュー 「イエス!」
小鶴 軽く うなずく
マシュー 「アー・・・ マイ ネーム イズ マシュー オーエン」
小鶴 驚いた顔をする
マシュー 「オーエン・・・」
小鶴 きょとんとした顔で黙っている
マシュー 田中を呼ぶ
マシュー 「タナカサン!」
田中 マシューの横に立つ
マシュー 男に話す
田中 小鶴に
田中 「彼の名前はマシュー・オーエンと言います 失礼ですが あなたのお名前を
お聞きして よろしいでしょうか?」
小鶴 「・・・」
マシュー 微笑む
小鶴 小声で
小鶴 「うち?」
田中 うなずく
小鶴 「こ 小鶴どす」
田中 「小鶴さん?」
小鶴 うなずく
田中 「ありがとうございます」
田中 マシューに話す
マシュー 田中に話す
田中 「彼が また お会い出来て光栄ですって 言ってます」
小鶴 無表情で マシューに会釈する
マシュー 田中に話す
田中 「彼が あの雪の夜の事 覚えてますか? と」
小鶴 うなずく
マシュー 田中に話す
田中 「私達 今 時間が ありません 彼が また お会い出来ますかっと」
小鶴 「・・・」
マシュー 田中に話す
田中 「小鶴さんに お渡ししたい物が あるそうです」
小鶴 「・・・」
マシュー 微笑んでいる
小鶴 「うちに?」
田中 「はい・・・」
マシュー 微笑んでいる
○ 高瀬川の水面
ネオンの七色の光が水面に揺れている




