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第22話 戸籍謄本の謎

○ 四条通り (昭和34年8月16日 昼 南座付近)

  大勢の人が行き交っている


○ 質屋のショーウィンドウの前

  雅幸 覗き込んでいる

  雅幸 抱えたギターを見つめる


○ 病院 ナースステイションの横 (平成 春 朝)

  美砂子 久美 立っている


  久美   「ごめんなさい お電話してしもて・・・」

   久美 頭を下げる 

  美砂子  「いえ」

  久美   「美砂子さん お仕事 大丈夫ですか? 今日 横浜で会議があるんちゃいますの?」

  美砂子  「いいんです 大丈夫ですよ 心配しないで下さい」

  久美   「ほんまに? すんません!」

   久美 頭を下げる

  美砂子  「それで チヨさん 大丈夫ですか?」

  久美   「朝 起きたら お便所の前で倒れたはっんですわ」 

  美砂子  「そうですか・・・」

  久美   「心臓は おチヨさんの持病やし いつもの発作だけやったら ええんやけどね」


○ 病院 ナースステイションの横の窓際

  窓から 暖かい日差しが差し込んでいる

  美砂子 久美 窓の外を眺めて立っている


  久美   「不思議なんですけど・・・ 美砂子さんとは こないだ おおたとこやのに

        何んや 昔から 知ってる様な気がするんです それでつい・・・」

  美砂子  「そうですか・・・ 実は 私も なんです」

   久美 美砂子の顔を見る

  久美   「・・・」

  美砂子  「何んか 懐かしいんです」

  久美   「懐かしい?」

  美砂子  「はい 何が懐かしいのか まだ はっきりとは判りませんけど・・・ 何んか 

        懐かしいんです」

  久美   「そうですか・・・ ほんま 何や 不思議やね」

   美砂子 久美 窓の外を見つめる


  (回想)少女 一番奥のドアの前で笑顔で手招きをしている


○ 満開の桜の木(窓の外)

  風に吹かれて花びらが流れて行く


○ 病院 面会室

  窓から 暖かい日差しが差し込んでいる

  美砂子 久美 窓の外を眺めて立っている


  美砂子  「実は 京都に来たのは もう一つ目的があったんです」

  久美   「もう一つ?」

  美砂子  「あっ はい・・・ 実は・・・ 私の母なんですが・・・」

  久美   「お母さん・・・? 確か美砂子さんが小さい時にお亡くなりにならはったんやったね」

  美砂子  「はい」

  久美   「私と一緒でホステスさん でしたね」

   美砂子 軽く うなずくき

  美砂子  「はい 実は・・・」

   美砂子 窓の外を見つめる

  久美   「実は? 実は 何ですか?」

   久美 美砂子の顔を覗き込む

  美砂子  「3年前 結婚した時なんですけど 初めて 私の戸籍謄本を見たんです」

  久美   「戸籍謄本?」

  美砂子  「はい・・・ 私 それまで施設の理事長から私の本籍は横須賀とは聞いてただけで

        戸籍謄本は見た事なかったんです」

  久美   「それで 入籍のときに・・・」

  美砂子  「はい・・・ で そこには・・・」

  久美   「そこには?」


○ 病室の窓 (平成 春 朝)

  窓の外 桜の花びらが散っている

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 車内 (昭和21年12月25日 夜)

  エンジンの音

  小鶴 黒い布で目隠しをされて揺られている


○ 回想 山荘の雪道 

  マシュー 微笑んで手を差し出す  


  マシュー  「ノープロブレム・・・」


○ 回想 桜の木の下

  幸夫    「アメリカ人は そんな悪い人達じゃないんだ ほんとうは みんな 明るくて

         陽気な人達なんだ・・・」


○ 山荘の門前 (昭和21年12月25日 夜)

  粉雪が舞っている

  車の横に マシュー 小鶴 もみ春 豆千代 立っている

  小鶴 もみ春 豆千代 黒い布で見隠しをされて赤い番傘をさしている

  もみ春 豆千代 小鶴 ゆっくりと車に乗る 

  マシュー ドアを閉める

  車 ゆっくりと動き出す

  マシュー 遠ざかって行く車に ゆっくりと敬礼する


○ 車内 

  エンジンの音

  小鶴 黒い布で目隠しをされて揺られている  


○ 暗 

  マシュー(声)「メリークリスマス プリンセス・・・」

  幸夫  (声)「アメリカは また戦争するだろうね それが勝った者の義務と言うか宿命かも」


○ 車内 

  エンジンの音

  小鶴 黒い布で目隠しをされて揺られている 


○ 雪道 (夜)

  粉雪が舞っている

  赤く光った車のテールランプが遠ざかって行く


○ 病室の窓 (平成 春 朝)

  窓の外 桜の花びらが散っている

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 高瀬川に架かる小橋の上 六角付近 (昭和34年8月16日 夕方)

  夕日が水面に揺れている 

  雅幸 橋の欄干に腰かけて膝を叩きテンポをとって小さな声で「ダイアナ」を歌い出す

     (スローテンポ) 


  I'm so young and you're so old・・・

  I'm so young and you're so old・・・

  This, my darling, I've been told

  I don't care just what they say

  Cause forever I will pray

  You and I will be as free

  As the birds up in the trees

  Oh, please stay by me, Diana・・・


○ 木屋町通り

  手に団扇を持った浴衣姿の男女が行き交ってバイクが甲高いエンジン音を立てて走り去って行く

  真由美(派手な服装) 路上に立って雅幸を見ている


○ 高瀬川に架かる小橋の上 

  雅幸 橋の欄干に座って赤いリボンのついた小さな箱を見つめている


  真由美(声)「マーボー?」

   雅幸 顔を上げる

   真由美 立っている

  雅幸   「ま まゆちゃん・・・ 久しぶり・・・」

   雅幸 慌てて箱を足元に置く

  真由美  「う うん」

  雅幸   「ど どっか 行くとこ?」

   真由美 軽く首を横に振り

  真由美  「うううん 横・・・ 座って ええ?」

   雅幸 軽くうなずいて

  雅幸   「う うん」

   真由美 雅幸の横に座る

  真由美  「また 練習?」

  雅幸   「うん」

  真由美  「あれ?」

  雅幸   「何?」 

  真由美  「ギターは?」

  雅幸   「ギター?」

  真由美  「うん・・・ ここで いつも ギター 弾いてるやん」

   雅幸 とぼけて

  雅幸   「あー さっき 弦切れて 今 修理中」  

  真由美  「ふーん それにしても マーボー ほんま歌が好きなんやな」

  雅幸   「実はな・・・」

   真由美 雅幸の顔を覗き込み

  真由美  「実は・・・ 何?」

  雅幸   「今日 デビューやねん」

  真由美  「デビュー?」

  雅幸   「うん! ラッキーでボーイはボーイやけど歌手でも給料もらえる様に なったて

        ん!」

  真由美  「へー そやったら プロやん! おめでとう!」

  雅幸   「プロって そんな たいそうなもん ちゃうけど・・・ ありがとう 今日な

        東京から演歌の人が来はんねん その前座やけどな」

  真由美  「ふーん・・・ 演歌? その人 有名な人?」

  雅幸   「俺 演歌 興味ないし あんまり知らんけど 楽団もついて来るし 売れてる人

        ちゃうかなー」

  真由美  「なんやそれ? 名前は?」

  雅幸   「名前? あー 何て ゆうたかなぁー」

  真由美  「何や その程度の人かいな」 

  雅幸   「でも 今日 お客さんも いっぱい 来はるみたいなんや・・・ おえっ!」

   雅幸 えずく

  真由美  「ど どないしたん?」

  雅幸   「何か 緊張して さっきから吐きそうやねん・・・」

  真由美  「そうゆうたら 顔色 悪いわ 死にそうな顔してる」

  雅幸   「ほんま? おえー!」

   雅幸 路地へと走って行く

  真由美  「マーボー 大丈夫かぁー」

   真由美 雅幸の後を追う


○ 高瀬川 (夜)

  水面にネオンの灯り揺れる


○ 高瀬川に架かる小橋の上

  雅幸 真由美 橋の欄干に腰かけている


  真由美  「大丈夫? おさまった?」

   雅幸 白いハンカチで口を押さえて

  雅幸   「う うん・・・」

  真由美  「吐くほど緊張してるんや」

   雅幸 軽くうなずく

  真由美  「それ 何時からなん?」

  雅幸   「それって?」

  真由美  「デビューやん!」

  雅幸   「大文字 終わってからやし 9時半頃かな」

  真由美  「ふーん」

   真由美 空を見上げる

  雅幸   「見に来る?」

  真由美  「・・・」

  雅幸   「あっ! ごめん・・・」

   真由美 雅幸の顔を見て

  真由美  「ごめんって?」

  雅幸   「・・・」

  真由美  「うち 別れてん!」

  雅幸   「えっ?」

  真由美  「金 使い悪いし 浮気はしまくるし 暴力 振るし」

  雅幸   「・・・」

  真由美  「うちが体張って稼いだお金 酒 飲んであっとゆう間に使こてしまいよんねん

        もん」

  雅幸   「そう・・・」

   真由美 軽く うなずいいて

  真由美  「まぁ 仕事は まだ 続けてるけどな なかなか辞められへんねん」

  雅幸   「辞められへんって?」

   真由美 水面を見つめて

  真由美  「借金・・・」

  雅幸   「そう・・・ いくら?」

   真由美 雅幸の顔を見て微笑む

  真由美  「うち もう 京都ええかなぁー」

   真由美 両腕を上に伸ばし 夜空を見上げる

  雅幸   「・・・」

  真由美  「私のこと 知らん人ばっかりがいるとこで やりたい事やって 一から 出直し

        たいかなーて」

   雅幸 真由美の顔を見て

  雅幸   「やりたい事って?」

  真由美  「うーん まだ 判らん・・・ でも こんな汚れてしもた身体やし もう遅いか

        なぁー」

   真由美 水面を見つめる

  雅幸   「汚れた身体って・・・ そんなん ぜんぜん 遅ないよ 俺ら まだ18やんか 

        人生これからやん!」

   真由美 雅幸の顔を見詰め

  真由美  「そうかな・・・」

  雅幸   「そやて!」

  真由美  「ありがとう!」

   真由美 目に涙を溜めて微笑む

  雅幸   「・・・」

   雅幸 真由美の顔を見詰める

  真由美  「入いんの いくら?」

  雅幸   「いくらって?」

  真由美  「ラッキー・・・」

  雅幸   「見に来てくれるん?」

  真由美  「入んのん 高いんやろ?」

  雅幸   「何ゆうてんの 支配人にゆうて裏から入れたげるよ」

   真由美 にっこり笑って

  真由美  「ほんま?」

   雅幸 にっこり笑い うなずき 手にした白いハンカチを見て

  雅幸   「あ! これ ありがとう 洗ろて 返すし」

   雅幸 ハンカチをズボンのポケットに突っ込む

  真由美  「洗ろて返すって・・・ そんなん返されても・・・」

   真由美 微笑む

   雅幸  微笑む

  真由美  「言いにくいんやけど・・・ お願いが あんにゃけど・・・」

  雅幸   「お願い? 何?」

  真由美  「女の子 一人 連れてって ええ?」

  雅幸   「一人ぐらいやったら ええと思うけど・・・ 友達?」

  真由美  「今 一緒に住んでる子やねん」

  雅幸   「一緒に住んでるって?」

  真由美  「一緒の店で働いてる子」

  雅幸   「へー ええよ」

  真由美  「おおきに!

  雅幸   「あー お腹 空いて来た!」

  真由美  「えっ?」

  雅幸   「そやかて さっき食べた 天津飯 全部 出たんやもん」

  真由美  「もう! 汚なー」

   真由美 微笑む

   雅幸  微笑む


○ 高瀬川 (夕暮れ)

  水面にネオンの灯り揺れる 次第に陽光でキラキラと光りだす 








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