表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/36

第20話 京都の休日 日本を救った少女達

○ 病院の長い廊下 (平成 春 朝)

  足音 コツコツコツ・・・ 


  美砂子(N)「それは 突然 やって来ました」


○ 石畳 (朝)

  黄色いヘップバーン・サンダル 急ぎ 歩を進める

  足音 カツカツカツ・・・ 


○ 祇園 巽橋 (昭和34年7月16日 祇園祭 宵山 昼前)

  雅幸 橋の上に立って辺りをキョロキョロと見渡す


  クレジット 右下に小さく 昭和三十四年 宵山 


○ 石畳 

  黄色いヘップバーン・サンダル 急いで歩を進める

  足音 カツカツカツ・・・


○ 祇園 巽橋 

  雅幸 背を向けて立っている

  豆千代の手が雅幸の肩を叩く

  雅幸 振り向く 誰もいない 辺りを見渡して下を見る

  豆千代 しゃがみ込んで雅幸の顔を見上げて

  豆千代  「ばれたか・・・」

   豆千代(白いブラウスをロールアップ ベージュのスカート 髪を編んでヘップバーンカット

       風にしている) 立って ぺろっと舌を出す            

   雅幸 驚いて豆千代を見て

  雅幸   「ね 姉さん? その かっこ・・・」

   豆千代 微笑んで

  豆千代  「びっくりしたぁー? どう? 似てるかな?」

   豆千代 くるっと回る

  雅幸   「えっ?」

  豆千代  「どう?」

   豆千代 くるっと回る

  雅幸   「誰に?」

   豆千代 くるっと回る

  雅幸   「・・・」

   豆千代 くるっと回る

  雅幸   「・・・」

   豆千代 怒って

  豆千代  「もう! 何回 回らせるつもり? オードリー・ヘップバーンやん!」

  雅幸   「あー」

   豆千代 くるっと回って

  豆千代  「ローマの休日 やろ?」

  雅幸   「そやね・・・」

   雅幸 うつむく

  豆千代  「あー 目ー回った・・・ どうしたん? やっぱり変やった?」

  雅幸   「ちゃうよ・・・」

  豆千代  「そやったら・・・ 何か 元気ないやん」

  雅幸   「そ そんなことないよ・・・」

   豆千代 雅幸の顔を見て

  豆千代  「あら・・・」

  雅幸   「えっ?」 

  豆千代  「ほっぺた まだ 青たん でけてるやん もう 痛と ない?」

  雅幸   「うん もう 痛とない・・・」

  豆千代  「何で 喧嘩なんか したん?」

  雅幸   「それは・・・」

  豆千代  「うち 喧嘩なんかする 野蛮な人 嫌いどすー」

   雅幸 顔を反らし 空を見上げる

  豆千代  「・・・ どっか 行く?」

  雅幸   「どっかって?」

  豆千代  「もう! デートは 男が リードしな!」

  雅幸   「う うん・・・」

   豆千代 雅幸の顔を覗き込んで

  豆千代  「マーボちゃん もしかして 女の子とデートすんのん 初めてやろ?」

   雅幸 恥ずかしそうに

  雅幸   「えっ? そ そんなことないよ・・・」

  豆千代  「ほんまにー?」

   豆千代 また 雅幸の顔を 覗き込む

  雅幸   「ほ ほんまや・・・」

  豆千代  「デートの相手 おばちゃんやから 機嫌 悪いの? 精一杯 若作りたんやっけど

        なぁー この頭 朝 5時に起きて編んだんやけど・・ やっぱり 変?」

   雅幸 首を横に振る

  雅幸   「そ そんな事ないよ あんまり 変わったから ちょっと びっくりしただけや」

  豆千代  「ほんまに? そやったら ええんやけど・・・ 暑いなー 涼みに行かへん?」

  雅幸   「涼みに?」

  豆千代  「ええとこ 知ってるえ」

  雅幸   「う うん・・・」

  豆千代  「そうと 決まれば レッツゴー!」

   豆千代 歩いて行く

  雅幸   「あー ちょっと 待って!」

   豆千代 振り返り

  豆千代  「えっ?」

  雅幸   「自転車・・・」

  豆千代  「自転車? マーボちゃん デートに 自転車 乗って来たん?」

  雅幸   「えっ? 乗って来たら あかんかった?」

   豆千代 微笑んで

  豆千代  「早よ!」

  雅幸   「えっ?」

  豆千代  「もう! 早よ!」

  雅幸   「う うん!」 

   雅幸 橋の側に置いてる自転車を取りに行って自転車を押して来る

  豆千代  「ほら またがって!」

  雅幸   「えっ?」

  豆千代  「ほら!」

  雅幸   「う うん・・・」

   雅幸 自転車にまたがる

   豆千代 自転車の後ろに座る

  雅幸   「・・・」

   豆千代 雅幸の肩を掴んで

  豆千代  「レッツゴー!」 


○ 白川沿いの道 (知恩院門前 昼前)

  青々とした 柳並木

  豆千代 雅幸 自転車に乗っている(二人乗り)

  雅幸 こいでいる 

  二人 風を受けている


  雅幸   「何で 祇園やったん?」

  豆千代  「えっ?」

  雅幸   「待ち合わせ」

  豆千代  「あー 祇園やったら ばれへんと思て」

  雅幸   「そ そっか・・・ 今日 休み?」

  豆千代  「今日? 夜 お座敷 入ってる」

  雅幸   「宵山やもんな」

  豆千代  「ほんまに ローマの休日 みたいやー」

  雅幸   「姉さん ローマの休日 好きなん?」

  豆千代  「うん! グレゴリー・ペック 男前やん!」

  雅幸   「何や そっちかいな」

  豆千代  「あの映画 お客さんと見に行ってん」

  雅幸   「お お客さんと?」

  豆千代  「見てる間 ずーと 手ー 握ったはって きしょく悪かったわぁー」

  雅幸   「そ そう・・・」

  豆千代  「今度 一緒に 見に行こかー?」

  雅幸   「えっ? 何て?」

  豆千代  「飛ばせー!」


○ 白川沿いの道 (昼前)

  青々とした柳並木の道を疾走する自転車


○ 病室の窓 (平成 春 朝)

  窓の外 桜の花びらが散っている

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 山荘の次の間 (昭和21年12月25日 夜)

  マシュー 襖の前に立って 襖を開ける


  小鶴 もみ春 豆千代 地方 入って来る

  小鶴 マシューの顔をちらっと見る

  マシュー 「サンキュー」

   小鶴 マシューを見る

   秘書(男 スーツ姿) 入って来る

  秘書   「中尉 どうですか?」(英語)

  マシュー 「どうやら 何とか まとまりそうです」(英語)

  秘書   「そうですか」(英語)

  マシュー 「日本は譲りませんでした」(英語)

  秘書   「譲らなかった?」(英語)

  マシュー 「はい 一歩も・・・」(英語)

  秘書   「一歩も? 」(英語)

  マシュー 「ちょっと 危ない場面も あったんですが・・・ こっちの負けです」(英語)

  秘書   「負けた? でも 何で 日本が そんな強気に出られたんですか?」(英語)

  マシュー 「彼女達なんです」(英語)

   マシュー 小鶴 もみ春 豆千代を見る

   秘書 小鶴 もみ春 豆千代を見て

  秘書   「ほう これは お美しい・・・ この彼女達が?」(英語)

  マシュー 「はい 彼女達が日本を救ったんです 我々は彼女達に負けたんです」(英語)

   マシュー 秘書 小鶴 もみ春 豆千代を見る   

   小鶴 もみ春 豆千代 マシューと男を見ている

   秘書 微笑み 冗談ぽく

  秘書   「どの国でも女は強しですね 中尉 京都にもあれを落とすべきだたですね」

        (英語)

   マシュー 首を横に振り

  マシュー 「何で あんな物 落したのか・・・」(英語)

  秘書   「・・・」

  マシュー 「あれを落さなくても 日本は 降伏していたはずだ 元はと言えば こっちが 

        仕掛けた 戦争ですよ 私達には なるべく穏やかに終わらせる責務があった

        はずだ」(英語)

  秘書   「・・・」

  マシュー 「本当に ここに落とさなくって良かった ここは日本の心ですから」(英語)

  秘書   「中尉 それ以上は・・・ 言動に ご注意を 壁に耳ありですよ」(英語)

  マシュー 「次の戦争は たぶん 私は最前線ですよ」(英語)

  秘書   「中尉・・・ まぁ こうなる事も シュミレーション済みです」(英語)

  マシュー 「そうですか」(英語)

  秘書   「問題は ソ連と中国が どう出るかですが・・・」(英語)

  マシュー 「あの 山岡と言う男 我々にとって 有益か不利益か 慎重に見極めないと 

        これから 苦労させられそうですよ」(英語)

  秘書   「さすが 大本営作戦参謀だ まぁ 詳しい話は また後でゆっくりと とにかく 

        今日はお疲れ様でした」(英語)

   秘書 マシューの肩を 軽く叩く 

   マシュー 小鶴を見る

   小鶴 マシューを見る


○ 山荘の廊下 (夜)

  マシュー 秘書 小鶴 もみ春 豆千代 地方 玄関へと歩いている

  秘書 立ち止まり 横の襖を開ける

  マシュー 小鶴 もみ春 豆千代 地方 立ち止まる


   秘書 座敷に

  秘書   「いいですよ お願いします」(英語)

   座敷からカメラ(大きなフラッシュライトが付いている)を持った報道カメラマンが出てくる

  秘書 マシューに

  秘書   「そうだ」(英語)

   秘書 カメラマンに

  秘書   「一枚 余裕ありますか?」(英語)

  カメラマン「あっ はい! 大丈夫ですが・・・」(英語)

   秘書 マシューに

  秘書   「中尉 記念にどうですか?」(英語)

  マシュー 「記念に?」(英語)

  秘書   「彼女達と 一枚」(英語)

   マシュー 小鶴 もみ春 豆千代を見る

   小鶴 もみ春 豆千代 うつむいている

  マシュー 「・・・」

   秘書 マシューに

  秘書   「中尉 今日は アメリカが 初めて負けた 歴史的な日なんですよ」(英語) 

   秘書 マシューを座敷に 押し込み 小鶴 もみ春 豆千代 地方に

  秘書   「さあさあ プリンセス達も 入って 入って!」(英語)

   小鶴 もみ春 豆千代 地方 恐る恐る座敷に入る

   座敷 (中央に机 机の上にマッチ箱を乗せた灰皿 床の間に椿の掛け軸)

   秘書 小鶴 もみ春 豆千代 地方に カメラを指差し

  秘書   「ピクチャー・・・ ピクチャー・・・ オーケー?」

   小鶴 もみ春 豆千代 地方 お互いの顔を見合わせる

  秘書   「そうだなぁー 中尉 そこに座って下さい」(英語)

   秘書 机に目を向け 小鶴 もみ春 豆千代 地方に

  秘書   「あなた達はっと 中尉の両脇に座って」(英語)

   マシュー 仕方がなく座る

   小鶴 もみ春 豆千代 地方 うつむき立っている

   もみ春 小鶴に 小声で

  もみ春  「ぶ 豚は 遠慮しときますわぁ・・・」

  小鶴   「えっ?」

   小鶴 豆千代を見る

   豆千代 うつむいて首を横に振る 

  小鶴   「えっ? あんた 覚えときや・・」

   小鶴 豆千代をにらむ

  カメラマン「もう 行かないと・・・」(英語)

   小鶴 もみ春 豆千代 地方 もじもじして動かない

  秘書   「じゃあ あなただけでも」(英語)

   秘書 小鶴の手を引き マシューの隣に座らす

   カメラマン カメラを構える

   マシュー 小鶴 無表情

  秘書   「ほら 笑って 笑って もう 少し 身体を寄せて」(英語)

  山田(声) 「もう 少し ひっついて!」

  秘書   「笑って 笑って・・・」(英語)

  山田(声) 「笑顔 笑顔 笑って 笑って!」

  カメラマン「撮ります」(英語)

  幸夫(声) 「このボタン また 鶴子ちゃんに 付けてもらいたいんだ どんな事があっても

        生きて行くんだよ!」

  幸夫の笑顔

  甲高い飛行機のエンジン音

  マシュー 小鶴 フラッシュライトの強い光を浴びる


○ 病室の窓 (平成 春 朝)

  窓の外 桜の花びらが散っている

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


○ 地下のジャズ喫茶 (昭和34年7月16日 祇園祭 宵山 昼前)  

  店内 ジャズが流れ 若者達で満員

  豆千代 雅幸 席に座っている


   雅幸 店内を見渡して

  雅幸   「へー 姉さん こんなとこ 知ってたんや」

   雅幸 ストローでメロンソーダを吸う

  豆千代  「前に お客さんに連れて来てもろたん」

  雅幸   「へー お客さんに? そのお客さん ええ趣味したはるな」

  豆千代  「うん お爺さん やけど ハイカラさんやねん」

  雅幸   「そ そう・・・」

  豆千代  「ここ きっと マーボちゃん 好みかなと思おて 覚えておいたん」

   雅幸 辺りを見渡して

  雅幸   「ね 姉さん その マーボちゃんって 止めてくれる?」

  豆千代  「そうかぁー? かんにん かんにん やっぱり 恥ずかしいな そやった

        ら・・・ 雅幸君で ええ?」

  雅幸   「それも ちょっと・・・」

  豆千代  「そやったら 何て呼んだら ええの?」

  雅幸   「マーボーで ええやん」

  豆千代  「そっか マーボーやったね」

   豆千代 ストローでミックスジュースを吸う

  雅幸   「姉さん 何で 今日?」

  豆千代  「なぁ マーボー?」

  雅幸   「えっ?」

  豆千代  「そやったら その 姉さんって 止めてよ!」

  雅幸   「・・・」

  豆千代  「兄弟に間違われるやん!」

  雅幸   「そうかなぁー」

   雅幸 ストローでメロンソーダを吸う

  豆千代  「うちら 周りから どないに見られてるやろな? やっぱり兄弟かなぁー でも

        兄弟で こんなとこに居たら 何か変やな それとも 有閑マダムが若い男はん 

        たぶらかしてる様に見られてるやろか?」

   豆千代 ストローでミックスジュースを飲む

  雅幸   「有閑マダムって まだ 姉さん そんな年と ちゃうやろ」

  豆千代  「ほんま そう見える?」

   雅幸 恥ずかしそうに

  雅幸   「当たり前や」

  豆千代  「いや 嬉しいわぁー おおきに」

   豆千代 ストローでミックスジュースを飲む

  雅幸   「そやったら 何て 呼んだらええん? 豆千代はん か?」

   雅幸 ストローでメロンソーダを吸う

  豆千代  「豆千代って 豆腐屋の娘やあるまいし 普通 そんな名前 親が付けるかー?」

  雅幸   「そ そやったら・・・何て・・・」

  豆千代  「チヨで ええよ」

  雅幸   「チヨ?」

  豆千代  「そうか マーボー うちの 本名 知らんかってんな」

  雅幸   「う うん」

  豆千代  「岸本チヨどすー よろしゅー おたのもうしますー」

  雅幸   「岸本チヨさん・・・」

  豆千代  「チヨと 呼んで」

   豆千代 ウインクする

  雅幸   「う うん・・・」

  豆千代  「サンドイッチ 食べる?」

   豆千代 微笑む

   雅幸 ストローでメロソーダを吸う


○ 病室の窓 (平成 春 朝)

  窓の外 桜の花びらが散っている

  ピッピッピッ・・・(ベッドサイドモニタの音)


  美砂子(声)「チヨさん? チヨさん?」


○ 山荘の玄関前 (昭和21年12月25日 夜)

  粉雪が落ちている

  車(2台) 少し離れた門の前に止まっている

  小鶴 もみ春 豆千代 地方 赤い番傘をさす

  マシューについて4人歩く

  小鶴 足を滑らし 転ぶ

  マシュー 手を差し出す

  小鶴 自力で立とうとするが立てない

  マシュー 小鶴の手を掴む


  幸夫(声)「決して 僕の手を離しちゃ ダメだよ」

   鶴子 幸夫の手を握り締める


   小鶴 マシューの手を握り締めて立つ

  小鶴  「滑ってしもた・・・ すんまへん・・・」

   小鶴 マシューの顔を見て微笑むが思わずマシューの手を振り払う 

   マシュー 微笑んで

  マシュー「ノー プロブレム」

   

○ 山荘の門前 (夜)

  車(2台)エンジンをかけて止まっている

  男A 男B ドアの前に立っている

  マシュー 小鶴 もみ春 豆千代 地方 歩いて来る

  男A 男B もみ春 豆千代 地方に黒い布で目隠しをして小鶴にも目隠しをしようとする

  マシュー 男Aから黒い布を取って赤い番傘をさしている小鶴に目隠しをする


   マシュー 目隠しをしながら小鶴の耳元で囁く

  マシュー「メリー クリスマス プリンセス・・・」


  二人に 粉雪が落ちる


  美砂子(N)「この夜の出来事は どんな記録にも残っていません この山荘で小鶴さん達に

         何があったか 今となっては知る由も ありません でも ただ一つ言える事は

         このホワイトクリスマスの夜 この少女達が日本を救ったと言う事です」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ