第1話 京都
登場人物
平成
三浦美砂子
36歳 神奈川県出身 温泉ライター
松倉早紀
35歳 京都府出身 美砂子の元同僚
岸本チヨ (豆千代)
85歳 京都府出身 元先斗町 芸妓
平井久美
46歳 京都府出身 先斗町小料理屋「豆千代」の女将
平井リカ
24歳 京都府出身 カフェレストラン「ノスタルジア」のウエイトレス 平井久美の娘
稲垣陽一
32歳 兵庫県出身 カフェレストラン「ノスタルジア」のオーナーシェフ
コユキ
19歳 京都府出身 木屋町のキャバ嬢
恋 (レン)
3歳 コユキの息子
村井
60代 社長 先斗町小料理屋「豆千代」の客
涼花
40代 クラブのママ 先斗町小料理屋「豆千代」の客
郵便局の女
20代
本町の女
30代
本町の老婆
70代
謎の少女
昭和20年代
小鶴(岡田鶴子)
18歳 大阪府出身 先斗町 芸妓
豆千代(岸本ちよ)
15歳 京都府出身 先斗町 舞妓
もみ春(棚橋春子)
17歳 福井県出身 先斗町 芸妓
もみじ(北村鈴代)
21歳 京都府出身 先斗町 芸妓
松本好江
61歳 京都府出身 先斗町 置屋「松本」の女将
平尾信子
37歳 京都府出身 先斗町 お茶屋「富里」の女将
小西公三
35歳 滋賀県出身 先斗町 検番の男衆
石田幸夫
21歳 東京都出身 帝国陸軍少尉 (特攻隊員)
マシュー・オーウエン
27歳 米国テネシー州 ナッシュビル出身 米陸軍将校
リンダ (リン)
4歳 京都府出身 三浦美砂子の母
稲垣平八
ちどり亭の店主
40代 稲垣真由美の父親
山田一郎
40代 従軍記者
地方
40代 女
米政府 秘書 男
米軍報道カメラマン 男
田中
日本政府連絡官 男
30代
ちどり亭の客 男
40代 元憲兵
警官 男
昭和30年代
木村雅幸(稲垣雅幸)
18歳 京都府出身 キャバレーのボーイ兼歌手 稲垣陽一の養父
豆千代(岸本ちよ)
29歳 京都府出身 先斗町 芸妓
稲垣真由美
17歳 京都府出身 洋食屋「ちどり亭」の一人娘 稲垣陽一の養母
三浦リンダ
13歳 京都府出身 三浦美砂子の母
泰史
18歳 京都府出身 雅幸の友人
和夫
18歳 京都府出身 雅幸の友人
初老の男
60代 大企業の社長
駄菓子屋のおばちゃん
50代
キャバレーラッキーの支配人
40代
キャバレーラッキーのボーイ
20代
昭和50年代
三浦美砂子
小学校低学年
三浦リンダ
30代後半 美砂子の母
○ 新幹線の車内 (平成 春 朝)
三浦美砂子 窓際の席から景色を眺めている
桜がちらほら咲く田園風景が飛ぶように過ぎていく
美砂子(小声)テネーシーワルツのハミング
車内放送
まもなく京都です 東海道線 山陰線 湖西線 奈良線と近鉄線はお乗り換えです
今日も新幹線をご利用下さいまして有難う御座いました 京都を出ますと次は新大阪に
止まります
Ladies and gentleman. We will soon make a brief stop at Kyoto. Passengers
going to the Tokaido, Sanin,Kosei,Nara and Kintetsu change trains here at
Kyoto. Thank you.
美砂子 座席のテーブルに広げた紙に印鑑を押す
○ 京都駅 新幹線ホーム
のぞみ号 滑りこむ
○ 京都駅近くの郵便局の窓口
美砂子 窓口で封書を差し出す
美砂子 「これ速達ですと 横浜には何時着きますか」
窓口の女 「そうですね 明日中には着くと思います」
○ 京都駅近くの路上
美砂子 歩きながら電話をしている
留守番電話に話す様に
美砂子 「あ もしもし 美砂子です お待ちかねの物 今 送りました 明日には届くと思い
ます それから・・・」
美砂子 スマホを耳元から外す
○ 京阪七条駅 (地下 朝)
美砂子 スーツケースを コインロッカーに入れる
○ 京都国立博物館付近 (朝)
美砂子 大勢の女子学生の中を歩いている
○ 三十三間堂前 (朝)
美砂子 歩いている
○ 豊国神社の石段 (朝)
美砂子 座ってスマホをいじっている
○ 交番 (朝)
美砂子 警官にスマホを見せている
○ とある路地裏 (東山区本町付近 朝)
新しいアパートと木造の古いアパートが混在して立ち並んでいる
美砂子 キョロキョロしながら歩いている
少女 とある古い木造のアパート(前に地蔵の祠がある)の前でしゃがんで猫に餌をやっている
美砂子 立ち止まって少女の横にしゃがむ
美砂子 「可愛いね」
少女 黙って猫に餌をやっている
美砂子 餌を食べている猫を見つめる
少女 突然 立ち上がってアパートの外付けの階段を駆け上がって行く
少女 階段の途中で立ち止まって にっこりと笑って美砂子に手招きする
美砂子 それに誘われる様に恐る恐る階段を上って行く
○ アパート(2階の廊下)
少女 一番奥のドアの前で笑顔で手招きをしている
○ 伏見稲荷の千本鳥居 (昼)
整然と並ぶ沢山の朱色の鳥居が陽光で光っている
美砂子 人混みの中をゆっくりと歩いている
外国人観光客 ファミリー カップル 老人達などに背中を押されたりしながら次々と追い越さ
れて行く
美砂子 「あれ いったい なんだったんだろう・・・」
(回想) 少女 古い木造のアパート(前に地蔵の祠がある)の前でしゃがんで猫に餌をやっいる
美砂子(N)「ふと 気が付くと 私は 幾千もの朱色の鳥居の中にいました 何も知らずに純粋で
無色透明だった頃を過ごした京都 この時 傷心の旅にはここしか思い付かなかった
んです きっと 傷だらけの私の心をその魔力で癒してくれるだろうだなんて思って
ました その通り ここは私と同じく京都の魔力にかかった人種の坩堝でした 英語
フランス語 スペイン語 ドイツ語 ロシア語 中国語 韓国語 タイ インドネシ
ア ミクロネシア マイクロネシア アイスランド グリーン ランド イエローラ
ンド ブルーランド・・」
後ろから老婆の声がする
老婆(声)「あー はらへったじゃ はやぐままくうべしー」
美砂子(N) 「これ何語だろう・・・日本語? そんな万国の言葉が飛び交っている中 私は一人
でした ファミリー カップル 敬老会 みんな笑顔でした その時の私には
ここは 全くの場違いでした とにかく私は一人でした身も心も」
○ 伏見稲荷の重軽石の前 (昼)
数人の観光客が列をつくっている
中国人の団体客がやって来てガイドが中国語で説明する
美砂子 列に並んでいる
美砂子 重軽石を両手で挟むように持つ
美砂子 「せーの!」
美砂子 重軽石を持ち挙げる
美砂子 「おも!」
○ 高瀬川 (夕)
桜の花びらが夕日で染まる水面に落ちて行く
クレジット(右下に小さく) 高瀬川物語 Kyoto Love Story
○ 木屋町通り (夕)
花見客 観光客等で賑わっている
美砂子 肩にショルダーバックを掛けて小さなスーツケースを引っ張って歩いている
美砂子 「あの子 誰・・・」
○ 回想 アパート(2階の廊下)
少女 ドアの前で笑顔で手招きをしている