第16話 青天の霹靂
○ 豆千代の店内 (平成 夜)
美砂子 リカ カウンターに座っている
久美 カウンター越しに立っている
美砂子 リカ 酔っている
久美 「ところで 美砂子さん 何で京都に来はったん?」
美砂子 「言ってなかったでしたっけ? 実は 私 高校 卒業してすぐ京都の信用金庫で
働いてたんです」
美砂子 ビールを飲む
リカ 「へー そやったんですか?」
リカ 食べる
美砂子 「はい 2年で辞めちゃいましたけどね」
久美 「2年で? あらま どうして?」
美砂子 「ほかに やりたい事があったんです」
久美 「やりたい事?」
美砂子 「で 京都で これからの事 ゆっくり考えようと思って来たんです 友達にも
会いたかったし それから・・・」
リカ さえぎる様に
リカ 「まあ ゆうたら 傷心旅行ですね」
美砂子 「そ そうだね」
久美 「京都って 美砂子さん見たいに 傷心旅行に来る人も いっぱい いはるし
不倫旅行に来る人も いっぱい いはるし おぼこい修学旅行の子達もいっぱい
来はるし 何や ややこしい とこ どんにゃわ」
美砂子 「そうですね 何か 不思議な街ですね」
〇 本町のアパート (回想)
少女 ドアの前で 笑顔で 手招きを している
〇 同店内
リカ 「で これからの事 決まったんですか?」
美砂子 はっとして
美砂子 「えっ? うん・・・ さっき言った やりたい事って シナリオライターなの」
美砂子 ビールを飲む
久美 「シナリオライター?」
美砂子 「映画とかドラマの脚本家です それにもう一度挑戦しようかなと思ってるです」
久美 「へー そうどすかぁー」
リカ 「何か 面白そうですね」
リカ ビールを飲む
美砂子 「昔は 作品 コンクールに 出した事もあるんだよ」
リカ 「へー 凄いじゃないですか それで それ 映画になったんですか?」
リカ ビールを飲む
美砂子 「そんなに甘くないわよ みーんな 落選だよー」
美砂子 ビールを飲む
リカ 「どんな 話 書いたはったんですか?」
美砂子 「えーと 例えば 女子高生と地底人との恋愛とか」
リカ ビールを飲み 首をかしげる
リカ 「それは ちょっと・・・」
美砂子 「やっぱ 私って 才能ないのかなぁー」
リカ 「そうかも・・・」
久美 「美砂子さん それは自分で決める事ちゃいまっせ それは人が決める事どっせ」
美砂子 「人が決める事? でも その人が決めたから落選したんですよ」
久美 「世の中 捨てる神あれば 拾う神ありや 見る目が変わったら また 違うんち
ゃいますやろか 幾つになっても夢は追い続けな ね」
美砂子 「そ そうですね・・・」
リカ 「お母ちゃん たまには ええことゆうなぁー」
久美 「たまにはって・・・ 何時もゆうてるつもりやけどなぁー」
美砂子 「今度は やり遂げます!」
久美 「へー 偉い 偉い おきばりやっしゃ!」
美砂子 「はーい おおきに!」
美砂子 ビールを飲む
×××
○ 同店内
ラジオから演歌が流れている
リカ 「ところで今度はどんな話 書かはるんですかぁー? もう地底人は辞めて下さいね
それと 宇宙人も あきませんよ」
リカ チューハイを飲む
美砂子 「実は この事 書こうと 思ってるの」
美砂子 チューハイを飲む
リカ 「この事って?」
リカ チューハイを飲む
美砂子 上着のポケットからスマホを取り出して画面を見る
美砂子 「この写真の事 それとチヨさんの事も」
リカ 「おチヨさんの?」
美砂子 「うん 今まで聞いた話 書こうと思ってるの」
美砂子 チューハイを飲む
リカ 「へー じゃあ うちら 映画になるんですかぁー」
美砂子 「いや それは ちょっと・・・」
リカ 「ママー うちら 映画になるんやって!」
久美 「へー 映画に?」
リカ 「うちの役 誰がするんやろ? なぁなぁ あの子にしてもらおかなぁー ほらほら
こないだの月9に出てた あの子 あー名前 出てけえへーん 誰やたっけ?」
久美 「そやったら 明日 服 買いに行かなあかんな」
美砂子 「何で こうなるの?」
美砂子 チューハイを飲みながら楽しく話している久美 リカを見る
美砂子(M)「今まで 私は自分の生い立ちが恥ずかしくって友達にも隠し続けて来ました
それが この親子を見ていると そうして来た事が何か馬鹿らしく思えたん
ですこの親子との出会いは 私とって青天の霹靂でした」
○ アパートの部屋 (回想 昭和50年代)
美砂子(子供) 机に向かって勉強をしている
ドアが開き 母 (リンダ) 入って来て
母 「何や 宿題してんの? 偉い 偉い みさちゃんは偉いなぁー」
母 美砂子の頭を撫でる
美砂子(M)「そう言えば 母は 時々 関西弁を話してました」
母 「はい ケーキ」
母 イチゴのショートケーキをテーブルに置く
美砂子 笑顔で
美砂子 「わぁー」
母 「今日は クリスマスやもんな」
美砂子 ケーキを食べる
母 「みさちゃん? 何時も一人ぼっちにさしてゴメンな あったこなったら また公園で
鬼ごっこしょうな」
美砂子 夢中でケーキを食べてる
○ 同店内
リカ 「美砂子さん」
美砂子 「・・・」
リカ 「美砂子さん!」
美砂子 はっとして
美砂子 「えっ?」
リカ 「何か ぼーとして 旦那さんの事 思い出した はったん?」
美砂子 赤い顔をして
美砂子 「旦那?」
ラジオから 「ダイアナ」 ポール・アンカが流れる
久美 「あっ! この曲 昔 おチヨさんが よー 口ずさんだはったわぁー」
リカ 「へー そうなん 古い歌やん」
リカ チューハイを飲む
久美 「あっ! そや! おチヨさんで思い出した ちょっと 2階 見てくるわ
もう寝たはると思うけど」
リカ 「うちも 久しぶりに会いに行こ」
リカ 腰を上げる
久美 「美砂子さん?」
美砂子 驚き
美砂子 「はい?」
久美 「こっち こっち」
久美 美砂子に手招きをする
美砂子 「えっ?」
久美 「そこ 周って こっち こっち」
久美 手で美砂子を誘導する
美砂子 「あっ はい・・・」
美砂子 カウンターの向うへと周る
久美 「ちょとの間 お店番 お願いします」
美砂子 「えっ?」
久美 「もし お客さん 来はったら にっこり笑ろうて おこしやす どすえ」
美砂子 「あっ・・・ はい・・・」
久美 「おビール そこの下の冷蔵庫に入ってるし 小鉢は後の水屋やし ほな おたのもう
しますうー」
久美 リカ 2階へと行く
美砂子 「えー? 何で こうなるの?」
流れる 「ダイアナ」




