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第11話 傷だらけの初恋

○ 木屋町通り 六角付近 (平成 午後)

  多くの人が行き交っている

  美砂子 四条通りに向って歩いている


○ ノスタルジアの店内 (午後)

  美砂子 窓際の席から高瀬川を見つめている

  陽一 向いの席に座る


   美砂子 立って会釈する

  美砂子  「すみません 突然 お電話しちゃって」 

  陽一   「いいえ でも あの写真の芸妓さんの正体が判ったと聞いてびっくりしました

        どうぞ お座り下さい」 

  美砂子  「ありがとうございます」

   美砂子 座る

   リカ コーヒーを持って来て 陽一と美砂子の前に置いて美砂子に微笑む

   美砂子 微笑む

   リカ 陽一の横に座って美砂子に会釈する

  美砂子  「ええ お電話でお話したように ほんとうに偶然だったんです」

   美砂子 驚いてリカに会釈する

  陽一   「やっぱり 先斗町の方だったんですね」

  美砂子  「はい」

  陽一   「でも 豆千代さんのおばあちゃんがお知りになってたって 灯台もと暗しでした」

   陽一 リカの顔を見る

  美砂子  「そうですね でも まだ 全部は 聞けてないんです 途中 チヨさん お疲れに

        なって 寝てしまわれたんです」

  陽一   「そうなんですか」

  リカ   「そうですか・・・」

  美砂子  「一応 今日の夜にお約束してるんです」

  陽一   「へー そうですか」

  リカ   「そうなんですんね」

   美砂子 リカを見る

  美砂子  「はい・・・ それはそうと稲垣さん お父様から何か聞いておられませんか?」

  陽一   「はい・・・ それが父は無口な人で昔の事は あまり話してくれなかったんです」

  美砂子  「そうなんですか・・・」

  陽一   「でも・・・」

  美砂子  「でも?」 

  陽一   「母が・・・」

  美砂子  「お母様が? あのー?」

  陽一   「何か?」

  美砂子  「お話 録音させて頂いてよろしいでしょうか?」

  陽一   「あっ はい いいですよ」

  美砂子  「ありがとうございます ちょっと待て下さい」

  陽一   「はい」

   美砂子 ショルダーバックからボイスレコーダーを取り出しスイッチを入れて机の上に置く

  陽一   「いいですか?」

  美砂子  「はい どうぞ」

  陽一   「父と母との馴れ初めは 母から それとなく聞いています」

  美砂子  「はい」

  陽一   「母は父より先に逝ってしまっんですが 僕に良く若い頃の話をしてくれたんです」

  美砂子  「そうですか」

  陽一   「父は若い頃・・・ コックになる前ですが 木屋町の三条にあったキャバレーで

        歌っていたそうなんです」

  美砂子  「歌ってたって?」

  陽一   「何でも 店専属の歌手だったらしいんです」

  美砂子  「歌手ですか?」

  陽一   「はい そうそう あの ギター」

   陽一 壁に掛けられた古びたギターを見る

   美砂子 ギターを見る

  陽一   「あれ 当時 父が使っていたギターなんです」


○ 壁に掛けられた古びたギター


○ 高瀬川 (夜) 

  赤いネオンの灯りが揺れている


○ ビリヤード場のネオンサイン (昭和34年7月 夜 西木屋町)

  「玉 公楽」と言う文字が赤く輝いている


○ 同店内

  タバコの煙でもやっている 

  ラジオから当時のヒットソングが流れている

  数人の男達が 咥えタバコで玉を突いている

  店内に玉を突く音が響いている

  泰史 和夫 玉を突いている

  雅幸 それをベンチに座ってコーラを飲みながら見ている


  泰史   「マーボー こないだ 真由美 六角の橋の上で泣いとったで」

   泰史 玉を突く

  雅幸   「真由美が?」

  和夫   「可哀そうに マーボー 振ったんやろ?」

   和夫 玉を突く

  雅幸   「振ってないよ 第一 俺ら 付き合ってないもん」

  泰史   「真由美 最近 タチの悪いチンピラに引っかかったって 聞いたけどな」

   泰史 玉を突く

  和夫   「そうそう 最近 真由美 真っ赤な口紅 塗って パーマあてて えらい雰囲気 

        変わったもんな」

   和夫 玉を突く

  雅幸   「そ そやな・・・」

  泰史   「たぶん そいつに泣かされたんちゃうけ」

   泰史 玉を突く

  和夫   「可哀そうに 真由美 もう 処女 ちゃうぞ!」

   和夫 玉を突く

  泰史   「マーボー 小学校から真由美と仲良かったやん 助けたれや」

   泰史 玉を突く

  雅幸   「何で 俺が助けなあかんのや・・・」

   雅幸 コーラを飲む

  ×××

  雅幸 泰史 和夫 ベンチに座ってコーラを飲んでいる

  泰史   「あっ そうそう こないだの朝 お前の姉さん 背広着た白髪頭の爺さんと 安井

        歩いたはったで」

  雅幸   「姉さんって?」

  泰史   「豆千代さん やんけ 安井やろ 絶対 あれは連れ込みホテルの帰りやで」

  雅幸   「たぶん それ 人違いや」

  泰史   「ちゃうちゃう 洋服着たはったけど あれは間違えのお 姉さんやったで」

   泰史 コーラを飲む

  泰史   「そやから 玄人はやめとけって ゆうたやろ 玄人は金の為やったら爺さんとも 

        寝んねん もう 諦めろ な!」

   泰史 雅幸の肩に手を置く

  雅幸   「そ そんなん 嘘や! そんなん 嘘や!」

   雅幸 泰史の手を払って店を飛び出る


○ ビリヤード場の前 (夜)

  雅幸 飛び出して木屋町通りを走って行く

  泰史 和夫 飛び出す

  泰史 雅幸のギターを持っている


  泰史   「おーい マーボー! ギター ギター 忘れてるで!」

   泰史 ギターを掲げる

  和夫   「あー 行ってしまいよった」

  泰史   「あいつ 大丈夫かいな この ギター 命より大事やったんちゃうんけ」

   和夫 雅幸が走って行った方向を見て

  和夫   「あれは そうとう 惚れとんなぁー」 

   泰史 和夫 ふざけて歌う (ダイアナ)  

  泰史・和夫「君は僕より年上と 周りの人は言うけれど なんてったてかまわない 僕は君に 

        首ったけ 死んでも君を離さない 地獄の底までついて行く オー プリーズ 

        ステイ バイ ミー ダイアナ~」


○ 木屋町通り (夜)

  雅幸 泣きながら走っている 

  雅幸   「そんなん嘘や! そんなん嘘や!」

   雅幸 男女二人連れのチンピラ風の男とぶつかる

   男  転がる

  男    「あー いたぁー」

   男 立ち上がる

  雅幸   「すんません!」

   雅幸 頭を下げて行こうとする

  男    「こら! 兄ちゃん! 逃げるんか! ちょっと 待てや!」

   雅幸 立ち止まる

  男    「人 こかしといて すんませんで すむと思てんのか!」

   男 雅幸の胸ぐらを掴んで にらみ付ける

  男    「俺 誰やと 思とるんじぁ!」

  雅幸   「すんません・・」

   雅幸 頭を下げる

  男    「舐めとったら あかんぞ!」

   男 雅幸を殴る

   雅幸 倒れ込む

  男    「おら! おら!」

   男 雅幸の腹部を数回蹴る

  女    「あんた もう やめたげえな 可哀そうやん!」

   女 男を止める

  男    「こら! このクソガキが! 酔い 覚めてもうたは!」

   男 雅幸に唾を吐きかけて女の腰に手を回して去っていく

   雅幸 路上に大の字になっている

  雅幸   「そんなん嘘や そんなん嘘や そんなん嘘や・・・」

   雅幸 血だらけの顔で泣きながら呟く

   雅幸のそばを数人の男女が楽しそうに通り過ぎて行く


○ 夜空に浮かぶ黄色い月







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