ミートボールの化け物(魔物)
魔法の設定が作者の妄想でよくある魔法と違うものになっているかもしれません。すみません。
1/16 再編集しました。
ティノが駆けつけた時にはもうほとんど戦いは終わっていました。
まず目に入ったのは畑の隅で腰を抜かしたおばあさんでした。
その人はティノとも顔見知りで、よく野菜を家に持って来てくれるのでした。
「おばちゃん!大丈夫?!」
ティノが駆け寄ろうとすると、
「止まれ!!」
突然叫ばれ、ティノは思わず止まりました。
その途端、目の前を腐った肉を寄せ集めたかのような化け物が通りすぎたのです。
そしてすぐ後に旅人が通ってその化け物に手刀を食らわせました。
化け物は動かなくなりました。
「なんだよ今の!?ミートボールのお化け!?」
「阿保。魔物に決まっているだろう。」
ティノの疑問にライが即座に答えます。
「阿保じゃない!!」
「そうか、ならいいのだが。ところでご婦人。怪我はないか?」
「あぁ、大丈夫ですよ、驚いてしりもちをついただけだけですから。ありがとうね、旅人さん。」
ティノはそこでおばあさんがいたことを思い出しました。
「本当に大丈夫?無理しないでねおばちゃん、腰痛くなったらすぐに冷やすんだよ。」
「ありがとうね、ティノ。心配してくれて嬉しいよ。」
おばあさんはティノの手をかりて立ち上がると、そのまま帰って行きました。
「本当に大丈夫だろうか?腰を打ったようだから心配だ。」
「おばちゃん見栄っ張りだから痛くても平気って言うんだ。お家に家族がいるから大丈夫だと思う。」
「そうか、少し安心した。」
そう言ってライは肩に掛けていたナップザックから大きな油紙の袋を取り出すと、その中に倒した魔物を入れていきます。
そこでティノは周りに魔物が五、六体転がっていることに気が付きました。
ライはティノが初めに見たやつを倒す前にもうこの魔物を倒していたのです。
(...意外とこの旅人強いんだ。)
ティノはそう思いましたがそんな様子は見せませんでした。
しばらくティノは旅人の作業を見ていました。
やがてそれが終わると、袋を持ったライと歩きだしました。
「その魔物どうするの?」
「解体して魔道具の材料として売る。」
「はぁ?」
「魔物は常に体に魔力をまとっている。魔物が活動している時その魔力は人間には負の影響を与える、魔物を倒すときは私達の魔力が魔物にとって負であることを利用して倒す。そして何故か魔物を倒すと魔物が持っていた魔力は人のケオラと同じ魔力になるんだ。だから魔物を加工するといい魔道具になるんだ。」
ティノはいつも使っている魔道具がさっきのミートボールのお化けのような魔物からできていることを想像しました。
するとどうしても、
「オェッ。」
吐き気がします。
「安心しろ、魔道具すべてが魔物からできているわけではない。」
ティノの心を見透かしたようにライが言います。
「魔物のを加工してそのまま魔道具にするためには解体の際に高度な技術が必要で、解体された魔物を材料にした魔道具には高値がつくんだ。魔道具すべてが魔物製だったら金持ちしか使えないものになる。実際昔はそうだった。今みたいに買い求めやすくなったのは新しい方法が発明されてからなんだ。」
「はぁ、そうなのか。でも魔道具はとても便利だからその方法を見つけた人はすごいんだね。」
「そうかもしれないな。」
「で?その便利な方法って何?」
「まず、倒した魔物を扱い易いようにざっくり切って大鍋に入れる。そしてそれを潰しながら煮込む。途中で薬草を入れると嫌な匂いが消える。最後に煮汁を絞って完成だ。魔道具にしたい物を煮汁に漬け込んでそれを魔道具職人が魔道具として使えるようにする。どうだ、便利だろう。」
「オェェェェェェェェェッ。結局魔物使っているじゃないか!!!」
ティノはしばらくの間は魔道具は使いたくも見たくもないと思いました。
「絞りカスも魔道具の材料になる。無駄がなくていいことだ。」
ティノは吐き気を抑えつつライと帰り道を歩いて行きました。
※※※
「たぁだいまぁ~。」
「お帰りティノ。村は無事に案内できたか?...ってライさん、そのでかい袋はなんなんだ!?」
「..あぁ、倒した魔物です。解体するので大きめのたらいを貸してください。」
「いいですけど..。へぇ、はぁ、なんかすごいですね。」
こうしてライは酒場の店主ケファロからたらいをゲットして店の裏で解体の準備を始めました。
旅人はたらいを置いて中に水を魔法で入れて横に大きな油紙を敷き、ナイフを出しました。
と、周りで野次馬が興味津々といった様子で覗いているのを見て、
「いいんですか?見ていて気持ち悪くなりますよ?」
「あ、あぁ、大丈夫だよ。俺達は普段家畜の解体で慣れているからな。」
村人の一人がそう言いますが、
「そうですか。ですがこれは家畜のとは違いますよ。見た目の気持ち悪さが増すだけでなく匂いが凄まじいですよ。魔物の特性上物に匂いは付きませんがそのままだと一週間何も喉を通らず、会話もままならなくなることになりますよ。」
ライはそう言うと袋から魔物を一体取り出して油紙の上に置きました。
時間がたった魔物からはなんとも言えない匂いが漂い、どろどろとした液体にまみれています。
それを見た村人達は顔をしかめて立ち去りました。
残ったのはティノだけでした。
「いいのか?」
ライの問いにティノが首肯すると、旅人は渋々といった様子でナップザックから小瓶を取り出し、取り出した携帯用のブリキでできたコップに数滴中身を入れて水で薄めると、
「飲め。」
「はぁ?」
「これを飲まないと、解体した時の匂いで鼻が潰れ、その匂いは食道や胃にも響くぞ。」
仕方なくティノはそれを飲みました。
舌の上に薬草特有の苦さが広がります。
そしてライに渡されたサラシで口と鼻を覆うと、ライは解体を始めました。
前回長く書いたと書いたのに、大して長くなっていませんでした。すみません。今回は長くなりました。