小さな案内人
ふと今まで書いたのが短いなと思いました。
そんな訳で少し長くなりました。
1/15 再編集しました。今見ると初めてだったとはいえ文章下手ですね。
ティノは不満でした。
ティノの住むフィマリ村は日が出ている間に活動をします。
だから村人は皆早起きで、ティノもその一人です。
今日は五時半には起きて、6時には一階の酒場に降りて来ました。
そして不満の原因がいました。
旅人がカウンターの前に座りベーコンエッグを食べていたのです。
ティノはそれが気に入りませんでた。
やがてティノの父親が同じ朝食を運んで来ました。
ティノはそれを口にしながらも旅人をにらみ続けるのを忘れませんでした。
それでいて旅人はまるで気が付いていないように器用にベーコンエッグを切り分けては口にします。
昨日のこともあり、ティノは益々旅人が嫌いになりました。
だけどなぜそんなに嫌いなのかティノにはわからなかったし、わかろうとも思いませんでした。父親がティノに旅人さんはライさんだそうだと教えてくれました。
やがて朝食を食べ終えたティノは食器を片付けてカウンターの中の奥にある三本足の椅子に膝を抱えるようにして座りました。
そこがティノの定位置なのです。
するとライが話かけて来ました。
「ティノ、この村の案内をしてくれないか?」
「へ?」
「自分は来たばかりでこの村のことを知らない。どんな村人がいるのかもあまりわからない。それではいざ魔物討伐という時に不便になってしまう。だから案内してほしい。」
ライの言ったことは間違っていません。
ティノは言い返せませんでした。
「わかった。行こう。」
ティノは不満顔のまま椅子から降りて歩きだしました。
そのあとをライはついて行きます。
外に出ると朝の空気が少し肌寒く感じられました。
ティノとライは村の道を歩きだしました。
岩山の中の村なので坂や階段があちこちにあります。
それらを珍しげにライはキョロキョロしながら歩いていました。
「上手く作られているだろう。」
ティノは言いました。
「僕達のご先祖様達がこの場所を見つけた時に場所が限られるから区画整理をきちんとやろうってことになったんだ。そして日が当たる斜面は畑にして、空いているところには生活に使える色んな木を植えた。家の位置も工夫して丈夫に作った、だから新しく家を立てることはあまりないんだ」
ティノの言ったように、周りの家は地形にあわせて作られていて、土地がギリギリまで広く使えるようにしてあります。
「この村の先祖達はすごい人達だな。」
そう言うライを見てティノはなんだか案内をするのも楽しいかもしれないと思いました。
そうしてこの失礼な旅人にフィマリ村のすごいところを教えてやろうではないかと考えるとワクワクするのです。
どこを案内しようかと考えながらティノは歩きました。
しばらくすると少し開けたところに出て、その中心に建物がありました。
その建物は周りの建物とは違う点が多くありました。
周りの家が木やねずみ色の石で出来ているのに対して壁は白っぽいレンガで、屋根には赤いツヤツヤした瓦が乗っています。
何よりとんがり屋根を持った断面の円い塔が生えているのがとても目立っています。
案内人のティノが解説をします。
「これが村一番の建物だ。村のみんなで使っているんだ。この村に学校はないから僕はここで勉強もしている。だから馬鹿じゃないんだぞ!」
「いい建物だな。」
「昔村が百年経った記念になんかやろうってことになって、それでお金を出しあって建てたんだぞ!」
そう言ってティノは再び歩き始めます。
ライがその後ろをついて行きます。
二人は色んなところを見て周りました。
市場で揚げ菓子を買って食べました。
途中で村人に会うとライは挨拶しました。
その中には昨日酒場にいた人もいました。
二人は村の中心部を見終わると、今度は畑の方に行くことにしました。
すると、
「誰かっっ!」
悲鳴が聞こえてきました。ただ事では無さそうです。
「あっ..。」
ティノが気付き、周りを見た時にはもうライの姿はありませんでした。
ライが見つからないのでティノは急いで道を走って行きました。