とある村の酒場兼宿屋にて
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中途半端だったので、完結出来るように編集します
「ここが僕の家だ!お前から見ればボロいかもしれないけど、僕はこの家で生まれたし、この家で育った。僕はこの家が大好きなんだ!」
ティノは旅人に嫌味を言われると思っていました。
まぁ自分の言ったことは事実だったからなんと言われようが我慢しようとも思いました。
すると旅人は、
「良いことではないか。」
「えっ?」
ティノは驚きを隠せませんでした。
「ボロいかもしれないが、この家はキレイにしているし、温かい心で人に使ってもらえている。そういう家はイキイキしていて好きだ。」
そう言われてティノはむず痒くなりました。
「さっ、早く入るぞ。」
そんな気持ちを隠すようにティノは中に入って行きました。
店主は扉の開く音がしたので顔を上げると、彼の息子が入って来たところでした。そしてその後ろにもう一人いるようでした。
「ただいま父ちゃん。」
「お帰りティノ。後ろにいるのはお客さんかな?」
「うん。旅人だって。」
「へぇ、珍しいな。」
ティノはくるっと振り向くと、
「入って来いよ。あれが僕の父ちゃんで村唯一の酒場兼宿屋の店主さ!」
そう言って鼻を高くして客を招き入れました。
「お世話になります。一人で旅をしている身ですからこういうところに来るのは嬉しいです。」
そうつぶやいて入って来た人間は店主から見て一人旅をするのには向いてないように思えました。
その旅人は背があまり高くなく、見える腕や脚は筋肉はついているが細かったのです。
まぁ、でも旅人には違いない。
ならばアレもできるだろう。
店主は落ち着いて考えていました。
「いらっしゃい。俺はケファロっていう。突然だが旅人さん、魔物討伐はどれくらいできる?」
「少なくても良く出現するのは討伐できます。」
村と村を繋ぐ道にも魔物は出現します。
だから旅人は護身術として討伐術を心得ているものです。
なので討伐士のいない村では旅人はありがたい存在です。
中には旅人にとどまってもらうために大金をつぎ込む村もあるそとかないとか。
そしてこのことは旅人の大切な収入源でもあります。
現在この村に討伐士はいないので是非とも雇いたいと店主は考えていたいたのです。
「で、討伐料はいくら欲しい?」
魔物討伐の仕事は命の危険を伴うこともあるので討伐料はそれなりになります。
「そうですね...、では一匹倒すごとに25クレでお願いします。」
「..へ?」
25クレだって?そんな少額で?
チップじゃないのに?
大抵は50トロン以上でそれでも安い方だっていうのに?
ケファロの頭の中で思考が混乱する。
がちなみに100クレが1トロンになります。
まぁ、目の前で本人が首肯しているからそれで良いのだろう。
ここで驚いていては話は続かないだろうからな。
気を取り直してケファロは続けました。
「それならそれで頼むよ。長く滞在してもらおうとはしないから。村の魔物討伐に関わることは俺に任されているから、聞きたいことあったら聞いてくれ。
部屋は二階だ。食事は朝は六時にそこのカウンターで、昼と夜は店で適当に注文してくれ。」
やがて旅人が部屋に入り、ケファロが店を見回すとティノがテーブルに突っ伏しているのが見えました。
「僕あの旅人気に入らない。」
どうやら原因はさっきの旅人のようです。
「でもなティノ、せっかくの旅人さんなんだ。イタズラするなよ。」
「はぁーーーい。わかりましたぁーーーー。」
「そうだな..、ホットケーキ食べるか?」
「食べる!食べる!」
目を輝かせる息子を見て彼の意識をすべて食べ物に向かせることに成功したことを確信するケファロです。
それをニヤニヤして見ながらコンロに指で火を着けます。コンロの中には魔力を込めた石炭があるので燃え尽きることはありません。
この世界に魔法は大きく分けて二種類あります。
一つ目は日常的に使うもの。
主に火土水風雷の五つからなり、威力は少ない。どんな人間でもその魔力量は同じくらいだと言われています。
二つ目は生命力のようなもの。人間はこれにより生きているとされています。
病になるのはこれが弱まっているからで、逆に元気な人はこれが強い。性格と同じで人によってこの魔力量や性質は違う。
一つ目に比べて強力で、魔物退治に使います。ただの剣や槍では魔物を倒すのは難しいのです。ただ、人間の内面に深く関わるため、この魔力を体外に引き出すことは難しく、体外に出せるのはわずかな人達だけです。これが討伐士の少ない理由でもあります。
時々出現する魔物は人間の天敵とも言える存在です。そいつらを倒す討伐士が久しぶりにこの村に来たので今夜は良く眠れそうですね。