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勇者な村人D  作者: ネコモドキ
16/34

勇者な村人D 8.99……話


昨日は投稿出来ずすみません。

しかし!この8.99……話!なんと!文字数を二倍にしております!


ーーーはい!言い訳であります!

自分の体調管理がザルすぎたせいです!

米とぎも出来ません!

と、言うわけでこれで閑話は終わりです!

信じられるか?これ、一話、本編より長いんだぜ……

信じられるか?この閑話だけで本編の三分の一もあるんだぜ……(;´゜д゜`)


 


「…………」


 ーーー一体何が起こったのか。


 自分が見つめるのは、何処までも広がる青い空。


 決して、真っ赤に染まった村人の身体ではない。


「弱い」


 頭上からピシャリと、まるで父が子を叱るような……そんな言葉が聞こえてくる。


「違う。そっちが強い」


 知らぬ間に、自身の喉がくつくつとなる。


 全くもって出鱈目だ。特に、一瞬見えたアレ(・・)


 まるで、鎖で雁字搦めにされた獣。


 そうしなければ、きっと世界をも滅ぼしてしまう。


 ーーーそんな危うさも持っていた。


「まだ、やるのか?」


「……当たり前だ」


 くだらない問答だ。まさか、あれしきの事で諦めると?


「我、求は力、求は焔、求は静寂、対価は……自身っ!」


 ーーー疾!と、シルバーが前に出る。


 右手には、異次元から召喚した無骨な剣を。


 左手には、全てを灰燼へと帰す業火を。


「“勇者の出番(ブレイヴ・ターン)”」


 ……直後、シンクの口からボソッと、紡がれる言葉。


 それはある意味魔法の言葉。


 女の子が誰しもシンデレラになれるのならーー……


 男の子は誰もが勇者になれる。


 ーーー勇者になり得る言葉。


「俺の……ターンだ」


 ズンッ!……地面に足がめり込む。


 さほどならされていない地面。だが、この程度に足を捕らわれるわけがない。


 シャランと、剣を抜く。


 構えるは、正眼の構え。


 勇者が、魔王と対峙する構え。


「ふっ!」


「らあぁっ!」


 ーーー剣と剣とが、


 ーーー剣と焔とが弾き合う。


 赤銅色の火花が散り、焔が揺れ、前髪を焦がす。


 例えるなら、花火。


 まるで子供の落書きのような、めちゃくちゃな花火。


 赤と黒。ぐちゃぐちゃで、まるで見当違いな方向で入り混じり、破裂音を合間に鳴らす。


「ああぁぁあっ!」


「うらあっ!」


 一閃、二閃、三閃ーーー


 空中に、黒の軌跡と赤の軌跡とが交差する。


 朱墨と墨の混ざり合い。


 二色の束ねに強い力が加わり、周囲へと弾けていく。


 それに先ず、耐えられなくなったのは地面。


 陥没し、或いは干上がり、


 どんどん周囲の地形は変わっていく。


 やがて辺りの空気が黒く焦げ、怒気や殺気と言った純情で真っ直ぐな思いが肌をピリピリと震わせる。


 思いは同じなのに、まるで相対的な両者の剣筋。


 一方の黒の太刀筋にはまるで法則性がない。


 野獣のような剣。


 しかし、それは力任せという事ではない。


 どういう訳か、死角や対処し辛い箇所をその都度変えて(・・・)、突いてくる。


 瞬時に見抜いているのか……はたまた野生の勘なのか……


 恐ろしいのは、それを行なっている『彼』の顔だ。


 ストンと、何かが落ちたような無表情。


 まるで、何も感じていない。何も考えていない。


 空虚というのか、虚無というのか……それともどちらとも言うのかは分からないが……


 ただ一つ。それが異常だと言うことだけは分かる。


 もう一方の、朱墨の軌跡。


 此方は、型にはまった美しい剣。


 レイピアのような、細く……されど無骨な剣を《突き》の構えで飼い慣らす。


 刺突。刺突。刺突!


 急所………目や、喉。金的を的確に狙う。


 卑怯?ーーー勝てば官軍。負ければ悪。


 そもそも今、この場にそれを断ずる者はいない!


 ーーーしかし、誰が見てもこの勝負の結果は明らか。


 シルバーが、剣を交える毎に少しずつ傷ついて行く。


 腕に血が走り、脚がぐらつく。


 顔の出血のせいで右目が開かない、身体の感覚がなくなってきた。


 されど、まだ(・・)急所を狙わせないのは流石と言うべきか。


 唐突にフッ、とシルバーの口に笑みが宿る。


「このままでは……勝てない、か……」


「………」


「いいさ、一思いにやってくれ。それで満足ウゥゥッ!?」


 シルバーの口から、若干ピンク色に染まった声が漏れる。


 シンクがシルバーの腹を殴ったのだ。


 グーで、グーパンで。


 だって彼、真の男女平等主義者だから。


 グペッというカエルが潰れたような音が肩の辺りから聞こえて、何かが折れた感触が拳に伝わってきたがこの際どちらも無視する。


「おら、立て。“勝てない”って判断するのは、死んでからにしろ。死んでないのなら……まだ、続行だ」


 犬のようにのたうち回るシルバーに向け、蔑んだ目のままもうワンラウンドしようぜ?と、言う。


 ニタリ……口が裂けたように嗤うシンク。


 ドス黒い感情を更に濃くした、ヘドロのようなある意味、劣情をシルバーにぶつける。


「………んんぅっ!」


 ーーーキュン♡ってなった。


 下腹部がすごいキュン♡ってなった。


 突然の自身の気持ちの変化に戸惑うシルバー。


 あのバキバキという感触が、今も腹に残っているーーー?ジンジンする。ジワジワする。キュンキュン……する………暖かい……


 今、思い返してみれば戦闘の最中……彼の殺気や剣戟に当てられたり、村人達に虐められるのはなかなかどうして悪くなかった気がする。


 あれはもしかして……私の度量が大きいんじゃなくて……


 いやいやいや、それは無い。確かに、魔族にはその気がある。伊達に“まぞ”と言うの言葉は付いていない。


 だからと言って……大体城中でもひっきりなしに殺気に当てられて……この村とは質やら格やらが段違いだけど。


 いやでも………子供達の悪戯にはフッて!フッ……って割とニヒルな笑みが……あれ?フヒッだっけ?


「…………対処間違えたかな……」


 ーーー自問自答を繰り返すシルバーに、かなり困った顔をするシンク。


 確かに、村の大人達に魔族にはそっちの気があるとは教えて貰っていた。


 だからと言って、こんなにもハッキリと、顕著に、現れるものだと思うわけがない。


 村案内も大方、それを見極めるためという意味合いが強い。だから、まだまだ子供であるロゥを連れてこなかったのだが……


 いや、案内中魔法陣を踏み潰されること五回目だったかな……?あの辺りでピンク色が出ていたけれど……


「あ、終わった?」


 ひょこっと、好々爺という表現の似合う老人……タナが何処からか顔を出す。


「なあ、タナ爺さん。この変わりようは何なんだ?」


 もう既に悩みとかそんな次元を突破したのか……一人イヤンイヤンするシルバーを指差し、困惑するシンク。タナから前もって聞いていた特徴と一致するのは一致するのだが……少々オーバーすぎやしないかい?


「ん………シンク、お前何をした?」


「腹にグーパン」


 簡潔に、されど凄く伝わり易い言葉を阿吽で返すシンク。


 だが、この言葉にタナは目を丸くする。


「……魔族の魔力高炉が何処にあるのかは知っているか?」


「ん、腹だろ」


 魔力高炉。それは、どの種族でも魔法や魔術を使う際の魔力を貯める貯蔵庫のようなものである。これが破られると、魔力を体内では練れなくなり、魔法を生活の一部として使っているものにとってはある意味殺されるのと同じなのだ。


 種族によってそれは様々で、人類種は心臓の近く。エルフ種は脇腹の辺り。魔族種はヘソの下……と、弱点も変わってくる。


 話は変わるが、実はこの魔力高炉の場所によって扱える魔法が変わってくるとの意見もある。


 今では、魔族種が状態異常系統の魔法を使えるのは魔力高炉の位置が、ヘソの下……腸の辺りにあるからと言われている。


 腸は、『考え事』が出来るためストレスなどをモロに受けやすく、身体の器官の中で脳のような働きをも持っている器官だ。


 その為に、脳に機能が近い器官から発せられる何らかの効果が、脳に状態異常を与える事が出来るのではないか?との説がある。


 ーーー閑話休題(それはさておき)


「シンク………魔力高炉は種族にとって何にもなっている?」


「………………あ、性感帯?」


 そう。魔力高炉が弱点たる理由の一つがそれだ。


 人類種は、胸を触られると感じて、エルフ種は脇を擽られるのはちょっとあれで……魔族種は、ヘソの下辺りを突くと……………濡れる。


「でだ、その気を持っている魔族の、それも性感帯をだ。思いっきり殴ったお前……で、発情しちゃった魔族………責任取れよ?」


「絶対やだよ!?大体もうちょっとガードしとけよ!普通、そこをガードするのがセオリーだろ!?」


 すると、タナ爺何を思ったのか……徐にシンクの肩にポンッと手を置いて………


「good luck」


「指へし折るぞこの野ウッ!?」


「ーーーお兄ちゃん?家から出るなって言われてたけど……もういいよね♡」


 ニコッではなく、ニ"ゴッという笑み。


 語尾のハートも砕け散る勢いだ。


 辺りを見回すと、殺気がダダ漏れのロゥの登場に興奮する変態しかいなかった。どうやらタナ爺は無事逃げたらしい。


「と、とと取り敢えずみ、みみみ身ぐるみ剥いでさ、晒しとくか?」


「………ロゥも、手伝う」


「いいいいやいいって。俺一人でやっておくからさ、ほら、ロゥはオーク……じゃなかった。ソーセージ食べとけよ、な?」


「……ロゥも、やる」


「………ロゥ、聞いてくれ」


「………うん?」


 突然、ガシッとロゥの両肩を掴むシンク。その顔は、いつになく真剣なもので……あまりもの不意打にロゥはついつい胸の高鳴りを感じてしまう。


「お兄ちゃんはな……」


「………うん」


「お兄ちゃんはこいつの服を剥ぎたいんだ!」


「…………」


「身包みを全て剥いで、白い、陶器のような肌を陽の下に晒すのが興奮するんだ!」


「………」


「だから……!だから今この場は!この場だけは何も言わず大人しく家でソーセージ食っといてくれ!」


 一応誤解の無いように言っておくが、シンクにそんな性癖は無いし、今後そのような事になる気もない。

 ただ、この場からロゥを何処かへやって……もしくは、自身が他国で二週間程不法滞在するつもりだ。


 ………変態?もち、放置プレイ。


「……お兄ちゃん」


「なんだい?」


「………シネ♡」


 赤い飛沫と共に天空へと羽ばたくシンク。


 それも、この村ではよくある光景だった。




 ーーーその後、村にもう一つ観光スポット?が誕生する。


 木……というかただのハリボテで作られた十字架。


 何故か夕方ごろになると赤く染まるその十字架にはとある悪魔が磔にされており………


 しかし、かなりの魔除け効果があると、一時期話題の中心となった。



明日からは一日二話投稿にします!頑張ります!

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