勇者な村人CAT 2
びっくりするくらい風邪が治りません!
途中、自分で何書いているのか分からなくなってきました。
じゃあ、書くなよと言うことになりますが、日に日に伸びているPVを見るのが嬉しいのです。
頑張らなきゃと思うのです。
と、言うわけでCAT編はこれにて終わりです。
……後で改稿します。
チチチ………
柔らかな朝日が差し込み、今日も朝が来たと小鳥が知らせに来る。
ーーー眠たい目を擦り、フワァと欠伸を噛み締める。
豪華な羽毛布団を押しのけ、窓際の小鳥に挨拶。
「ーーーおはようごじゃいますにゃ」
バサバサバサッ!!
「え!ちょっ……!まっ……!なんでっ!?」
「フシャーーッ!!」
「にゃ、にゃんで黒猫が!?」
「キェーーーッ!!」
「にゃんか変な鳥キタァ!?」
朝から【聖騎士】隊隊長、シャーロット・S・ガーネットの部屋はプチパニックになっていた。
だが、勿論自分に心当たりなど無く……
仕方がない、と信用のおける副隊長……ディオンに助けを求めることにした。
「ディオン!朝から大変にゃ……!?」
「シャル!大変です……ぅっ!?」
ディオン・オリオン。
爽やかな赤いポニーテールが特徴の、【聖騎士】隊きっての脳き……元気っ子。
その、赤い頭からは……なんというか……その、逆三角形………所謂猫耳が付いていた。
「ディ、ディオン……そにょ頭……」
「シャ、シャル……?え、シャルなの?」
「………え?」
ディオンに異変が起きたと言うことは分かったのだが……
そのディオンの、自分を見つめる目が何だか、信じられないものを見るような……どころか、疑っている………?ように見える。
「か、鏡はあるかしりゃん……?」
「は、はい……どうぞ」
よくよく考えれば……と言うか、よくよく考えなくても答えは大体分かっていた。
先程から舌ったらずな喋り方。
思う方向に上手く曲がらない関節。
さっきから臀部の辺りに力を込めると、何か動くものがある。
ーーーそして、何より………ディオンが大きい。
ドアが大きい。ベッドが大きい。自分以外のすべてが大きくなったのか………?
ーーーいや、自分が小さくなったのだ。
恐る恐る受け取った鏡を覗き込む。
そこに写っていたのは、美しく、何処か幻想的な一匹の猫。
毛並みの良い、儚げなプラチナブロンド。
雄々しく、誠の宝石よりも輝くガーネットの瞳。
形のいいベース型の顔。
思わず触りたくなる肉球、と足に隠された爪。
臀部からはスラリとした尻尾が生えていた。
「にゃ、にゃかにゃか可愛いわね……ハッ!」
「いえ、拙も思わず抱き締めたくなりました!」
「しょ、しょうね……我ながら……じゃなくて!この原因は一体にゃんにゃの!?まさか……また……」
「いえ、勇者様ではありません。どころか、もう原因解明の為に先程立たれました」
「しょ、しょう………だとしたら、原因は一体……」
「それも、今調べているとこりょです。ですが……」
「ですが……?」
「いえ、一つだけ分かった事が……どうやら、この現象の事を【猫化】と言い、時が経つにつれ進行して行く症状らしいです」
「えー……と、最終的にはどうなるのか聞いていい?」
「………猫ににゃります………」
「え?」
「………ね、猫になってしまうのにゃ!人としての記憶も!感情も!経験も!全てを忘れ猫になってしまうんだにゃ!」
「ディオン!?貴女猫化進行してるにゃよ!?ほら、尻尾が!」
スポン!或いはにゅるり。
そんな感じでディオンにも尻尾が生えて来た。
「ど、どうやら感情にょって進行具合がかわりゅらしいですね……」
「にゃあ、私はどうしてここまで……」
「…………」
「あ、あによぅ………」
「もう可愛いのでそのままにぃ……」
「い・や・にゃ!」
☆
ーーーそして、時は戻り宿舎内が騒然としている場面。
「ーーで、誰かここりょあたりのありゅ者は?」
「うーん……我は……強いて言えば、【ネコもどき】を倒したくらいですかにゃ……」
「あ、そう言えば拙も討伐にぃ……」
「昨日か……もしくはもっと前か……いや、いつもと変わりゃにゃい……あ、でも【ネコもどき】は倒したかな」
「みんにゃ、原因それじゃないのかにゃ!?」
「「「「え!?」」」」
「もう辞表書こうかな………」
猫化したのが原因か……はたまた元々の知能が猫と同レベルなのか………我が隊はビックリするくらいバカだった。
「あ、でも勇者様は猫化していませんでしたにょ」
「恐らく血が原因にゃ。勇者様は一滴も浴びていにゃかったにゃ……でも、私は全身が真っ赤ににゃるくらい………」
「ですが、原因が分かったところで対処方法は……?」
「「「「「………」」」」」
「ーーーすみません。失言でしたにゃ」
「ちょ、ちょっと横になってくりゅにゃ……」
「は、はい……」
「「「「…………」」」」
宿舎内に、重い空気が立ち込める。
ふと、こんな時に……と、誰かが呟く。
その言葉は、とある人物の事を指しているのだと、ここにいる誰もが理解していた。
そう、ーーー結局のところ、皆勇者を頼りにしているのだ。
ーーーそして、
「おーい!帰ったぞ!」
カラン、と呼び鈴を鳴らし、とある人物が入ってくる。
ーーー皆が待ち望んでいた、人類の希望……勇者だ。
「ゆ、勇者様!ど、どうでしたか……にゃ?」
一目散に駆け出したのはシャーロット。
やはり、自分の症状も気になるが……それよりも勇者の一刻も早くの帰還を待ち望んでいたのは彼女だ。
「あ、あにょお〜何かちがくにゃいか?」
「…………ん、そうかにゃ?」
先ず、シャーロット自身と目線が同じだ。
猫であるシャーロットと目線が同じと言うことは……つまり、そう言うことで。
まあ、取り敢えず目の前のそれをよく見てみよう。
瞳は翡翠とルビーのオッドアイ。縦に割れた力強い瞳孔が、思わず身振りを誘う。
ツヤツヤとした凛々しく、黒い毛並み。不吉な象徴とされている黒猫だが、この目の前のそれからは不吉をも跳ね返すような強大な存在を感じる。
そして、まあ………しなやかな筋肉のついた手脚……というか前脚、後脚……後、尻尾。
「にゃ、にゃんで?」
「えー……と、ーーーミスった☆」
ミスった。ミス……みす……ミス?
え?……いや……あれ?
その言葉を飲み込むのに、かなりの時を有した。
ーーーで、やっとの事をまあ……理解はしたと言うより……出来たというか……無理矢理飲み込んだというか………
「いやあああああぁぁぁあああっ!!」
現実逃避した。
☆
「ああああああ!………あれ?」
「おはようございます、シャル。……どうかしました?」
「え、ちょ……ディオン!尻尾!耳!付いてない!?」
「はぁ………えーと、つ、付いてません……よ?」
「あ、えーと!おはよう!」
チュンチュン。
「おはよう!」
にゃあ〜
「な」
「な?」
「治ったぁ〜」
「ふふ……夢でも見ていたのですか?」
「……え、ええ……夢……よね。そう……夢を見ていたのかしら」
「あ、少しよろしいですか?」
「ん……ちよっと水を飲ましてもらうわ。あ、喋っても大丈夫よ」
「じゃあ、このままお話しますね?えぇー……今日のご予定ですが、その中にとあるモンスターの討伐が入っているのですが……」
「んぐぅ!」
ーーー嫌な予感がする。
ピタ。と、水を飲む手が止まる。
「ち、因みにそのモンスターの名前は?」
「えーと、これが結構変わった名前のモンスターで……【ネコ……」
「絶対に嫌よ!」
「えぇ!?いや、ダメですよ!ちょ、あー……コラァ!」
パリーン!
窓硝子を割り、逃走を図る次期王女。
はしたないとか、そんな言葉は今、この時ばかりは出てこなかった。
「そこまで!?そこまで嫌なんですか!?一体何があってんですかぁ!?ちょ……シャルーーー!」
寝間着姿で城下の街を疾走する次期王女。
それを捕縛するために朝から叩き起こされた【聖騎士】隊プラス勇者。
ガッチャガッチャという音を立てるからどんな策を講じても、シャルに逃げられるのだか……
勇者以外、未だそれに気付かない。
そして、勇者はついにシャーロット側に回り、
永遠に続くであろう鬼ごっこが始まった。
ーーーああ、今日も今日とて、王都は平和だ。