勇者な村人D 8.33………話
不定期開催企画K☆A☆N☆W☆A!
不定期と言っておきながら、あっさりと告知してしまっていたこの企画!
○.33……話となっているのは三部もしくは二部に分けようかと思っているからです。
この緩和なのですが、ついつい気を抜いてしまうと1千文字オーバー……やっちまったぁ……?
○.66……話は気を付けて1〜2千文字内に収めることにします。
ーーー私は、殺す。
人間を、人を、ヒトをーーーその最たるもの、者………勇者を……。
☆
ウーーッ!ウーーッ!ウーーッ!
カナン村には、今日も今日とて警報が鳴り響く。
謎の光がとある青年の腕に宿って以来、連日こうだ。
「昨日はレッドドラゴン、一昨日はギガント、一昨々日は………ロゥ、一昨々日はなんだっけ?」
「……三日前はカイザーウルフ。硬くて、不味かった……」
「おお、そうだそうだ。……すまん。お兄ちゃん、ドラゴン肉とか巨人肉なら調理に慣れてるんだが、狼肉はどうも……抵抗がある?」
「………疑問形………ありがとう」
「いやいや、ただの俺のエゴだよ。食事とは結局のところ、命の奪い合いだ。向こうが狙って来たから、こちらも対抗する。………それに、なんの問題もないだろ?」
「うん……自然界は厳しい」
「うんうん。お兄ちゃん、ロゥが自然界とはなんなりやについて考えてくれて嬉しいよ」
「むぅ……もう、子供じゃない。それに、気遣いも……いらない」
「……んー………なんの事?」
「もぅ……ずるい……」
これまでにない異常事態に警戒態勢を取り……と言うこともなく、これまで通りのほほんとした空気が村全体に流れていた。
そんな、のほほんとした空気の中でさらにのほほんと……と言うかイチャイチャしている人達。
方や珍しい黒髪に、優しげな瞳が特徴の童顔の青年。
方やある意味で珍しい白狼の美少女。
轟轟と燃え盛る大剣を肩に担ぎ、なんとも恐ろしげな会話を繰り広げる変わった男女。
ーーーそれも、この村では当たり前の景色なのだが。
「あの……お兄ちゃん」
「ん、なんだい?」
「この剣……そろそろ熱いんだけど……」
「いや、別に燃えている必要はないんだけど?」
「………むぅ……褒めて……」
「ああ、なんだ。ありがとうね、熱いのに持ってくれて」
「くぅ〜ん」
こういう所がペットっぽいんだけどなぁ〜と、今更どうしようもない事を考えながら、頭をナデナデする。
ぽいっ
ズウゥゥウーーンッ!!
「………ロゥ?俺の剣を落としたんだけど」
「撫でられるのに、邪魔だったから……」
「うん、それならしょうがないね!」
目から汗を流しながら、仕方なく燃え盛る大剣を拾いに行く。
途中、ロゥの綺麗な瞳がウルウルしていたが、ここで辞めなければ後、3アワーはナデナデさせられる。
流石に、村人Dくらいのステータスしかない身にとっては辛いものがある。
「んっ………くそ、やっぱり持てないかぁ〜」
「……別に、気にしたら負け……」
たはは……と、苦笑しながら大人しく大剣をロゥに渡す。
「はぁ……流石に、この程度も持てないなどと今更嘆くつもりもないけど……たまにふと、思い出すんだよなぁ」
「あ、あの時は気の迷い……っ!ロゥも、若かった故の過ち……」
「あ、ごめんね? 別にそれをぶり返そうとした訳じゃないんだけど……」
「優しく……しないで!……心に、痛い……」
「アハハ…………っ!……」
「お兄ちゃんっ!」
「ああ……」
あの時の事とは、ロゥを拾って来て間もない時の話なのだが……それは、後の話で。
今は、突如として降って来たこの謎生命体について、だ。
「……お前が、大型モンスターが連日村の周辺に発生した原因か?」
「……ほぅ、ヒトにしては面白い事を聞く……で、そうだと言ったら?」
その謎生命体は銀色の、凹凸のない仮面を被りまるで表情と感情が読み取れない。
ただ、身体の膨らみで女と分かる。
後は………その神秘的な美しさを秘めた銀髪くらいか。
外見からは、大した情報を得られなかったが……
「食費が浮いたよ、懐が温まったよ、ありがとう。と、言う」
ーーーまあ、何処の誰だか知らないが、御礼の言葉は大事だろう。
後で住所でも教えてもらえれば、何らかの品物も届ける予定だ。
「くく……そうだろう、そうだろう。……きっと、何の罪もない幼子が死んだのだろう!明日に希望を夢見る若者が死んだのだろう!今迄必死に生きて来た老人が死んだのだろう!その者達は!世界を呪っただろう!理不尽を!不条理を…………え?」
「いえ、ですからありがとう。と、」
「死者は?」
「ゼロです」
「被害損額は?」
「寧ろ潤いましたよ」
「この世を嘆いた者は?」
「この村を通る行商ギルドの方達です。前々から難癖付けてきて面倒だから何とかしてきてと、依頼を受けていたのでちょっと………」
「………チョットマッテ……」
「はい、幾らでも」
シンクの接待用ぶりっ子が発動し、終始笑顔の気持ち悪い生物が誕生する。
だが、その気持ち悪い生物でもこの目の前の謎生命体が何をしに来たのか、さっぱり分からないのだ。
………まあ、村人達が悉く、この謎生命体の策を踏み潰した。と言うのは理解したが。
「えっと……一旦、お家に帰ってもいい?」
「いやそれは……」
「おお、シンク!もしかしてその人が村に恵みをもたらしてくれたお方か!?」
「はい、タナさん。えっと、名前は……」
「あ、し、シルバー……です」
「そうですか、そうですか。何もないところですが、どうぞゆっくりとしていってください」
「は、はい……」
謎生命体こと、シルバーは今更に……いや、改めてこの村の異常性を理解する。
先程、帰ってもいい?の瞬間【テレポート】でも何でも取り敢えず転移系の魔法を展開し逃走を図ろうとしたのだ。
くさっても自分は上級魔族。いくら大型モンスターを複数倒したと言えど、腕のいい傭兵を数人雇えば不可能ではない。
ーーー流石に、こんな村人相手には遅れを取らないだろうーーと、
その軽い慢心が全てを滅ぼした。
上級魔族でも魔法が得意なものと、力技が得意なものがいる。
シルバーは前者で、幻魔族という種族だ。
サキュバスの上位種とも言われており、その名の通り幻覚魔法、幻影魔法などと言った他者に幻を見せる魔法が得意だ。
だが、だからと言って、幻を見せる魔法ばかりが得意……と言うわけでもない。
シルバーの場合、幻覚魔法、幻影魔法の他に転移系の魔法が得意だった。
しかし、その得意分野が破壊された。
シルバー自身でも気付かぬうちに。
辛うじて分かったのはあの、気さくな老人が壊したという事実。
あの老人は一体どうやって………
仮面の奥で冷や汗を流しながら、思考を張り巡らせる。
そして、理解したのだ。
ーーーシルバーは、本当は自分で気付いていたと言う事実に。
ただ、その事実がどうしても信じられず、受け入れられず、気付けなかった。
では、あの老人がどうやって壊したのか?
ーーー簡単だ。踏みつけた。
展開しようとした……いや、少しだけ展開した魔法陣を踏みつけたのだ。
一瞬、老人の体がブレ、目の前……鼻先10センチ程でニコリと笑ったのは見間違いではなかった。
パキリ、と硝子が割れるような音。
その音と共に、シルバーは悟る。
ーーーああ、私はきっとこの村から生きては出れないのだ、と………。
風邪を引きました……
先週、インフルにかかったのでもうこの冬は来ないかな?と甘い考えが仇となりました。
大体、そのインフルだって二日で治りましたから。
じゃあね。ってバイバイしましたから。
そしたら、アイツあっさりと帰って来ましたから。
そのままの勢いでボディーブローかまして来ましたから。
で、あっさりと負けて現在です。
とどのつまり何が言いたいかと言うと、更新が遅れるかもしれません。本当にすみません。