表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪竜の騎士とゴーレム姫【第16部更新中!】  作者: 雨宮ソウスケ
第14部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

446/535

第一章 育くむ想い①

 その夜。

 焔魔堂の隠れ里は騒然としてた。

 理由は聖アルシエド王国の騎士たちと同じだ。

 巨大なる光の騎士に戦慄したのである。


 そしてその混乱は騎士たち以上だっただろう。

 なにせ、巨大すぎる騎士が隠れ里に真っ直ぐ向かってくるのだから当然だ。

 焔魔堂の戦士たちは迎撃に向かい、非戦闘員は里の奥へと避難させた。

 正体は分からずともこのまま里に近づけさせる訳にはいかない。

 だが、《焔魔ノ法》の上伝まで収めている戦士たちが召喚した三体の《三又ノ火蛇(みまたのおろち)》はたった一撃で粉砕されてしまった。

 戦力差は歴然だ。再び召喚しても同じ結果にしかならないだろう。


 一体、どうすればいいのか――。

 戦士たちが険しい表情を浮かべた時だった。


 光の騎士に立ち塞がるように一機の鎧機兵が現れたのである。


「……おお」


「あれはまさしく……ッ」


 戦士たちの多くは知っていた。

 あの雄々しき鎧機兵が、彼らの主君の愛機であると。

 天翔ける魔竜は、光の騎士を両断した。

 まさしく一刀両断だ。


「おおッ!」「御子さま……」


 その雄姿に焔魔堂の戦士たちは打ち震えた。

 そして勝利した主君の愛機が森の中に降り立つのを見届けると、誰からともなく戦士たちは一斉に駆け出した。

 彼らの主君の元に馳せ参じるためだ。

 しかし、駆けつけて彼らは騒然とする。

 何故なら、御子さまが侵入者である一団に囲まれていたからだ。


 行商に偽装した一団である。

 しかも御子さまは褐色の女騎士に拘束されているではないか。


「……御子さまッ!」


 戦士たちはすぐさま短刀を身構えた。


「――ッ! なんだ! 貴様らは!」


 一方、侵入者たち――聖アルシエド王国の騎士たちも短剣を構えた。

 それを見て、動揺したのは御子――コウタだった。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 慌てた様子で手を伸ばす。


「この人たちは敵じゃないですから! ベルニカさんの同郷の人ですから!」


 そう叫んでから、


「エルも止めて!」


 傍らで、ずっとコウタの首に抱き着いたままの女騎士――ミュリエル=アルシエドこと、エル=ヒラサカに頼んだ。

 すると、エルは小首を傾げて、


「それは命令?」


「いや、お願い……ああ、もう! 命令でいいから!」


 少し迷ったが、一触即発の雰囲気の中、時間が惜しいのでそう言いかえた。


「うん。分かった」


 命令されると、エルは嬉しそうに笑った。

 それから右腕を振り、


「剣を納めよ!」


 凛々しい声で告げる。


「その者たちは敵ではない! 戦う必要などない!」


「ひ、姫さま……?」「し、しかし……」


 騎士たちは困惑するが、王女殿下の命に逆らう訳にいかない。

 困惑しつつも短剣を納めた。

 一方、焔魔堂の戦士たちは、


「えっと。剣を納めてもらえますか?」


「「「――はッ!」」」


 コウタの一声で一斉に短刀を納刀し、その場にて片膝をついた。

 その様子にコウタ自身はもちろん、その場にいるメルティアたちも目を丸くした。


「え? コウタ? これはどういうことですか?」


 と、メルティアが尋ねてくる。


「え、えっと……」


 コウタとしては即答できなかった。

 ともあれ。

 こうして、焔魔堂と聖アルシエド王国の一団は、両組織の良好になりすぎたぐらいのTOPたちの一声により、会談の場を設けることに至ったのである。


 その後、ジェイクたちや、この場に居合わせなかった騎士たちも含めて合流し、一同は焔魔堂の隠れ里へと向かった。

 そして事前に先行隊から話を聞いていた焔魔堂の長老衆が恭しく出迎えた。

 聖アルシエド王国の騎士たちは困惑しつつも、行方不明だったベルニカ、さらには殺されたと思っていた同僚たちとも再会したこともあって、その場では受け入れてくれた。

 それから、会談は翌日にということで、その夜は焔魔堂が用意した屋敷――ムラサメ邸で休息を取ることになったのである。


 コウタもメルティアたちを連れて、ムラサメ邸に帰還し、その日は眠りについた。

 そうして――。



 ……翌朝。


「だあ」


 ペチ、と。

 頬を叩かれる。


「だあだあだあ」


 ペチペチペチペチ……。

 さらに頬を叩かれる。

 全く痛くはないが、目を覚ますには充分だった。

 パチリと。

 コウタは目を開けた。


「だあ!」


 すると、目の前には赤ん坊の顔があった。

 ちょこんとした一本角を持つ赤ん坊――タツマ=ムラサメである。


「おはよう。タツマ」


 コウタは笑った。タツマも「だあ!」と笑う。

 近くに母であるフウカの姿はない。

 好奇心が旺盛なタツマは神出鬼没で色んな場所に現れるのだ。

 フウカの悩みの種でもあった。

 ともあれ、コウタは立ち上がろうとするが、ふと腹部と右腕が動かないことに気付く。

 まず隣を見ると、そこには眠る黒髪の少女がいた。

 年齢は十六歳。

 コウタがいま着ているモノと同じアロンの白い和装を纏っている。

 額には二本の角。美麗な顔の左半分を髪で隠した少女。アヤメ=シキモリだ。

 彼女はコウタの右腕を豊かな双丘に納めるように掴んで寝息を立てていた。


「……アヤちゃん……」


 コウタは苦笑を浮かべた。

 彼女の顔を見るのも二年ぶりだ。こうして添い寝をされると恥ずかしさもあるが、それ以上に愛しさが込み上がっている。

 次いで、コウタは視線を腹部の方に向けた。


 そこにも少女がいた。

 年の頃は九歳。薄緑の長い髪が美しく、妖精のごとく綺麗な少女だ。


 アイリ=ラストン。

 同じく白い和装を着た彼女は、コウタの腹部を枕に眠っていた。


「……アイリ」


 コウタは微笑みつつ、左手で彼女の頭を撫でた。

 彼女にも心配をかけてしまった。

 眠る前には二人はいなかったので、夜中か明け方に忍び込んできたのだろう。

 帰還の安堵と疲れから眠り込んで気付けなかった。

 まあ、彼女たちに全く害意がないことも気付けなかった要因だろうが。


「二人とも心配かけてごめん。けど……」


 少し困ってしまった。

 眠る二人を邪険にしたくない。このままでは動けなかった。


「だあだあ!」


 タツマは相変わらずペチペチと頬を叩いてくる。

 コウタが困った表情を見せた時だった。

 ――バタンッと。

 突如、この部屋の襖が勢いよく開けられたのである。

 コウタはギョッとして顔だけを上げた。

 と、そこには――。


「…………」


 ネコ耳を持つ紫銀色の髪に、金色の眼差し。

 圧倒的な美貌と、抜群のスタイルを誇る美少女。


 ――そう。コウタの幼馴染。

 メルティア=アシュレイが、襖を開け放った姿勢で佇んでいたのだ。


「メ、メル……」


 コウタは二人の少女に拘束されたまま、息を呑んだ。


「……ほほう」


 すると、メルティアの背後から別の少女が顔を見せた。

 ふわりとした菫色の髪を持つ、メルティアにも劣らない美しい少女。

 リノ=エヴァンシードである。


「少し見ぬ間に犀娘とも随分と仲が良くなったのう。しかし」


 リノは美しく微笑んだ。


「今日まで長らく放置しておったのじゃ。夜伽の順ならば、犀娘やロリ神より、わらわを優先すべきではないのかのう」


「……ちゃっかり自分のことを出すあたり、変わりませんわね」


 リノの台詞に応じる者がいた。

 メルティアの影からリノと同じようにもう一人、少女が現れる。

 メルティア、リノと同い年の少女。独特な巻き毛と、頭頂部で結いだ紅いリボン。蜂蜜色の長い髪は朝日で黄金に輝いているように見える。スレンダーな肢体ではあるが、高貴さを宿すその美貌は、メルティアやリノにも劣らない。

 リーゼ=レイハートだ。

 ちなみに彼女たちは全員、焔魔堂が用意した白い和装を羽織っていた。


「しかし、やられましたわ」


 リーゼは頬に手をやって嘆息する。


「この館はわたくしの知るセラの様式と違って同じような部屋ばかり。アイリには完全に撒かれてしまいましたわ……」


「まあ、地の利はロリ神や犀娘にあったからの。昨夜は仕方がなかろう」


 と、肩を竦めてリノが言う。

 コウタの方は未だ声が出せなかった。

 ただ、どうしてかダラダラと汗をかいていた。

 そんな中、


「……コウタ」


 ようやくメルティアが口を開いた。


「昨夜の女のことも含めて、改めて説明してもらえますか?」











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ