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【第16部更新中】悪竜の騎士とゴーレム姫  作者: 雨宮ソウスケ
第8部

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第八章 炎より続く明日④

「――コウタさま!」



 コウタとメルティアが、《ディノ=バロウス》から降り、エリーズ組の元に向かうと、リーゼが駆け寄ってきた。

 いや、リーゼだけではない。ジェイクも、アイリも、ミランシャ、シャルロット。アリシア達も元にいたルカも、オルタナを肩に駆け寄ってきてくれた。

 ゴーレム達は、真っ直ぐメルティアの元に駆け寄っていく。



「……メルサマ!」「……ブジカ!」「……コウタノアニハ、オニダッタ!」



 と、メルティアに話しかける。

 一方、

 ――ぎゅううっと。

 リーゼが、コウタの首元に抱きついた。

 次いで、アイリがコウタの腰に抱きついてくる。



「コウタさま、ああ、コウタさま」


「……良かったよ。怪我はない? コウタ?」



 二人は涙ぐんでいた。リーゼも、アイリでさえもだ。

 苦戦は承知していた。

 勝ち目がほとんどないことも。

 けど、流石にコウタが、あそこまでボコボコにされるとは思っていなかった。



「コウタさま……」



 リーゼが、潤んだ瞳で尋ねてくる。



「お怪我はありませんか?」


「う、うん……」



 胸部的にはメルティアには遠く及ばずとも、美貌においては引けを取らないリーゼの顔を間近で見て、コウタは顔を赤く染めた。

 それにここまで近付くと、胸の感触だってちゃんと伝わって……。

「……あ」とコウタが恥ずかしがっていることに気付き、リーゼは慌てて離れた。

 なお、アイリの方は抱きついたままだ。

 コウタは少しホッとする。と、



「やるじゃない! コウタ君!」



 別の美女に背後から抱きつかれた。上機嫌のミランシャだ。



「本気のアシュ君相手に、本当に大したものだわ!」


「ミ、ミラ姉さん……」



 再び訪れる胸囲の脅威。ちなみにミランシャの胸はリーゼよりもちょっぴり上だ。

 顔を真っ赤にするコウタ。

 それに対し、抱きついているアイリはともかく、リーゼとメルティアはどこか優しい眼差しをしていた。

 二人とも、今は嫉妬よりも安堵の方が強かった。



「……良かったです。コウ君」


「ええ。まったくです」



 と、指で目を擦るルカに、シャルロットが呟く。



「それにしても」



 シャルロットは愛しい人に視線を向けた。未だ戦場だった場所で、何やらオトハに説教されているようなアッシュの姿が瞳に映る。



「昔から強かったですが、クライン君は本当に別格になりました」


「……そうっすね」



 と、神妙な声と顔つきで答えるのは、ジェイクだ。



「コウタでもここまでフルボッコか。とんでもねえな。あの兄ちゃん」



 シャルロットが、別格だと言うのもよく分かる。

 そして、彼女が惹かれるのも。



(あれがオレっちの恋敵かぁ……)



 あまりにも難敵。

 それを考えると、流石のジェイクでも気が滅入ってくる。



「コウタ」


「ん? なに? ジェイク」


「後でお前の兄貴の弱点とか教えてくれよ」


「え? うん、う~ん」



 ミランシャに首を。アイリに腰を掴まれたまま、コウタは腕を組んだ。

 色恋には鈍感なコウタだが、親友の気持ちは分かる。

 しかし、それは本当に難問だった。

 なにせ、兄にはボコボコにされたばかりだ。



「一応、色々考えてみるよ。後で話そう」


「おう。頼むぜ」



 という少年達の会話を理解したのは、リーゼだけだったりする。



「けど、今は……」



 コウタは、視線をアリシア達に向けた。

 完全に私用で彼女達を付き合わせてしまった。

 ちゃんと、お詫びとお礼をしなければならない。



「ミラ姉さん。アイリ」



 コウタがそう言うと、「う~ん。残念」「……ん。分かったよ」と応えて、二人はコウタを離してくれた。



「メル。行こう」


「はい。コウタ」



 コウタとメルティアはアリシア達の元に向かった。

 そこにはアリシア、サーシャ、エドワード、ロック。

 そしてユーリィの姿があった。

 コウタは、



「ごめん、余計なことで待たせちゃって」



 と、声をかける。



「おう! コウタ!」



 エドワードが二カッと笑った。

 次いで、バンバンッとコウタの背中を叩いてくる。



「本当に凄いな! まさか師匠相手にあそこまで食い下がるとは!」



 と、ロックもまた、にこやかに笑った。

 新しい友人達の賞賛に、コウタの口元が綻んだ時だった。



「……あなたは」



 不意に、声をかけられる。

 それはユーリィの――コウタの義理の姪の声だった。

 彼女は翡翠色の眼差しでコウタを見据えた。

 そうして――。



「一体何者なの?」



 コウタは、目を見開いた。



「……え?」



 と、これはサーシャの声だ。

 アシリアや、エドワード達は、ポカンとしている。

 ただ、困惑しているのは、コウタもメルティアも同様だ。



「アッシュは」



 そんな中、ユーリィは告げる。



「アルフレッドさん相手でも、あんなことはしたことがない。あんな限界を試すような真似はしない。なのに……」



 空気が、シンとする。

 彼女は静かに唇を嚙んだ。

 そこに、まるで嫉妬でも宿すように。



「やっぱり、アッシュはあなたを特別扱いしている。あなたは一体何者なの?」



 恐らくアティス組のメンバーの中でも一番優しくて、人が良さそうなサーシャが「ユ、ユーリィちゃん……?」と、困惑した声を上げていた。

 一方、当のコウタもまた、とても困ってしまった。



(これは、もう教えてもいいのかな?)



 出来れば、兄に確認したい。

 ちらりと見ると、メルティアもおどおどしていた。



(う~ん、どうしたものかな)



 コウタは沈黙した。

 アリシア達も、疑問に思いつつも黙って様子を窺っている。

 ユーリィの表情は、どこか不安を宿しているようだった。



(これは仕方がないかな……)



 コウタは覚悟を決めた。

 そして、



「ユーリィさん。それは……」



 と、口を開こうとした時だった。



「そいつは今から教えるよ。ユーリィ」



 不意に別の声がした。コウタのみならず、全員の視線が、声の方へ注目する。

 そこには、兄の姿があった。

 傍らには、少し困った表情を見せるオトハの姿も。



(……兄さん)



 アッシュは、ボリボリと頭をかいた。



「まあ、ユーリィは俺の『娘』だしな。俺から言うのが筋だろう」

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