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【第16部更新中】悪竜の騎士とゴーレム姫  作者: 雨宮ソウスケ
第8部

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第八章 炎より続く明日①

「――コウタさま!」



 リーゼが、愕然とした声で叫ぶ。



「……ど、どういうこと?」



 手を握るアイリは不安そうな顔で、リーゼを見上げた。

 決着がついたように見えた戦い。

 立会人であるオトハも、二機に近付いていた。

 だからここで終わり。

 コウタは、すべてを兄に伝えた。

 リーゼ達はそう思っていた。

 しかし――。



「……アシュ君」



 腹部を覆うように腕を組んだミランシャが、神妙な顔で《朱天》を見つめた。

 今、《朱天》は全身を真紅に染めていた。

 アルフレッドとの模擬戦でも見せたことのない最強の姿だ。



「どうやら」



 シャルロットがミランシャに並んで呟く。



「クライン君は、コウタ君に試練を与えるつもりのようですね」



 ミランシャは視線をシャルロットに向けた。



「……ええ。それは分かるわ。けど」



 眉をひそめる。



「まさか、アシュ君がここまでするとは思わなかったわ」



 ミランシャの呟きに、リーゼ達はハッとした表情を見せた。

 あえて少し距離をとっておいたアリシア達に目をやりつつ、小声で。



「それは、まだ戦いが続くと言うことですの?」


「ええ。でないと、あの姿にはならないわ」


「おいおい……」



 ジェイクが渋面を浮かべた。

 真紅に輝く鎧機兵を見据えて。



「あの状態だと、《九妖星》の二倍は強えんだろ? 幾ら何でも無茶だぞ」



 強張った声でそう呟く。

 全身を真紅に染めた《朱天》はこの距離でも威圧感が届くほど異様だ。



(ありゃあ、洒落にもなんねえな)



 冷たい汗が頬を伝う。

 思わず、微かに喉も動いた。

 あれほどの威圧感は、黄金の鎧機兵と対峙した時にさえ感じなかった。



(マジで牛野郎より強いのかよ……)



 ――あれは、絶対的に格が違う。

 ジェイクは、肌でそれを感じ取っていた。

 恐らく、コウタも同等かそれ以上の危機感を抱いているはずだ。



「すでに《ディノ=バロウス》は武器を失っています」



 リーゼが、ミランシャを見つめて告げる。



「万全の状態とは言えませんわ。試練をお与えになられるとしても、別の機会にはできないのでしょうか……」


「それは無理でしょうね」



 ミランシャは苦笑を浮かべた。



「それも含めて、きっと試練だから。そもそも戦場では武器を失うこともあるわ。今の《朱天》が片腕を損傷しているように」


「ええ。そうですね。ミランシャさまの仰る通りです」



 シャルロットも、リーゼを見つめつつ同意する。



「危機的な状況をどう凌ぐか。きっとクライン君はそう考えていると思います」


「……それは」



 リーゼは、キュッと唇を嚙んだ。



「……リーゼ」



 アイリは手を握ったまま、彼女の名を呼んだ。

 不安なのはアイリも同じだ。

 あの真紅の鬼は、過去最強の相手なのだから。



「……コウタと、メルティア、大丈夫なの?」


「それは……」



 流石に命を奪うような真似はしないだろう。

 だが、試練ならば、それに次ぐ危機は大いにあり得る。



(……コウタさま)



 リーゼは、胸元に片手に当てた。

 心臓が早鐘を打つ。

 傍に寄り添えない自分を、不甲斐なく思う。

 だからせめて。



「どうか、ご無事で」



 それだけを祈った。

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