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【第16部更新中】悪竜の騎士とゴーレム姫  作者: 雨宮ソウスケ
第8部

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第七章 《煉獄》の鬼②

(……コウタさま)



 リーゼは祈るような想いで、《ディノス》を見つめていた。

 彼女の隣には、同じような表情をするアイリがいて、リーゼの手を握っていた。



(あれが、お義兄さまの機体、《朱天》ですか)



 真紅の角と白い鋼髪。

 まるで《煉獄》の鬼を思わせる漆黒の鎧機兵。

 コウタの《ディノ=バロウス》と並んでも、見劣りしない威圧感を持つ機体だ。



「……コウタ、勝てるかな?」



 アイリが、リーゼの手をギュッと掴んで呟く。

 あの敵が尋常ではないのは、素人のアイリでも分かるのだろう。



「……アイリ」



 リーゼは強くアイリの手を握り返した。

 しかし、気休めは言えない。



「……お義兄さまは《七星》最強です」



 わずかに視線を伏せる。



「対し、コウタさまの今の実力は、アルフレッドさまとほぼ同等。ミランシャさまの予測は、わたくしも正しいと思いました。恐らくコウタさまに勝ち目は……」



 ほぼ皆無。

 それは口にはしなかったが、アイリは眉をひそめた。



「ですが、安心してください。アイリ」



 リーゼは、優しく微笑む。



「この戦いは、《九妖星》を相手にする時とは違います。想いを伝えるための戦い。お怪我されないことは祈りますが、命を失うようなことだけは絶対にありません」


「……それは分かっているよ。けど、私は」



 アイリは、リーゼの顔を見上げた。



「……純粋にコウタに負けて欲しくない」



 リーゼはクスッと笑った。



「まあ、それはわたくしも同じですわね」



 愛する人の勝利を願わない女はいないということだ。

 アイリは、チラリと《ディノ=バロウス》に目をやった。



「……いつも思うけど、メルティアだけ相乗りの特権を持っているのはずるいと思う」


「……そうですわね」



 リーゼも《ディノ=バロウス》に目をやって頷く。



「そろそろ、あの特権は取り上げるべきですわね」


「……うん。私達も要求すべきだよ。けど」



 アイリは自分の真っ平らな胸を見た。それからリーゼの胸も見やる。

 アイリは「……むう」と呻いた。



「……リーゼなら、まだ押しつければ、おっぱいの感触は伝わるだろうけど、私にはまだ無理だよ。前から抱きつくってのは無理かな?」


「え? そ、それは……」



 リーゼは目を見開いた。

 そしてその直後に、ボッと赤くなる。

 思い出すのは、彼女の人生を決定することになった新徒祭。

 純白の鎧機兵と対峙した事件だ。



「シ、シートの位置や、操縦棍の高さを調整すれば可能ですが、そ、その……」



 体験談をつい語り始めてしまう。

 が、すぐにハッとし、リーゼは、口元を隠して視線を逸らしてしまった。

 耳や、うなじまで真っ赤だった。



「……リーゼ?」



 アイリが首を傾げる。



「……どうしたの? どうして顔が赤いの?」


「い、いえ! 何でもありませんわ!」



 それよりも、と続け、



「か、仮に、アイリが《悪竜ディノバロウス》モードが制御できるようになっても、コウタさまが戦場にアイリを連れて行くことはあり得ませんわ」


「……むう」



 無念そうに呻くアイリ。

 リーゼは、アイリの頭を撫でた。



「……けど、権利だけは欲しいところだよ」


「……そうですわね。後でメルティアに要求しますか」



 と、リーゼが頬に手を当て呟いた時。



「うわあ、何あれ……」



 呆然としたアリシアの声が届く。

 リーゼとアイリが、少し離れている彼女に視線を向けた。



「なんか、無茶苦茶おっかねえのが出てきたな、オイ」



 続けて、エドワードも呟きも聞こえてくる。

 どうやら、彼らは《ディノ=バロウス》を見て驚いているようだ。



(まあ、初めて《ディノス》を見れば当然の反応ですわね)



 リーゼは苦笑した。

 これは、きっと説明がいるだろう。

 リーゼは、アイリの手を引いて、アリシア達の方へと足を向けた。

 が、近付く前に、一度だけ足を止める。

 彼女は、視線を《ディノ=バロウス》に向けた。

 愛する人と、親しき友人が乗る鎧機兵は、今日も雄々しい姿だった。

 リーゼは、微かに瞳を細めた。



(……コウタさま)



 そして、彼女は祈る。



(どうかご武運を。そしてメルティア共に、怪我だけはなさらぬように)

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