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【第16部更新中】悪竜の騎士とゴーレム姫  作者: 雨宮ソウスケ
第8部

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第二章 再会と、新たなる出会い③

『は、初めまして』



 コウタに続き、メルティアが声を張り上げた。



『メ、メルティア=アシュレイです。コウタの幼馴染で、同級生で、ア、アシュレイ家の長女、です』



 続けて、ブオンと頭を下げる。ハンマーを振り下ろすような挨拶に、アティス王国の少年達は表情を強張らせた。少女達も少しだけ腰が引けている。



「これは申し遅れました」



 そんな中、壮年の騎士が堂々とした佇まいで挨拶を返してくる。



「私の名は、ガハルド=エイシスと申します。アティス王国第三騎士団の団長を務める者です。アシュレイさま。ヒラサカ殿。どうか、お見知りおきを」



 言って、騎士はコウタに一礼をし、メルティアの着装型鎧機兵パワード・ゴーレムの手の甲にキスをした。

 礼儀正しい騎士団長の対応を見て、少年少女達も続いた。



「おう! 俺の名はエドワード=オニキスだ!」



 まずは、ブラウンの髪の少年が名乗る。



「エドと呼んでくれ!」



 二カッと笑ってそう告げた。

 とにかく明るそうな少年だ。

 コウタとメルティアは「宜しく」と返して、エドワードと握手を交わした。



「ロック=ハルトだ。二人とも宜しくお願いする」



 続けて、そう名乗ったのは大柄な少年。ジェイク並みの巨漢だ。

 少し武人のような雰囲気を持っている。

 コウタ達は彼とも握手した。



「サーシャ=フラムです。よろしくお願いします」



 楚々たる仕草で名乗るのは、銀髪の少女だった。

 甲冑まで着た見た目は、まさに騎士そのものなのだが、何というか良き母、良き妻になりそうな穏やかさを持つ少女だ。



(やっぱりこの人がサーシャ=フラムさんか)



 コウタは、少しだけ複雑な想いで彼女と握手を交わした。



「私はアリシア=エイシスよ」



 長い髪をなびかせて、活発そうな少女が名乗る。

 顔つきからして凜々しさを感じさせる少女だ。

 ただ、少し気になる。



「……エイシス?」



 コウタは、壮年の騎士の方に目をやった。

 エイシス騎士団長は、苦笑を浮かべる。



「娘です。礼儀知らずで申し訳ない」


(き、騎士団長の娘っ!?)



 コウタは、顔には出さなかったが驚愕した。

 その事は、ミランシャからも聞いていなかった。



(に、兄さん、そんな娘にまで好かれてるの……)



 まじまじと少女――アリシアを見つめる。

 彼女は、怪訝そうに眉をひそめた。



(ま、まあ、それを言うのなら、ルカに至っては王女さまか)



 気持ちを立て直す。メルティアと共に、アリシアとも握手を交わした。

 そして、最後の一人と向き合った。



「……ユーリィ=エマリア。ルカの友達。よろしく」



 空色の髪の少女が名乗る。

 やはり、この子こそが兄の義娘らしい。

 コウタは一瞬沈黙するが、すぐにニコッと笑って彼女と握手を交わした。

 それから、改めて少女達に目をやった。

 アリシア、サーシャ。そしてユーリィを。

 事前に聞いた話では、彼女達は、全員が兄に想いを寄せているらしい。



「……コウタさま」



 その時、不意に、リーゼがコウタに声を掛けてきた。

 コウタは、リーゼに目をやる。

 彼女は、何とも言えないような表情を浮かべていた。

 わざわざ言葉にしなくとも、想いはよく伝わってくる。

 コウタは、とても困ったような表情を見せた。



「……うん。分かっているよ。リーゼ。彼女達に加えて、さらに……」



 そこで、視線をルカにも向ける。

 可愛い後輩は、不思議そうに首を傾げていた。



「……多分、ルカもなんだよね。はぁ……」



 思わず溜息が出てくる。



「あ、あの……」



 すると、サーシャが、おずおずと手を上げた。



「ど、どうかしたんですか? その、ヒラサカ君」



 優しそうな少女が、心配げな眼差しで尋ねてくる。



「あ、コウタで構いません」



 コウタは内心では苦笑しつつも、笑った。



「ボクらも、出来れば皆さんのことを名前で呼びたいですし」


「それは、別に構わないけど……」



 続けて、アリシアがコウタに尋ねてくる。



「じゃあコウタ君。何かさっきから奇妙な感じなんだけど、何かあったの?」



 随分と直球な質問だ。



(これは露骨だったかな?)



 確かに、心情を隠しきれていなかったように思える。

 リーゼやジェイクの方に目をやると、彼らは嘆息したり、肩を竦めていたりした。



(う~ん)



 コウタは、頬をポリポリとかいた。



「いえ。本当に話通りの容姿の人達なんだなって思って。実は、ボクらはここにいる皆さんのことをあらかじめ聞いていたんです」


「「「………………え?」」」



 アリシア達は目を丸くする。

 これもまた当然の反応か。コウタは心の中でふっと笑う。



「もちろん、ここにいないオトハ=タチバナさんや――」



 そこで、コウタは少し躊躇った。

 が、すぐに意を決し、その名を呼んだ。



「……アッシュ=クライン・・・・・・・・・さんの、ことも」



 ――兄の今の名を。

 一瞬、沈黙が降りる。

 驚くルカも含めて、アリシア達は呆然としていた。



「ルカ」



 ユーリィが、訝しげな様子でルカに尋ねる。



「私達のことを事前に教えてたの?」



 それに対し、ルカは、ブンブンとかぶりを振った。



「ア、アリシアお姉ちゃんのことや、サーシャお姉ちゃんのことは少し話したことはあるけど、ユーリィちゃんや、仮面さんのことは話したことはないよ」


「……じゃあ、どうして私達のことを知ってるの?」



 ユーリィが眉根を寄せる。

 それはアリシアやサーシャ、ロック達も同様だ。

 ユーリィに限らず、アティス組にしてみれば、訳の分からない状況だろう。

 と、その時だった。



「それは簡単な話よ。ユーリィちゃん。だって、アタシが教えてあげたのだから」



 その声は、唐突に響いた。

 それは聞き覚えのある声だった。

 コウタ達のみならず、アリシア達にとっても、だ。

 事実、アリシア達はギョッとしていた。

 エイシス騎士団長も桟橋に目を向けて「ッ! あなたは……」と目を剥いている。

 彼女を知らないのは、この場ではルカだけだった。

 そして――。



「「「ミ、ミランシャさん!?」」」



 桟橋に目を向けたアリシア達が、驚愕の声を上げた。

 現れたのは、三人目の公爵令嬢。

 ――嵐を呼ぶ赤髪娘。

 ミランシャ=ハウルの登場である。

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