第2歌 核兵器
力――吹き荒れた圧倒的暴力を、世界は見た。消しとんだものは、
私達そのものの一部――かつて大地に「人間」として直立して以来、
目に見えないながらも確かに成熟へと向かい、
小さな種から彩り鮮やかな花を経て、「躍動」「純真」「神聖」それらの名で呼ばれる実へと、
他の何ものでもなく「私は人間である。あなたでも、彼でも、彼女でもなく、私という」
そう言える光によって温められ、育てられてきたもの。
もちろん、それらはまだ残っている。抵抗激しく、人々を地下茎のように繋いで。
おそらくずっと以前より、この地下茎はあったのだ。腐敗から逃れるために、
時として土を掘り返し、それらはもはや死に絶えたかのように見えることもあったが、
私達の先生は、それが仮の破壊であることを、よく理解していた。
そして茎は腐ることなく、一層力強く私達を励まそうとしてくれる。土の中と外を知り、
人と天使を引き合わせもしてくれた。勇敢な者はきっと、天使の願いを秘めただろう。
それでも力――それは現れた。解き放たれた。世界に込められている力――まずは発見があった。
それは突如として現れたのだろうか。それとも連綿とした流れの必然であろうか。
おそらく多くの者は、時にはロマンティシズムを装いながら、こう言うだろう。
「私達の知性は、あらゆる偶然を引き寄せ、それを理論に組み入れる」
彼らには、断定できないのだろうか。
自らを包み込む大きな力を指して、はっきり「運命」と口にすることは恐るべきことであり、
悪魔に与えられながら、最大の冒涜として考えられている。何という矛盾だろうか。
しかしこの分裂を、勘違いしてはならない。なぜならここに、本来の矛盾などあるだろうか。
天と地に挟まれた高揚する矛盾が? そこにあるのは忘却と盲目だ。そしてこれこそ、
悪魔が使う「そそのかし」ではないか。何の問題もなく、論理的で科学的、理屈通り、
そんな世界が最上だと謳う舞台は、今や多くの観客で賑わっている。
飛び散る汗は金属臭い。かつては魚臭く、そのもとの市場では矛盾が売られていたのに。
全ては捩じ伏せられてしまった。その力は支え合う可能性を放棄して、
虐げる力となった。どんどん強くなる力――もはや意味すら失った。
それでも力は必要とされているのか。平和の力、和解の力、抑制の力――
それらが目に見えなければ安心できないのは、やはり悪魔の教えに他ならない。
「大切なものは手に握れ。掴めぬものはないに等しい」
しかし悪魔は、何が大切なものかなど、ひとつも語りはしない。彼は人の知性を弄んでいる。
それはそうだ。奴にとって人の思考など、赤子同然なのだから。
そんな赤子が、地球を割ろうとしている。
では私達が胸を張って、「この力の結果は私のせいです」と言えば良いのか。
言った者が世界の前で首を切られ、石碑になれば全て終わるのか。
その死は一体、何だろうか。
急ぎ死のうとする者は、ただ動物達の目を見るが良い。彼らが死の先を教えてくれるだろう。
悪魔に仕える者達も、自然を生きる動物の声に、耳を傾けると良い。
今まで示されえなかった、形の捉えられないもの、彼らの言葉で言えば、
まるで空気、まるで光――そのような何かが現れるだろうから。
そして少しだけでも、硬い果実に柔らかな実や皮を付けられれば良い。
私達は、本当の矛盾に立ち戻ろうとする。あらゆる矛盾が網となり、この力に絡まっている。
一人の男が財を失い、方々さんざん彷徨い尽くした後、日々の糧すら得られなくなり、
ついに少ない友に助けを求めた。「少しばかりのお金を下さい」
しかし友は言う。「どうして金を求めるのか」男はさらに頭を下げて、「では何を求めるべきなのでしょう」
答える友はおらず、男は一人、荒野に残された。この荒野は今でも「孤独」と呼ばれる。
なぜなら、「孤独」は真の植物を知っているからだ。同じように、真の動物も。
「孤独」は唯一、我々人間も知っている――夜が来て、ゆっくりと去り、朝が降り立つ。
すると荒野の枯れかけた草の上にも、わずかな露が現れる。
男は、地平線まで続く果てのない「孤独」に語りかけた。
「私に、この一滴の露を下さい。あなたの御膝の、わずかな水を下さい」
男はそして、もはや二度と金を手にすることなく、死んでいった。だがどうだろうか、
彼の余生が何者にも助けられなかったと言えるだろうか。いいや、彼のもとには届けられたのだ。
冷たい水から、熱いスープまでが。そして太陽に調理された花々や、
自ら捧げものとなった羊まで、男はあらゆるものを手にし、また放棄し、
人々の間で密かに生きていた。何ものにも、そう、どんなに硬い果実ですらも、
彼を傷付けることはできなかった。男は得て、そして捨てたからだ。
だが力は、男が生きるための真の植物、真の動物、そして真の人間までも、
その内奥から粉々に砕いてしまう。もはや、石が自らを石と言えなくなるような、
古代の愛がさらに硬化して、血ではなく、ただの肉が全てのような、
少年や少女を、その自転車ごと燃やしつくして、全てを影の世界にするような、そんな不条理で。
ここではもう、私達は世界を見失い、「私はここです」とも言えず、
「これはあなたの杯ですか」とも言えず、地面に落ちたパンも葡萄も、
遠い宇宙からやってきた隕石の名残のように、
何かを伝えようとしてはいるが、もう、何も語ってはくれない。
ただ、おぞましく、おそろしく――私には、巨大な蜘蛛が見えます。地球を覆う、恐怖の肢が。
それは、単純に全てを打ち消す炎でさえも、壊せないでしょう。
何によっても、殺せないでしょう。それこそが「尊厳」だと言う者がいれば、
何を犠牲にしてでも戦わなければなりません。この上空、どんな雲も突き抜けて、
私達を生かし続ける最古の熱量から、激しさ増して雷降らし、
大地を怒りの鍬で耕し、無形の光を蒔きましょう。
そしてもう一度、私達が陥った黒くて硬い悪魔の爪、眼球、尾、それらの矛盾と無能を指して、
「私達はこれらを手にし、放棄する」あるいは「私達はこれらを得て、そして越える」
そう言い放つ最後の言葉を、「これこそが尊厳」で結び、頭を垂れよ。
近付いてくる者がいる。彼は「未来」と呼ばれています。
しかし力、悪しき過去、悪しき今は、「未来」に気付かないのです。
なぜならそれらの力は、反発する思い、不信で保身、固い利己主義、
そんな我らの排泄であり、同時に身代わりだからです。だからこそ――
私達は頭を垂れます。それは矛盾、共感と反感の矛盾、そこになら、
「未来」は人間の姿を取って、近付いてくるでしょう。