壊れた日常
私は君に言った。
『ねぇ、来年の今日には花を贈ってほしいな。何でもいいから。』
『花?うん、わかった。楽しみにしていてよ。』
君は不思議そうな顔をしていたけど、笑って頷いてくれた。
2年前より少し大きくなった君が、少し大きめの花束を抱えていた。
『ねぇ、今年も花を持ってきたよ。今年はね、カンナとピンクのバラ。綺麗でしょ?』
『去年だけでよかったのに…でも、ありがとう。凄く綺麗!』
『へへ、気に入ってもらえてよかった。』
君は照れたように頭をかいた。そんな君が愛しくて、私はそっと花束を抱きしめた。とてもいい匂いがして、私はとても幸せだった。
『ねぇ、君の見ている世界は何色?僕は、変わらず涙色だけど。』
『その質問、懐かしいねぇ。ん〜…今の世界は、色とりどりに輝いて見えるかな。素敵なことがたくさんあって、とても幸せな色。』
『そっか、よかった。…じゃあ、僕は行くよ。君が見た、色とりどりの世界へ。』
『え?どういうこと?』
『もう行かなきゃ。…ばいばい、…。』
『待って、ねぇ!どうして…!』
目が覚めると、そこは真っ白な部屋だった。
「目が覚めた?あなた、いきなり家を飛び出したかと思ったら気を失って倒れているんだから。」
「気を失って……あ、ねぇ、彼は?無事なの?!」
「落ち着いて聞きなさい。まだ万全じゃないんだから。…彼は、…亡くなったわ。あなたへの花束を持って。」
「…そ…か。だから…だから、…。」
母は病室から出て行った。
一人になった私は、声を殺してずっと泣いていた。
彼の持っていた花束は、カンナとバラだったらしい。それを聞いて、私は再び泣いた。目が覚める前に彼が出てきたのは、その花束を渡すためだったんだろうな、と考えて、尚更苦しくなった。メッセージカードには、『2年間ありがとう。大好きだよ、結婚しよう。』と書いてあった。私の大好きな彼の字は緊張していたのか少し震えていた。
もう、会うことのできない彼を思って、私はずっと花束を抱きしめて泣いていた。




