プロローグ
俊介はどこにでもいる高校二年生。
やりたい部活がなく帰宅部だ。
いつもの帰り道のことだった。
「あれっ?」
道端に何か落とし物を見つけた。
手に取って見ると時計らしいが、動いていない。
〔03:00〕と表示されているだけだ。
「なん〜だ、ガラクタか!」
捨てようとすると空から初老の男の声がする。
「選ばれし者よ!」
「俺が?」
「お前じゃ!他に誰がいる!」
「そうだけど…てかオッサン誰?」
「バカモン!ワシは〔仙人〕だ!それにタダの時計ではない!」
「ハァ!?意味がわからない!」
「バカモン!これは時間が止められる時計だ!」
「怒鳴るなよ…それにそんなマンガみたいな事信じられないし…」
「信じられないのも仕方ないだろうがな…」
―――――
仙人と名乗るオッサンによると、これは正しい心を持つ者だけが使える、正真正銘の〔時間が止まる時計〕らしい。
詳しいスペックは
※1日1回3分のみ自分以外の時間が停止する。止めたのが3分以内でも2回目以降は24時間たたないと使えない。
※もし24時間使わなかった場合は、停止時間が24時間毎に3分伸びる。(次に使う時のみ)
※時間を止めた場合は自分が寝る時間がその分だけ短くなり相殺される。
と言うことらしい。
―――――
「ないとは思うがな…」
「何だよ…」
周囲が重い空気に包まれる。
「悪事にこの時計を使うと、そいつの時間は永遠に止まる…」
「…まさか?」
「眠ったまま、全く動かなくなる。息もしないし、心臓も動かない状態になるのじゃよ」
「死ぬってこと?」
「厳密には違うのじゃが、世間にはそう認識される可能性は高いな」
「じゃあ…」
「生きたまま火葬される危険性があるのじゃ」
「そうなると…」
「その時は死ぬことになるのじゃ」
「…」
俊介は怖くなり言葉が出なくなる。
「お主なら大丈夫じゃよ!」
「気をつけるよ…」
「有効に使えよ!」
そうして、俊介は不思議な時計を託され、仙人の声が消えた。
一瞬、夢かと思ったが腕には時計がある。
〔現実だ…〕
俊介は複雑な気分で家に向かった。