Ⅸ 歓迎会(後編)
桜川亜優って、あの桜川亜優なのか・・・。
湯浅と付き合っていたことは知っていたが…。
桜川亜優、あの子は、真面目で成績優秀で合唱コンクールでは、伴奏を務めていた。
「直人くん、私のこと、忘れっちゃったの?。」
いつもより一層甘くろれつの回らない、湯浅先生の声が聞こえた。
飲みすぎだよ…。
「い、いや忘れてねえけどよ。」
俺が、そう答えると、湯浅先生は微笑んだ。
「先生、俺は帰ります。」
と言って、湯浅夫婦は帰っていた。
店には、俺と佐織先生が残っていた。
「佐織先生、帰りますよー。」
俺が、そう言うと佐織先生は、寝ながらポケットに手を突っ込み紙切れを渡した。
ずいぶんとえらそうだな、とおれは少しだけ思いながら紙切れを読んだ。
それは、住所だった。佐織先生の家だろうか。
佐織先生を抱え、店を出た。
「へい、タクシー。」
俺も、酔っぱらってるのかもしれない。
酒飲んでねえけど。
タクシーに乗って、佐織先生の家?まで行ってもらった。
「あれ、ここはどこですか?。」
あとすこしですよ、と運転手さんが言う声が聞こえて間もなく佐織先生がめをさました。
「この紙切れは、君の住所?。」
俺は、佐織先生の質問をスルーしてしまった。
「あー、はい。そうですけど。」
佐織先生は、そう言うと、携帯を取り出した。
「着きましたよ。」
運転手さんがそう言うと、佐織先生はタクシーをささっと下りた。
「送りますよ。」
俺も下りようとした。そうしたら、
「大丈夫です。もうすこしで家ですから。」
いやいや、そう言う問題じゃなくて、この近くにも俺の家あるから。。
俺は、運転手に代金を払い、佐織先生のあとを追った。
「すみません、送っていただいて。」
いやいや、俺の家多分、お前の家の近所だと思う気がしてきたから平気、とか言えねえし。
「私、ココ何で。」
俺の住んでいるアパートの下に佐織先生は住んでいた。
「じゃ、また明日。」
佐織先生は、そう言って部屋に入って行く。
俺と同じアパートかよ。