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第96話:恋愛?の駆け引き

 どこか少し怯えている浩一郎に良弘は唐突に切り出した。

「浩一郎、焔の件で少しだけあなたにお聞きしたんですがよろしいですか?」

 目前に迫る良弘に今までにないぐらいにっこりと微笑まれ、浩一郎は喉の奥で悲鳴をあげそうになった。

 いつも浩一郎が身につけている『笑顔の仮面』など、この男の前では無力だ。

 身構える浩一郎に良弘はひそやかに笑いながら直球の質問を投げつけた。

「まずは素直に答えてください。焔のことを好きですか?」

 時速150kmは余裕にありそうな剛速球の質問に浩一郎は顔を染めた。

 質問を投げかけた良弘は自分よりも下に位置する彼の顔をじっくりと観察している。

 浩一郎はごくりと唾を飲み込むと、目の前の彼に気圧けおされないよう、もう一度気合を入れなおした。

「好きだ、言葉じゃ表しきれないぐらいに」

 覚悟は決めていたものの、やはりその一言を言うだけで身体が緊張する。

 何しろ良弘は思わぬところで自分よりも上手うわてな部分がある。その上、彼の中には『浩一郎じぶんの一番大切な女性』が眠っているのだ。

「気持ち悪いぐらいに、正直ですね」

 面白いものでも見るように感想を述べる良弘を浩一郎は少しだけ睨みつけた。

「正直になるしかないだろ。殆ど全部知られている相手に」

 抜け目の無い良弘のことだ、自分と焔の遣り取りの記憶など焔が中で眠りにつく瞬間に読み取っているはずだ。

 実際、彼は浩一郎が焔を『好き』だという事実を知っている。

 殆ど不貞腐れている彼に良弘は『我が意を得たり』とばかりににやりと笑ってみせた。先程から浩一郎の頭の後ろで警戒のアラームがけたたましく鳴っているのは気の所為だろうか。

 しかし怪しんでいる彼を後目に良弘は更に質問を投げかけてきた。

「それは恋愛感情ですか?」

「当たり前だろ」

「つまり、彼女あのこが欲しいと」

「直接的に言えば、な」

「キスをしたい・・・?」

「したいさ」

「抱いたり、愛を確かめ合いたいと・・・」

「そんなことが出来たら天にも上るだろうな」

 数々の質問になか自棄やけになりながらも正直に答えた浩一郎は視線を上げて良弘の顔を睨みつけた。

 しかし意地悪な顔をして質問しているだろうと思った良弘の顔は冷たい笑顔で彩られていた。

「気色悪い方ですね」

(何故、そうなる!?)

 良弘の唐突な結論のせいで喉まで出かかった叫びを浩一郎は何とか飲み込み、今の遣り取りを自分の頭の中で再度見当する。

 答えとしてはこの年齢の男として普通の『答え』しか返していない気がする。

 では、表情が気色悪かったのだろうか。

 自分の何が悪かったのか考え始めた浩一郎に良弘はあっさりと重大な事実をつきつけた。

「よく考えてみてください。

 焔があなたのモノとなるということは私の肉体が貴方に抱かれることになるんですよ」

「げっ・・・」

 変にリアルな状態でその場面を想像してしまい、浩一郎は気色悪そうに眉を顰めた。

 幾ら見た目がよくても良弘は完璧なまでの『男』である。自分よりも背は高いし、体格だって武道を修めているために見た目以上にがっしりしている。

 第一、自分は彼に友情以上の感情を抱くことなんて出来ない。良弘はあくまで『良弘』であり、自分の親友なのだ。

 焔がその肉体を支配していて、良弘の気配が微塵も感じられない状態ならば情欲も湧くというものだが、目の前にいる彼に対しては想像すらしたくなかった。

 例えを出した良弘のほうも自分で少し想像してしまったらしく、浩一郎同様ダメージを食らっている。

「わかった、そういう即物的な欲望は抱かないようにするから、逢うことぐらいはさせてくれ」

 かなり弱気ながらもしっかりと自分の要求の提示を怠らない浩一郎に、彼は「そうですねぇ」と考える仕草をとった。

浩一郎、良弘に遊ばれる、の巻。

危急時には互いを信頼し、協力し合う二人ですが、平和な時は浩一郎は常に良弘のおもちゃ的存在です。それぐらいのことが出来る人間でなければ浩一郎は他人を認めません。

後、2〜3話ぐらいでこの話も終了です。明日、更新できるかどうか怪しいですけど、ラストスパートで頑張ってみます。

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