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第75話:路上での攻防戦

 一方、浩一郎たちは待ち合わせの場所にどう向かうかを考えあぐねていた。

 駆落ち相手との待ち合わせの時間は刻一刻と近づいてきている。早くしないと電車の時間に間に合わない。


 浩一郎も真帆も少しづつ焦りを感じていた。


 そこまで行くのに一番単純な手段はここから見える駅から地下鉄を利用することだが、待ち合わせの駅までは地下鉄で2回は乗り換えなければならない。そんな悠長なことをして彼らに見つかれば、ここまでの計画が水の泡になってしまう。

 また公園のそれぞれの出口は勿論、公園から駅へと向かう道路には沢山の桧原の人間が見張っている。あまりの物々しさに、一般の住人たちが怪しんでみていても彼らには関係ないらしい。

 もちろん住人たちも係わり合いを持ちたくないとばかりに警察を呼ばない。

 浩一郎達は息を潜めながら、公園の茂みの中を次々と移動してゆく。

 少し歩くと公園が唯一面する大通りに接する場所へと出た。やはりそこにも見張りはいたが、駅側の道路ほどあからさまな不審者ではなく、どちらかといえば真帆の見覚えのある普通の桧原の家の者が多い。

「一か八かで流しのタクシーを捕まえるしかないな・・・」

 駅はすでに敵の掌中しょうちゅうに落ちている。

 駅員など一般の人も居るかもしれないが「家出した娘を家の者が迎えにきた」と言われ、屋敷に連絡してしまわれればこちらの負けだ。

 最初に移動の手段として考えていた浩一郎達が乗ってきた車は今居る場所の丁度対角の方向にある駐車場で待機してもらっている。ここから行くとなると自分たちが逃げ出してきた柏原たちの元へと戻るか、この公園の外周を約半周ほど迂回してゆくしかない。

 たぶん、それを見越して彼らはあの方向から自分たちの前へと現れたのだろう。

 用意していた二つの逃走経路が仕えない以上、それしか方法は無い。幸いなことにここには人目があるし、タクシーに乗り込んだ後、追手の車をどうにか止めれば・・・

 不意に見張りをしていた男が振り返り、その拍子に持っていたペンを落とした。彼は自分の相棒に断りをいれるとそれを拾うために腰をかがめた。

「あ・・・」

 普通に立っていたら見えない位置に陣取っていた浩一郎達の姿を、ペンを拾い上げた瞬間に男は視界に捕らえた。

「ちっ!」

 浩一郎は小さく舌打ちをすると見張りが声を発するよりも先に茂みから大通りの歩道へと飛び出した。 その腕には確りと香帆の体が抱えられている。

 真帆も自分の荷物を抱えて、浩一郎の後に続いて歩道へと飛び出す。

「全力で走るよっ!」

「はいっ!!」

 その号令と共に走り出した二人は、伸びてくる見張りの腕をなんとかくぐってゆく。

 真帆はまだショックの所為で震える足をなんとか叱咤しながらも、持ち前のフットワークのよさを前面に出しながら、公園前の広い歩道を右へ左へと横振りしながら走った。

 浩一郎は真帆とは逆に迫り来る者すべての鼻っ柱を唯一空いている右手で殴りつけ、歩道へと鎮めていく。左から来る敵にはもっと酷く、革靴を履いた足で容赦なく腹部を蹴りつけ、動きを封じていった。

 それでも真帆よりも走る速度は速いという、ある意味化け物的な脚力だ。

 真帆はそんな彼に置いていかれないように必死に足を動かすのだが、精神的衝撃が抜けきらない足はいつものようにスムーズに足が運べない。こんな状態で転ばないことが奇跡に近かった。

 そんな彼らを嘲笑うかのように目の前の歩行者用の信号は青から赤へと変化し、大量の車が行く手を阻む。

 浩一郎は仕方なく公園に沿って左折すると、足元のおぼつかない真帆の手を引っ張って走り始めた。

「大丈夫!?」

「え・・・ええ」

 応えては見せたものの、慣れない逃走劇に真帆の息は上がっていた。

浩一郎、暴れまくるの巻。真帆はふらふら、香帆はすやすやで浩一郎一人で敵を倒しています。

人目のあるところで炎を出すことができない桧原の一族では腕っ節が良弘には及ばないものの、並以上には強い浩一郎にはかないません。

それにしてもすべての殴りで骨を折っていく浩一郎、暴力事件として通報されたらしっかりアウトでしょう。

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