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第70話:目の前の悪夢

 浩一郎は真帆の鞄を持つと彼女をできるだけ光の影響を受けない位置まで下がらせようとした。

 真帆はそんな彼の行動に眉を下げ、珍しくか細い声で呟いた。

「でも、良弘さんが・・・」

 あの光は良弘あにが自らの力で魂の封印している鎖を断ち切り自分たちの元へと戻ろうとしている前兆だ。それならば傍にいたいと彼女が思うのは当然のことだろう。

「あえて言うけど、たぶん、真帆ちゃんではあの光に耐えられない。あれを受け続けていても無事でいられるのは焔だけだ」

 蒼い魂珠から発せられるこの光は尋常なものではない。まるで炎が放つ熱射のように近くで触れる者全てを焼き尽くそうとする性質がある。

 それを証拠に、柏原の手には桧原の血筋ではありえないほどの火傷が出来ており、彼の周りの草たちが熱にやられ次々に萎れている。

 焔が言っていた通り、良弘の持つ能力は人の持てる能力それの範囲をすでに軽く越えてしまっている。おそらく、神に匹敵するほどの能力を彼は有している。

 焔が無事なのは、もともと彼女がもつ炎の資質が桧原の中でも高いこともあるが、彼女がいま使用している肉体うつわが良弘の肉体ものであることが大きく起因している。

 いくら真帆や香帆が炎の恩恵を受けている一族とはいえ、封印が完全に解かれるその瞬間の能力に耐えられるだけの肉体を有しているとは考え難い。

「・・・・・・そうね」

 真帆は伏目がちにその言葉を肯定すると、浩一郎が示す場所まで下がった。

 一方、焔に詰め寄られた柏原は数歩後ろに後ずさりながら、彼女との距離を保っていた。

 だがこれ以上はまずいと思い、迫り来る焔に向かって叫んだ。

「近寄ると、これを壊しますよっ!!」

 切迫した柏原の声はどこか滑稽だった。今この状態で珠という呪縛を解いても、良弘の魂が壊れることはない。開放され、自分たちの所へと戻ってくるだけだ。

「良弘っ!帰って来いっ!!良弘っ!!」

 焔は弟を呼ぶ声を更に強くした。

「ちぃっ!!」

 脅しが効かないと解かると、彼は本気で良弘の魂珠を砕こうとその珠を握る手に力を入れた。

 しかし掌中にある蒼い魂珠たまは、彼が今まで壊してきたいくつかの魂珠それらとは違い、どれだけの力を加えようともひびすら入らない。

 そうしている間にもどんどん光は強さを増していく。白昼の太陽よりももっと強く鮮やかな光がそこにあるすべてのモノの姿を鮮明に映し出す。

「私を・・・私を、甘く見るなっ!!」

 緊張が最高に高まった瞬間、柏原は狂ったように叫び声を上げ、青く輝く珠を自らの口の中へと放り込んだ。

 彼は奥歯でそれを噛み砕こうとしたが叶わず、しかたなくそれを丸呑みした。

 自らの身体に入っていく感触を確かめながら、彼は目の前の子供たちに悠然と笑って見せた。

 焔は彼の行動に愕然とし、その場に立ち尽くした。

「こんなことって・・・・こんな・・・・」

 真帆は倒れこみそうに成る寸前に浩一郎に抱きとめられ、その広い胸に身体を預ける形で立っている。

 彼女を支えている浩一郎ですら目の前で起こった現実を受け止められずにいた。

 重苦しい沈黙が、その場を包む。しかしその僅かの沈黙ですら、悪魔の言葉で破られた。

「それでは焔様、真帆様、そして浩一郎様。屋敷に戻りましょうか」

 冷酷とも思えるその申し出に、焔はがくりとその場に膝をついた。

「いやだ・・・・こんな、良弘・・・やだぁ・・・・」

 堪えきれない涙が後から、後から、良弘ひかりを失った焔の頬を濡らす。良弘おとうとの大きな制服に包まれた彼女の細い肩が小刻みに震えていた。

「ただで・・・・済むと、思うなよ・・・・」

 低く唸るような浩一郎の呟きも、今の柏原には負け犬の遠吠えにしか聞こえなかった。

良弘、食べられちゃったvの巻。ハートマークをつけるとより一層不気味な・・・・

焔たち桧原シスターズは全員絶望してます。浩一郎はなんとか虚勢を張っているというところでしょうか。徐々にですが終わりが見えてきました・・・あと20話・・・総数100話に達しないうちに終わるのか・・・まだ微妙な状態です(終わり、見えてないって突っ込みはなしですよ)

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