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第6話:不可思議な現実

 倒れた良弘を前に、浩一郎は困惑した。

 直前に見せた彼の動揺、そして何よりも自分の目に映った非現実過ぎる光景。

(窓が、紅く光った?それに・・・あの触手は・・・?)

 普通では在り得ない事が良弘の回りで起きている。

 突然、倒れた良弘に教室の中がざわめいている。だがその喧騒の中に窓の事や触手の事をいう声は含まれていない。

 つまり、今のは自分だけに見えたものなのだろうか。

 いや、違う。良弘も、それが見えたからこそ逃げようとしたのだ。

(とにかく、このまま床に転がしておくわけにもいかないよな)

 頭の中の雑念を払いながら、浩一郎はまず自分がすべきことを選択した。とりあえず病人は保健室へと連れて行くべきだろう。

「わり、吉野。良弘、運ぶの手伝ってくれ」

 クラスメイトの中では比較的親しい人物に声を掛けると、彼は笑顔で了承してくれた。




 保健室につくと、ちょうど養護教員が職員室から帰ってきた所だった。

「ええっと、3−Aの檜原良弘くんね、ご家族に連絡を入れてみるわ」

 彼女はその場を浩一郎に任せるとすぐに職員室にとって返す。

「それじゃ、俺は教室に戻ってるぜ」

と、残して吉野も保健室から出ていく。

 残された浩一郎は丸椅子に腰掛けると意識のない良弘の顔を眺めた。

 どうも頭が上手く回らない。つい先程見た光景が、頭に巡る。

 ただぼぅっと待っていると、廊下からパタパタと音がした。どうやら養護教員が担任をつれて戻ってきたようだ。

「ああ松前、いたのか」

 保健室の中にいた浩一郎に、駆けつけた担任は声をかける。幾分か潜められているのは意識のない良弘を考えての事だろう。

「どうでした?良弘の家」

 浩一郎の含みのある質問に担任の凡河内は、渋い顔をした。

「一応、電話してみたんだが・・・目が覚めたら適当に返してくださいって、滅茶苦茶な返事で電話を切られた」

「やっぱり・・・そうですか」

 担任の言葉に、浩一郎も厳しい顔をする。

「やっぱり、って何か知ってるの?」

 養護の教員はそんな浩一郎の答えに、何かを知っているのかと探りをいれてくる。

 だが、浩一郎は「いえ、詳しい事は・・・俺も知りません」と首を振って答えた。少しは知っているが、易々と話していい事ではないだろう。

「とにかく、放課後までここで寝かせておいて意識が戻ったら俺が車で送るよ」

 凡河内は時計を確認しながら、少し憤慨している養護教員と何かを考え込んでいる浩一郎に予定を述べた。

 3年生は殆ど自主登校の時期でもある。殆どの場合、午前中だけで帰る。浩一郎も例に漏れず、4時間目が終わったら、家に帰るつもりで居た。

 しかし担任は部活の顧問も持っているので、送れるのは7時か8時ぐらいになる。

「先生は部活の方もありますよね。俺が家の車を呼びますからいいですよ」

 だいたい浩一郎が呼ばなくても、彼専用の運転手が自主的に高校の近くまでいつも車で迎えに来ている。連絡してやれば、すぐに駆けつけるだろう。

「いいのか?ご家族に迷惑かからないか?」

「大丈夫です。喜んで来てくれますよ」

 担任は「たすかった」という表情でもう一度、浩一郎に確認すると「そうか」と残して保健室を後にした。

 どうやらまだ職員室に仕事が残っているらしい。

「それじゃあ、暫く、私が見ているから・・・松前くんは教室から2人分の荷物と、車の手配をお願いね」

 養護の教員はチャーミングな笑みで浩一郎に指示を出した。

 彼は「すぐに戻ります」とだけ言い残して、保健室を後にした

良弘が倒れたせいで、暫く浩一郎が主人公で話が進みます。

明日からまた2連休にはいるので次の更新は5/5こどもの日です

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