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第67話:刧がされた計画

 何をいっているのだ、と柏原の態度に批難の目線で睨みつけてくる桧原の3姉妹の姿を彼は鼻で笑ってみせた。

 彼女たちはそこそこ優秀な頭を持っている割にこういうことには機微には疎い。

「それと魂珠こんじゅを返すのは別問題ですよ。良弘様がそちらに戻られたら元の木阿弥。同じ事を起こすことは目に見えて解かっています・・・・真帆様、焔様、これはあなたがたに対する見せしめなんですよ。貴方たちの行動が良弘様を危険に晒したのです」

 二人の中で何かが壊れるような音がした。

 怒りよりも嫌悪感が体と心を苛んでいる。それでも立ち向かわなければ成らなかった。彼らにはそうする義務があった。

「良弘さんが帰らないのなら・・・・私は今後一切の予知見さきみを行いません」

 最終手段として真帆が宣言した言葉に、動揺したのは柏原以外の桧原の人間だけだった。柏原本人はただ飄々とした態度を一向に崩さない。その落ち着きは不自然で、真帆の恐怖を増大させる。

「しかたないですね・・・それでは香帆様の魂珠も喰らうしかないようですね」

 言葉と同時に真帆の後ろから小さな悲鳴が響いた。「香帆ちゃんっ!」と浩一郎が叫ぶ声が辺りに響いた。

 驚いて振り返ると、香帆は頭を押さえながら傍にいた浩一郎の腕の中へと倒れこんでいた。

 彼女は眉間に皺を寄せ、苦しそうに身悶えながら「助けて・・・」と呻いている。

 そして、その言葉が言い終わらないうちに、小さな身体から微かな光が発せられ始めた。夕焼けよりももっともっと紅い光。それは香帆のオーラの色だった。

 浩一郎は無駄だと知りつつも、柏原の力が及ばないように香帆を自分の腕で確りと包んだ。しかしその努力も空しく、香帆の体から光が洩れ出るのを止めることはできなかった。

「いやぁぁぁぁっっ!!香帆っ!!」

 真帆は髪を振り乱して叫んだ。

 呆然としていた焔は真帆の絶叫に我を取り戻すと、急いで香帆の元に駆け寄る。なんとか彼女の体から流出し始めている魂を肉体に留めようと自分のオーラで彼女の身体を、魂を、包み込もうとしたが中々こうさない。

 始まったのと同じぐらい唐突に香帆の体の痙攣が止まった。

 彼女を胸に抱えていた浩一郎はすぐに香帆の呼吸と脈拍の確認をした。息はきちんとしている。脈拍も少し速いだけで正常に戻っている。

 だが魂を揺さぶられる状況に耐えられなかったのか、香帆の意識は切れており、全身が脱力していた。

 浩一郎は彼女の身体を起こさないように静かに抱え上げる。

「それが、駄目だというなら我々の元にお帰りください」

 香帆にかけていた術を解いた柏原は勝ち誇ったように彼女に宣告した。

 微かな希望も手段も奪われ、真帆は顔色を失った。焔も自分では防ぎきれないという事実に同様に顔色を失っている。

「松前、浩一郎さん」

 最後に柏原はその鋭い牙を浩一郎に向けた。

 目の前に居る彼は顔色を失っている二人とは違いただ冷静に自分を睨みつけている。やはり一番喰えないのはこの男だ。

「本当は、あなたを巻き込むつもりはなかったんですよ・・・あなたがとっても扱い難いのは解かっていましたからね」

 前嶋から名前を聞いた時から、彼を計画から排除し様と画策していた。あの松前良太郎の息子がただの普通の青年であるはずがないと思ったからだ。

 幸い、後藤田を嗾けることで焔からの絶縁を得て、これで安心して焔達を手に入れる段取りが出来たはずだった。

 しかし、それも荒井あのじじいが仕掛けた罠により駄目になってしまった。

「あなたの身体に荒井殿が乗っ取りなど掛けなければ貴方はこんなことに巻き込まれずに済んだんですけどね・・・」

 忌々しそうに柏原はその事実を告げると一番対峙したくない浩一郎あいてへと視線を向けた。

浩一郎、柏原に喧嘩を売られる。の巻。柏原・・・いい度胸をしています。

浩一郎は少し落ち着きすぎの部分がありますので、柏原がどれだけ対抗し動揺させられるかが鍵です。

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