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第63話:悪意ある視線

 浩一郎達が待ち合わせに選んだのは都心にある公園の一つだった。

「ここで、待とう」

 彼は真帆のボストンバッグを近くのベンチに下ろすとその横にハンカチを敷いた。真帆は短く礼を言うと優雅にその上に腰を下ろす。

あっちは上手く追手を撒けたかしら・・・」

 襲い来る不安と戦いながら真帆は自分の傍に立つ浩一郎を見上げた。

「大丈夫、あいつはそう簡単に捕まる真似はしないよ」

 不安を払拭するために明るく振舞いながらも、彼は未だ現れない二人のことを案じていた。

「浩一郎っ!真帆っ!」

 程なくして公園の遊歩道の向こうから自分たちを呼ぶ声が響いた。

「こっちよっ!!」

 香帆を半分抱えた状態でかけてきた焔に、真帆は両手を振って答えた。

(おかしい・・・・・)

 この微笑ましい再会の風景に浩一郎は密かに眉を顰めた。

 目の前に居る人間が焔・真帆・香帆だというのは間違いない。彼らを自分が間違えるはず無い。

 だが胸の中の不安は、先ほど、焔を案じていた時よりずっと増大している。まるで悪意の針が四方八方から自分達を狙っているようだ。

(どうして、こんなにも上手くいく・・・・?)

 不安とともに激しい悪寒が背筋を這い回る。

 浩一郎は知らず知らずに口元を右手で押さえていた。

 彼の不安に気付きもせず、真帆と香帆は無邪気に再会を喜んでいる。

 焔は・・・・焔は浩一郎の視線を受け、静かに頷いた。顔色も冴えない。彼女も浩一郎と同じように周りから襲いくる悪意に気付いたのだろう。

「どうしたの、二人とも・・・?」

 真帆は漸く二人の様子に気付くと心配そうな顔をする。

 彼らはそれに生返事を返しながら、辺りを注意深く見回した。体中の神経がこの不安の原因を探そうとアンテナを張る。

 この人影もない公園の木立の中に、悪意は渦巻いている。息を潜めて、獲物である四人の行動を観察している。


(人影の、ない?)


 焔の動きがぴたりと止まった。

 そうだ、何故その事に気付かなかったのだろう。 

 普通、公園ならばもう少し人間が居るはずだ。こんな『誰もいない』状況などまずありえない。まるで外界から引き離されてしまったかのように、自分達以外の人間はそこに存在しなかった。

 同じ考えに行き着いた浩一郎は焔と自分の間に真帆と香帆をはさみ、辺りを更に警戒した。手には真帆のボストンバッグがしっかりと握られている。

「そう簡単には逃げさせてくれないか」

 浩一郎は小さく悪態を付くと焔と一度視線を交わす。

「そうは甘くないだろ」

 先ほどまではなかった人の気配が木立に潜む形でどんどんと増えてきている。その中でも一番の憎悪を放つものがゆっくりとこちらに近づいてきているのが解かった。

「一戦は覚悟していたが・・・」

 木立の中の気配はどんどんと増えつづけ、自分たちをぐるりと取り囲む形で包囲網を狭めてきている。すでに逃げ出す隙間のないほどに人垣ができていた。

 真帆は震えている妹の身体を守るようにぎゅっと抱きしめる。

「集まる場所を最初から知っていたというところだな・・・・ここに車での追っては囮か、それとも桧原の中でも派閥みたいなものがあるのか・・・」

 低く唸るように浩一郎は状況を判断する。それが独り言なのか、木立に潜む者たちに向けられたものなのかはわからない。

 焔は自分の愚かさに腹が立った。敵は自分たちをつけたのではなく、何らかの形で『見張って』いたのだ。

 それに気付けるのは自分だけだったのに・・・これは明らかに自分の責任だ。

(視線・・・・)

 あからさまな悪意。その双眸は罠の中に自ら集まってきた愚かな者たちを嘗めまわすように見ている。

「そこかっ!!」

 焔は足元の石をつま先で蹴り上げると、それを左手で取り勢いをつけて茂みへと投げつけた。

 だが投げた石は茂みへと到達する前に空中で弾け散った。

悪意ある視線を探せ!(笑)・・・の巻。やっと合流した3人が探し物をしてます。さぁ一番に見つけて優勝するのは誰だ!!といつのは嘘です。


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