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第57話:それぞれの策略

 男は暗闇の中でゆっくりと目を開けた。

 随分と上手く事が運んでくれた。予想以上の出来栄えだったと言ってもいい。

 自分の持っている適当なこまをけしかけ、それが『浩一郎あのおとこ』に入った時はさすがに少し緊張したが、逆にそれが功を奏したように思える。

(それにしても・・・・)

 本当に『浩一郎あのおとこ』は面白い。

 彼は無意識であの『特殊な力』を使いこなした。

 炎とは違う力だったが、彼の力は強く、自分の身体を無理矢理支配していた魂を弾き飛ばし抹消した。

(あれは・・・・『良弘あのかたの炎の能力に匹敵するな・・・)

 まだ自分では気がついていないようだが、それは良弘たちと同じクラスの『異能』だった。

(さて、『やつ』はどう動くか・・・・)

 どうせ自分がしかけたこの仕掛けを、『やつ』は何処かで見ていたはずだ。

 そして『あれ』も浩一郎の能力を実感しただろう。

 『むこう』が面白いと思って動くのか、それとも自分の身を守る保身をするのか、それでこちらの対応も違ってくる。

(これを・・・『あのかた』に無事、手渡せれるのだろうか)

 男は手元にある大きな茶封筒を眺めた。




 男は、ゆっくりと目をあけた。

(面白いぞ・・・本当に・面白いぞ・・・くくくくく)

 炎の性質を持つ悪しき御霊を一瞬にして薙ぎ払った浩一郎の力。類は友を呼ぶというのか、良弘と同等の力を持つ者が他にもまだ居たとは、思わなかった。

(魂の中に炎の成分も含まれている・・・あれなら取れる)

 魂を抜いた後の身体には自分が有している自分に従順な魂をいれて傀儡としてしまおう。

 そうだ・・・ついでに『香帆かのじょ』の魂も抜いて、余った肉体に『焔《申し子》』の魂を植え付けるのもいい。

 その際に、魂珠の方に自分に逆らわないように術をかけておこう。

 相手はまだまだ分別がつかない子供ばかりだ。なんとでも調理のしようもあるだろう。

 男は部屋の置くに飾ってある蒼い珠を見た。もともと防火布に包まれていたそれは、その魂珠のあまりの高温に布がすでに熔けてしまっている。その下にある鋼鉄製の器も魂珠を中心に、まるで溶鉱炉で熔かされたように変色していた。

「素晴らしい、本当に素晴らしい力だ・・・」

 今はまだ切り札として存在させておくが、いずれは喰ろうて自らの魂の一部に組み込むもの。その瞬間のことを思うだけで身体の内側から厚くなる気がする。

(あの男は、自分の思うように駒を進めていると思っているが・・・まだまだ私の手元にある切り札に勝てるものは得ていない)

 あちらの、思惑が浩一郎と真帆の結婚であれ、良弘を復活させ術師側の当主として調教することであろうが結局、必要なのはこの切札よしひろなのだ。

「憎らしいですか?良弘様・・・?」

 その魂珠を指先で摘み上げると、その蒼い輝きは更に増した。

 まるでその手で触れられることを全身で拒否しているようだ。

「多少、寂しいかもしれませんが・・・もう少しの我慢です」

 もうすぐ、そう後もう少しですべての魂も、権力も、財力も自分の物となる。

「あなたの、妹も・・・お友達も一緒なら、私に食べられても寂しくないですよね?」

 男の身勝手なものいいに、魂珠から蒼い炎が噴出す。だがそれは一瞬だけですぐに消えてしまった。男は炎に焼かれてぼろぼろになった袖口を見て、小さく笑う。

「最後の、抵抗ですか・・・案外、この服、気に入っていたんですけどね・・・」

 無表情のまま彼はそう言うと、自らの炎でその魂珠を包んだ。魂珠の封印が更に強く、このように自分への抵抗を起こさせないようにする。

「逃がしはしませんよ、切札あなたを」

 男は呟くと、その蒼い魂珠に唇を寄せた。

魂喰いたちの独り言・・・の巻。

年上の魂喰いのほうはまだ独り言もないですが・・・切り札を持っているほうはぶつぶつ言ったり、笑ったり・・・周りに居る人間は不気味に思わないのでしょうか。


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