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第24話:封印される力

 焔は最初そのままベッドの傍で話を続けようかと思っていたが、浩一郎の提案で床に引いた布団で寝転がりながら話をすることになった。

 焔の大きさならまだ十分のゆとりがあったのだが、常人よりも大きな浩一郎と更に輪をまして大きい良弘サイズに戻った身体ではベッドで一緒に横になることはできない。

 最初のように片一方がベッドに座り、残りが椅子にという考えもあるが、案外、相手と視線が合わないし、背もたれがない状態で長時間ベッドに座りつづけることは案外苦しいものがある。

「とにかく、良弘が何に悩んでいたのか・・・それを教えてくれないか?」

 焔のその言葉に浩一郎はきょとんとしてしまった。

「どうした?」

「いや、さっき俺の記憶を読んだときに、ついでに読んだだろうと思ってたから」

 途端に焔はばつの悪そうな顔をする。

 良弘の容姿のままなので彼がそうしているかのように見えてなかなか面白い。

「ま、とにかく読んでないなら説明するよ。

と、言っても悩んでいたことと、苦しめられていたことでは内容が違うようだから、順番に」

 浩一郎の言葉に、焔は顔を近づけてくる。誰もいない空間で内緒話もないとは思うのだが、雰囲気的にしてしまったのだろう。

「まずは真帆ちゃんの件かな・・・恋人が出来たらしい」

 焔は「なるほど」と納得する。浩一郎よりもこの家のことを理解している彼女はそれだけで事態を把握したらしい。

「駆け落ちでも計画しているのか?」

 その問いかけに浩一郎は「たぶんね」と短く答える。

「あと、大学進学のこと・・・ぐらいかな。予算はあるけど家のこと家族のことで行くのを断念すべきだと秋あたりに言っていた」

 彼は受験の準備もしていた。それで落ちたのなら諦めがつくからと・・・しかし東大すらいつも合格圏内の良弘がどの大学を受けたところで落ちることなどないだろう。

「それから、悪夢を連日見て寝不足だって香帆ちゃんが言っていた」

 焔はそこで形のいい眉毛をぴくりと動かした。

「大学受験と真帆のこと・・・3年の間ずっと与え続けられた威圧のせいで良弘の心に少しだけ隙間ができた・・・そしてそこに悪夢を操る『誰か』がちょっかいをかけ、更に追い詰めたって考えるほうが無難だろうな」

 そうでなければ、あの何者よりも強い灼熱の心を持つ良弘が普通の炎に侵されるはずがない。

 浩一郎もそう思うのか、焔を見て肯いている。

「父さん達のことがあるせいで真帆への監視は年々強くなっているはずだ。絶対的な権力も取り上げられてるから協力してくれる親族も少ないし、八方塞がりだな」

 焔としては今この家を全部焼き払い、真帆と香帆を連れ出すことなどもできるのだがそうすることを良弘は望まないだろう。

 第一、炎の加護がない浩一郎の逃げ場所がないのが一番の痛手でもある。

「一つ、きいていい?」

 不意に浩一郎が焔に問い掛けたその目は今までになく真剣だ。

 焔はどうしたのだろうと、目を瞬かせながら首を傾ける。

「良弘たちの両親はどうやって死んだんだ?どうして能力が『なくなって』いた?」

 良弘たちの知らない両親の事情を知っているだろう焔にどうしても聞いておかなければならないことだった。能力の使いすぎということも考えられたが、どうも気になったのだ。

 焔は彼の指摘に顔を青くさせながら、それでも気丈に「知らない」と嘯いてみせる。

 だが僅かの逡巡と自分の顔色を浩一郎が見逃してくれるはずなどなかった。

「能力を無くす場面を見てたんだろ・・・?そして理由を知っている」

 初めて外界に引っ張り出された時の驚愕と歓喜を今でも覚えている。

 触れることのできない身体をまるで撫でるように動いた手。自分の足元で眠る自分そっくりの子供からは自分と同じぐらい、いやそれ以上の炎の力を感じる。

 髪は普通の黒ではなかった・・・そこも自分と一緒だ。

『よかったよ。封じてしまう前に君を見つけれて』

 優しい父はそういうと自分の場所を良弘の心の片隅に作ってくれた。そしてそこをよけて、何か大きな封印が始まる。

『すべての、私たち二人すべての力を遣ってこの子のすべてを・・・』

 その時は意味がわからなかった。

 しかしそれが大変なことであったことを、両親の死に接した時に知ってしまった。

「良弘の能力を封印した?」

 見透かすような瞳がこちらを見ている。焔はごくりとつばを飲み込んだ。

焔と浩一郎・一つの布団で寝る?の巻

たんなる雑魚寝ですが、こう書くと少しは色気が見えるのでしょうか。

1日遅れの更新です。昨日のうちにある程度はかけていたのですが、どうも切り場所が上手くいかず、何度も書き直してしまいました。


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