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第22話:打ち消される誤解

 本当に良弘と違う人物なのだとその表情や雰囲気でわかる。

 そして『焔』は良弘とは違い不思議な能力を自由自在に使うことができることもわかった。

 先ほど感じた不思議な感覚を引き起こしたのが彼であると自信を持って言える。

 焔はどうやって誤魔化そうかと考えてみたが、にじり寄って来る浩一郎の迫力に負けて手を上げた。

「あの・・・さ。俺、人の心とか、記憶とかが読めるんだ・・・さっき、お前に触れたときに勝手に記憶を引き出した。

 ごめんなさい。悪いことなんだよな、これ」

 どうやら悪い事をしたという自覚はあるらしい。

 しゅんと首を垂れている様は主人に怒られている子犬のようにも見える。下手に攻撃をしてきたら剥こうとしていた牙を一瞬にして抜かれた気分だ。ちらちらとこちらの様子を窺っている様は本当に微笑ましくて、外の身体が良弘だとわかっていても惚れてしまいそうなぐらいに可愛い。

 良弘はこの『焔』という人物を怖がっているみたいだったが、こんな可愛い人にどんな恐怖を感じるのか浩一郎には疑問だった。

「あんまり気にしないから安心しろよ。正直に申し出てくれたし、俺の素性が知れない以上、そうでもしなくちゃ敵か味方かの区別もつかなかったんだろ?」

 浩一郎の優しい言葉に、焔が視線をあげる。真っ赤な瞳が「本当に?」と確認してきた。

 それに肯いてやると、焔の顔がぱぁぁっと明るくなった。満面に広がった笑みは少年らしさと少女らしさを兼ね備えていた。

「よかった、良弘の友達に失礼なことをしちゃったと思って、どうしようかと慌ててたんだ」

 浩一郎の中のどんな記憶を読んだのか知れないが、焔は完全に警戒を解いていた。ベッドの上にちょこんと座り、安堵の息を吐いている。

 焔は取りあえず、ベッドから降りると自分を包む良弘の服を確認した。

 はっきりいってだぶだぶである。シャツは肩がずり落ち、腕の長さも足りない。ズボンなど押さえていないと落ちてしまいそうだ。

「って、何を見てるんだよ」

 立ち上がった自分の姿を見下ろしている浩一郎の姿に焔は顔を赤くした。

「もしかして、と思ったけど体格も変化してる」

 その言葉に、焔は「ああ」と相槌を打った。男女の性別の部分までは移行しないが、自分が外に出ると身体が変化するのは、小さい頃、両親がいる頃から判明していた。

 良弘は小さい頃から身体が大きかったので「焔が入っている時とのギャップが楽しい」と言っていたのは母だったと思う。

 この身体がどういう仕組みでこんなことが起こるのか判らないが、魂のスケールが違うと器のキャパシティも変わってくるようだ。

 とりあえず、学生服にしわをこれ以上入れるわけにはいかないと判断した焔は、箪笥の引き出しを下から順番に開け、寝巻きを見つける。

「お前、俺がいいっていうまで向こう向いてろっ」

 いつまでもじろじろと観察を続ける視線の持ち主に文句をつけると、彼ははじかれたように焔に背を向けて座りなおした。

 彼女は素早くパンツ一丁になると、ズボンを身につける。やはり腰が大きい。腰ゴムの辺りを3,4回折り曲げて調整すると、すそを自分の長さに合わせて折り返していく。上着を羽織ると、すそが膝丈まであり、少しワンピースのような感じになった。腕はやはり出ないから何度も折り返して肘の手前ぐらいで止まるようにした。

 準備が整い振り返ると未だ浩一郎は向こうに背を向けている。

 その誠実さに焔は好感を抱き、小さく笑った。だがそれに気づかれないように顔を引き締めると、元のようにベッドの上に戻った。

「で、いったい何が起きているんだ?」

 神妙な顔で聞いてくる浩一郎に、焔は下に視線を落とした。

「良弘が、浚われた」

 その衝撃的な告白を彼は「ああ、やっぱり」と思いながら聴いていた。

 見ると焔の顔は眠る前の良弘みたいにひどく青ざめている。その頭を静かに撫でてやりながら浩一郎は話の先を促した。

焔、浩一郎の記憶を見るの巻。助平な記憶や考えなどは彼女にはすべてお見通しです。

今回の文章に何の進展もないのでサブタイトルに苦戦しました。

それにしても話がまだ第1章すら終えていません。

全4章+終章まである話なので終わるまでに何話かかるのか今から心配です。

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