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第12話:衝撃的な過去

 何もかもに諦めきっていた良弘───彼の18歳とは思えない落ち着きは、両親を早くに亡くしているせいかと思っていた。

 しかし、根はそんなに浅くはない。

 両親の死が殺人として扱われておらず、彼らがこの家に引き取られているところをみると、よほど上手く・・・・・・自然死に見えるような形で彼らは良弘たちの両親を殺したのだろう。

「お父さんとお母さんの死んだときのことは憶えてるの?」

 浩一郎の問いに、香帆は静かに顔を伏せた。

 前髪で表情が隠れていたが、良弘の手を握る彼女の手が震えていた。

 浩一郎は椅子から降りて、香帆の手を取り、跪くと悲しみの余り堅く冷たく握りしめそうになる拳に自分の手を重ねた。

「あの日、いつも通りに保育園が終わる時間になっても誰も迎えに来てくれなかった。しばらく待ってたら、病気で学校を休んだはずのお兄ちゃんが青い顔をして走ってきたの。

 どうしたのか判らなくて、取り敢えず保育園を出て・・・家とは違う方向に歩いていった。いつも遊んでた公園についたところでお兄ちゃんが抱きしめてきたの。そして、『お父さんとお母さんが殺された』って言った・・・『だから、3人で逃げよう』って・・・」

 ぽろぽろと涙をこぼす香帆の頬を、浩一郎は大きな手で包んであげる。その手が与えてくれる安らぎに助けられて、香帆はなんとか話を続ける。

「わたしも、お姉ちゃんも死体を見ていないの。全て炎に飲まれて、飛び散って、原型もとどめていなかった・・・って」

 兄の口から語られた衝撃的な言葉をも、彼女は麻痺したように口にした。

 悲しみを彩るように流れる滝のような涙───喋る声が嗚咽にならないのが不思議なくらいな状態で、香帆は過去を語る。

「良弘は、どうしてそれがご両親だとわかったの?」

 今まで静かに聞いていた浩一郎の問いに、香帆はくしゃりと顔をゆがめた。

「お兄ちゃんは、全部、見ていたの。この家の人に捕まって・・・、取り押さえられて。お父さんとお母さんが死ぬのも・・・死体が燃えるのも・・・全部、見てたの」

 浩一郎は自分の顔が強張っていくのを感じた。

 酷い冗談だと思った。そんな状態で、良弘が精神を崩壊させずにいることが不思議だった。

 自分の愛する家族が生のない肉片に変わるのをずっと見せられて、だけど、彼は兄弟を護るために狂う事もできなかったのだ。

「でも、なんでお父さんが燃えたのかは、誰もわからないの」

 自分の掌を見ながら、少女はぽつりと呟いた。

 香帆は不思議そうに見つめてくる浩一郎の手を自らの小さな手からはずし、サイドボード近くにあったライターを手にとり火をつける。その炎の中に手をかざしても香帆は平然としていた。

「この家の人間は、強いか弱いかは別にして炎を操る能力を持っているの。だから父さんと母さんの体が燃えたなんて、今でもその原因は誰にもわからないの」

 『炎を操る能力』・・・そんなものを持つ人間に襲われたら、抵抗するすべなどないだろう。実際、良弘はあれだけの武道の達人なのに取り押さえられてしまっている。

 そして、もう一つわかるのは良弘がその能力を持ち合わせていないことだ。直系の子供が力を一欠けらも持たないと知っているからこそ、彼らは良弘に冷酷に接するのだ。

「それで、すぐにここに連れてこられたの?」

 その問いかけに、香帆は大きく肩を揺らした。

 すぐに手にもっていたライターの火を消すと伏目がちにうつむき、横に首を振る。

「違う・・・お兄ちゃんが殺されそうになる瞬間にお姉ちゃんが帰ってきたらしいの。それで少しできた隙に、お兄ちゃんがなんとか自分を押さえていた人を投げ飛ばして、逃げたの。そして保育園まで私を迎えにきてくれたの。家は、お兄ちゃんとお姉ちゃんが飛び出たのと同時に一気に燃えてしまったの」

 彼女はライターをサイドボードの上に戻すと、涙の残る瞳で兄の友人を見上げた。

浩一郎、聞き役に徹するの巻でした。

はっきり言って主人公が目立ちません。

今回はほとんどを違う機械で打ったせいか、字がきちんとでてこなくて、非常に時間がかかりました。

明日には機械の調子が直ってくれたらいいなと、心から思っています。

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