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プロローグ:悪夢からの誘い
夢はいつも闇の中。逃げまどう自分の姿。
追ってくるのは・・・・・・・逃げなければ、捕まってしまう。
《俺を目覚めさせるんだ、お前を護ってやる》
知っている声が自分の中で甘く誘いを掛ける。
一度もあった事のない相手。
それなのに何故か自分は『彼』の事をよく知っている。
《あんな奴らに捕まってもいいのか?》
声はいらだたしげに自分に呼び掛けてくる。
しかし『彼』を目覚めさせる事はできない。
目覚めさせたら取り返しがつかなくなってしまう。
「私は・・・・私は絶対にあなたを目覚めさせないっ!」
良弘は強く断言すると追ってくる手を紙一重で避けてゆく。
本当にこれでいいのだろうか。
自分は逃げているだけでいいのだろうか。
思ってみたところで打つ手はなくて、ただひたすら逃げまどう。
闇から延びてくる手が自分の腕を掴んだ。
そして、全てが飲み込まれていく
悪夢が、自分を、飲み込んでゆく・・・・・