雨の日
今日は雨だ。
山仕事は休み。
部屋でのんびりしている。
カラスと子狐も、いつものようにくつろいでいた。
「……お前ら、普段なにしてるんだ?」
スマホをいじりながら聞く。
「仕事だ」
カラスが答える。
「……仕事?」
「いつもしている」
「……何してるんだ?」
聞き返す。
「自宅警備」
「主のお供えを回収して、運ぶ」
当たり前のように言う。
「……そっか」
それ以上は突っ込まない。
スマホに視線を戻す。
外は、しとしとと雨が降り続いていた。
天気予報を見る。
「……明日は晴れか」
お供えのことを思い出す。
「……じゃあ、持っていくか」
翌日。
山へ向かう。
いつもの場所に着き、供え物を置く。
「……さて」
周囲を見渡す。
「……ここも整備するか」
ぽつりと呟く。
林道の整備もあるが、まずはこの場所だ。
「……道は、このままでいいか」
獣道のままにしておく。
あまり人が来ても困る。
ふと思いつく。
「……試してみるか」
ユンボに乗ったまま、空間移動できるか。
林道へ戻る。
ユンボのところまで行き、試す。
意識を集中させる。
移動先をイメージする。
「……無理か」
動かない。
大きすぎるのかもしれない。
何度か試す。
だが、結果は同じだった。
「……駄目だな」
諦める。
「……じゃあ、小さいのでいいか」
後日。
中古の小型ユンボを購入した。
こちらなら運べる。
担ぐ。
空間を繋ぐ。
――移動する。
「……いけるな」
問題ない。
そのまま作業に入る。
折れた木をどかす。
邪魔な枝を払う。
日が差すように調整する。
「……こんなもんか」
一日では終わらない。
五日ほどかけて、整備した。
かなりすっきりした。
「……石でも敷くか?」
少し考える。
だが――
「……そこまではいいか」
やりすぎな気もする。
中心部だけは、そのままにしておいた。
不自然にへこんだ場所。
あそこだけは、触らない。
「……まあ、いい」
軽く頷く。
「……明日からは、林道だな」
そう呟いて、山を下りた。
夜。
部屋でくつろいでいると、カラスと子狐がこちらを見ていた。
「……なんだ」
「お願いがある」
カラスが言う。
「……珍しいな」
スマホを置いて聞く。
「何だ?」
「手伝う」
「その代わり、買ってほしいものがある」
「……何を手伝うんだ?」
先にそっちを聞く。
カラスが羽を軽く動かす。
「自宅警備」
「それと、伐採した木の乾燥だ」
「風で乾かす」
「早く終わる」
「……ほう」
本来、木材は何年も乾燥させる。
それが短縮できるなら、かなり大きい。
次に子狐が口を開く。
「自宅警備と――」
「この一帯を豊作にする」
「山も」
「……それ、できるのか」
「できる」
あっさり言う。
「……本当ならすごいな」
少し考える。
「で、何がほしい?」
二匹が同時に答える。
「スマホ」
「……は?」
「二台」
「SIM付き」
「格安でもいい」
「……お前ら」
最近ずっとテレビを見ていた影響だろうか。
「……何に使うんだ」
「使う」
答えになっていない。
「……まあ、いいか」
手伝いの内容を考えれば安い。
「分かった。買う」
そのままスマホを取り出す。
通販で適当なものを選ぼうとする。
だが――
「林檎がいい」
カラスが言う。
「画面が大きい」
子狐も続く。
「カメラが三つ」
「……まじか」
完全に分かっている。
少し考える。
「……まあ、いいか」
どうせ金はある。
林檎のスマホを二台注文する。
ついでに格安SIMも契約する。
「……使えるのか?」
二匹を見る。
「使える」
自信満々だった。
「……ほんとかよ」
小さく呟く。
まあ、いい。
どうなるかは、そのうち分かるだろう。




