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居着いたやつら





 この数日、何も壊すことなく生活できている。


 


「……呪いのおかげか」


 


 あのときの判断は正解だったらしい。


 


 多少気をつければ、普通に暮らせる。


 


 それだけで、かなり楽だ。


 


 ――ただ。


 


「……なんか増えてるんだよな」


 


 最近、我が家に野生動物が住み着いたらしい。


 


 親父と母親が、普通に餌を与えているのを見かけた。


 


 カラスと、子狐。


 


 あいつらだ。


 


「……あざといな」


 


 妙に愛嬌を振りまいている。


 


 完全に分かってやっている顔だ。


 


 部屋の窓を開けていると、普通に入ってくる。


 


 そして――


 


「……またか」


 


 机の上に置いてあったいなり寿司が、いつの間にか減っている。


 


 酒もだ。


 


「……勝手に飲むな」


 


 さらに、机の上に置いてあったお菓子まで減っている。


 


 最近は、テレビや配信まで見ている。


 


 完全にくつろいでいた。


 


「……ここ、お前らの家じゃないんだけどな」


 


 そう呟いても、特に気にした様子はない。


 


 むしろ、居心地がいいと言わんばかりだ。


 


 今日は、そんな二匹に聞いてみることにした。


 


「お前ら、なんでここにいるんだ?」


 


 カラスがこちらを見る。


 


「帰らないのか?」


 


 子狐が首を傾げる。


 


「主さまに、この山に居ろって言われた」


 


 カラスが答える。


 


「……ああ、あいつらか」


 


 納得する。


 


「それと」


 


 子狐が続ける。


 


「餌をもらってるときに、ここに住めばいいのにって言われた」


 


「誰に?」


 


「あなたの両親」


 


「……マジか」


 


 そりゃ餌ももらえるわけだ。


 


 完全に許可されている。


 


「……だからって」


 


 部屋の中を見渡す。


 


 テレビの前でくつろぐカラス。


 


 クッションの上で丸くなる子狐。


 


「俺の部屋でくつろぐ必要あるか?」


 


 言おうとして――やめた。


 


「……まあ、いいか」


 


 今さら追い出すのも面倒だ。


 


 それに――


 


「……静かだしな」


 


 騒ぐわけでもない。


 


 勝手に食って、勝手にくつろいでいるだけだ。


 


「……いや、食うのはどうなんだ」


 


 小さく突っ込む。


 


 カラスがこちらを見る。


 


「問題ない」


 


 何が問題ないのかは分からない。


 


 子狐は気にせず、テレビを見ていた。


 


「……はあ」


 


 ため息をつく。


 


 まあいい。


 


 しばらくは、このままでも。


 


 そう思いながら、ベッドに横になる。


 


 スマホを手に取り、中古車の情報を見る。


 


「……そろそろ、自分の車もいるか」


 


 軽トラばかり借りるのも気が引ける。


 


 両親には、宝くじが当たったことは話してある。


 


 ただ、金額はかなり低く伝えている。


 


 最近の出費を見て、さすがに怪しまれていたからだ。


 


「……まあ、あの二人なら大丈夫だろ」


 


 口が軽いわけでもない。


 


 話しても問題ないと判断した。


 


 画面をスクロールする。


 


「……これか」


 


 最近発売された、小型の四駆。


 


 1500ccクラスだ。


 


 本来は納車まで数年待ちの人気車種。


 


 だが――


 


「……結構あるな」


 


 中古市場には、思ったより出回っていた。


 


 条件を絞る。


 


 近場で探す。


 


「……あった」


 


 ちょうどいい一台が見つかる。


 


 値段は、新車より五十万ほど高い。


 


「……まあ、いいか」


 


 時間を買うと思えば安い。


 


 翌日、車屋へ向かう。


 


 実車を確認する。


 


 状態も悪くない。


 


「……これでいいな」


 


 そのまま契約を済ませる。


 


 店を出る。


 


 ふと視線を感じる。


 


 電柱の上に、カラスがとまっていた。


 


「……」


 


 目が合う。


 


 ――あいつだ。


 


 だが、何も言わない。


 


 ここで話すのはまずい。


 


 そのまま軽トラに乗り込み、家へ戻る。


 


 部屋に入る。


 


 少しして、窓からカラスが入ってきた。


 


「……ついてきてたのか」


 


「当然だ」


 


 カラスが答える。


 


「……町中で喋るなよ」


 


「分かっている」


 


「……ならいい」


 


 ベッドに腰を下ろす。


 


 ため息を一つ。


 


「……ほんと、自由だな」


 


 カラスは気にした様子もなく、窓際にとまっていた。





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