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 新しいスマホを受け取りに行くため、家を出る。


 


 玄関を出たところで、足を止めた。


 


 庭木に、カラスが一羽とまっている。


 


 庭には、子狐が一匹。


 


「……」


 


 少しだけ違和感がある。


 


 動物がいること自体は珍しくない。


 イノシシや鹿、たぬき、狐、野良猫。よく見かける。


 


 だが――


 


「……なんか、引っかかるな」


 


 天狗と九尾のことが頭に浮かぶ。


 


「……まあ、いいか」


 


 気を取り直して、軽トラに向かう。


 


「よー」


 


 声がした。


 


 足が止まる。


 


「……は?」


 


 振り返る。


 


 カラスがこちらを見ていた。


 


「どうした」


 


 もう一度、声がする。


 


「……喋った?」


 


「そのへんのカラスと一緒にするな」


 


 少し不満そうな声だった。


 


「……そっか」


 


 なぜか納得する。


 


 軽トラに向かおうとすると、カラスが軽トラの屋根に飛び乗った。


 


「待て。用事がある」


 


「主さまがお呼びだ」


 


 庭の方を見る。


 


 子狐がこちらに近づいてきていた。


 


「一緒にきて」


 


 こちらも喋る。


 


「……だよな」


 


 もう驚きはない。


 


 なんとなく分かっていた。


 


「天狗と九尾か?」


 


「うん」


 


 子狐が頷く。


 


「案内する」


 


 そのまま歩き出す。


 


 カラスも飛び立った。


 


「……行くか」


 


 軽トラはそのままにして、後を追う。


 


 そのまま山へ入っていく。


 


 


 いつもの場所に着くと、天狗と九尾がいた。


 


「おはようございます」


 


 軽く頭を下げる。


 


「今日はどうしました?」


 


 そう聞くと、九尾が口を開いた。


 


「いなり寿司と酒、美味かったぞ」


 


 天狗も頷く。


 


「たまにでいい、また持ってこい」


 


「……そうですか」


 


 少しだけ安心する。


 


(祠と石像は、何も言わないんだな)


 


 ほんの少しだけ、へこむ。


 


「……それで、お願いがあるんですけど」


 


 気を取り直して言う。


 


「この力、加減が難しくて」


 


 軽く手を握る。


 


「何か方法はありませんか?」


 


 九尾が少し考える。


 


「あるにはある」


 


 天狗が続ける。


 


「呪いで弱体化させる方法じゃ」


 

「……呪いですか」


「呪いだ。そう都合よくはいかんぞ」

 


 九尾が言う。



「力だけを弱めることはできん。お前ごと弱くなる」

 


「普通なら、病や怪我……下手をすれば死に至ることもある」


 


「……物騒ですね」


 


 思わず本音が出る。


 


「そこでだ」


 


 天狗が口を開く。

 

 


「その代わり、我らが加護を付けてやる」


 


「呪いに対抗して、いい具合になるはずじゃ」


 


「……やってみないと分からないと」


 


「そういうことじゃ」


 


「呪いはすぐ外せるぞ」


 


「……お願いします」


 


 頭を下げる。


 


「供え物は続けろよ」


 


「分かってます」


 


 天狗と九尾が手をかざす。


 


 空気が揺れる。


 


「……?」


 


 特に変化はない。


 


「加護は付いた」


 


「次は呪いじゃ」


 


 再び、気配が変わる。


 


「……終わりじゃ」


 


「……試します」


 


 近くの木に手をかける。


 


 持ち上げる。


 


「……いいな」


 


 壊れない。


 


 重さも普通に近い。


 


「成功じゃな」


 


 九尾が満足そうに言う。


 


 少し力を込める。


 


「……戻った」


 


「呪いを弾くとそうなる」


 


「抵抗せねば、そのままじゃ」


 


「……なるほど」


 


 納得する。


 


「ありがとうございます」


 


 頭を下げる。


 


「……祠と石像の礼じゃ」


 


 九尾が小さな声で言う。


 


「気にするな」


 


 天狗もぶっきらぼうに言う。


 


「……そうですか」


 


 少しだけ嬉しくなる。


 


「供え、忘れるなよ」


 


「分かってます」


 


 次の瞬間、二人の姿は消えていた。


 


 周囲を見回す。


 


 カラスも、子狐もいない。


 


「……帰るか」


 


 軽く息を吐き、山を下りていく。





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