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秋と依頼





 朝晩が涼しくなり――


 


 過ごしやすい季節になった。


 


 空気は澄み、少しだけ乾いている。


 


 山の匂いも、どこか変わった気がした。


 


「……いいな」


 


 小さく呟く。


 


 早朝。


 


 子狐と一緒に裏山へ入る。


 


 足元の落ち葉を踏みしめながら、奥へ進む。


 


 キノコ狩りだ。


 


「……あるな」


 


 目を凝らす。


 


 地面の色の違い。


 


 湿り具合。


 


 少しずつ、見えてくる。


 


 しゃがんで採る。


 


 土を払う、籠に入れる。


 


 それを繰り返す。


 


 気がつけば


 


 籠はいっぱいになっていた。


 


 山を下りる。


 


 作業場で選別する。


 


 良いものは、出荷用。


 


 それ以外で、分けていく。




 出荷準備ができた。


 


 子狐が、そのまま出荷へ向かう。


 


 今年も、松茸がよく採れた。


 


 香りが強い、形もいい。


 


 実家と、ご近所へ配る。


 


 袋に入れ。


 


 軽トラに乗り配る。


 


「お、今年もいいな」


 


「助かるよ」


 


 そんな声をもらう。


 


「……どうも」


 


 軽く返す。


 


 子狐が帰ってくる。


 


 そのまま、米の収穫に入る。


 


 コンバインを動かす。


 


 刈る。


 


「……多いな」


 


 今年は豊作だった。


 


「……いい年だ」


 


 そう思う。


 


 夕方。


 


 食事を済ませる。


 


 子狐と一緒に、町へ出る。


 


 カラスは


 


「夜はいい」


 


 そう言って、酒を飲んでいる。


 


 町は賑やかだ。


 


 神輿が通り、掛け声が響く。


 


 屋台の明かりに、匂い。


 


 人の流れ。


 


「……久しぶりだな」


 


 少し歩く。


 


 屋台を回る。


 


 適当に買て、食べる。


 


 子狐は楽しそうだった。


 


 それでいい。


 


 そのまま帰る。


 


 帰宅後。


 


 机に向かう。


 


 作りかけの財布を手に取る。


 


 オイルレザーのがま口財布、二つ。


 


 がま口のショルダーバッグ、一つ。


 


 縫う、整える。


 


 金具を付ける。


 


 仕上げる。


 


 さらに


 


 がま口財布の一つに、ショルダーストラップを付ける。


 


「……できたな」


 


 並べる。


 


 少し眺める。


 


 満足して、そのまま寝た。


 


 翌日。


 


 ショルダー付きの財布を


 


 カラスの首にかける。


 


「……どうだ」


 


 カラスが少し動く。


 


 重さを確かめる。


 


「……悪くない」


 


 そんな様子だ。


 


「……似合ってるな」


 


 小さく言う。


 


 午前中。


 


 米の収穫を進める。


 


 午後。


 


 車に乗り、海へ向かう。


 


 風が少し冷たい。


 


 夕方、エギングを始める。


 


 キャスト。




 しゃくる、待つ、巻く。


 


 繰り返す。


 


 場所を変える。


 


 流れを見る。


 


 結果


 


 五百グラムほどのアオリイカを三杯。


 


「……まあいい」


 


 十分だ、帰る。


 


 刺身にして、三人で分ける。


 


「……うまいな」


 


 それだけでいい。


 


 のんびりしていると――


 


 スマホが鳴る。


 


 通知。


 


 天狗と九尾からだ。


 


「明日、祠に来い」


 


「……なんだろう」




「……この数日は平穏だったな」


 


 小さく呟く。


 


 翌日。


 


 祠へ向かう。


 


 すでに、二人は来ていた。


 


 天狗はタブレットで、ネット小説を読んでいる。


 


 九尾はゲームをしている。


 


「……おはようございます」


 


 軽く挨拶する。


 


 祠にお供えをする。


 


 亀にエビの乾物をやる。


 


 水の音が響く。


 


 少し静かになる。


 


 その間に、二人が顔を上げる。


 


 話が始まる。


 


 龍の話だった。


 


 正月に龍の涙をお土産でもらった。


 


 その龍の祠と御神体が、昔はあったらしい。


 


 だが、今は朽ちている。


 


 祠は残っていない。


 


 石の御神体も壊れているという。




 埋まっているかもしれない。


 


「……」


 


 黙って聞く。


 


 その場所は


 


 龍にとって、大切な場所。


 


 思い出の場所らしい。


 


「そこを探して――」


 


「祠を置き、御神体を納めてほしい」


 


 そう言われる。


 


 場所は、大まかな範囲だけ。


 


 細かい場所は分からない。


 


「……広いな」


 


 正直に思う。


 


 山の中、あの範囲。


 


 ほとんど、無理ゲー。


 


 当てもなく探すようなものだ。


 


 だが、天狗は言う。


 


「期限はない、出来なくてもいい」


 


「見つけたらでいい」


 


 九尾が笑う。


 


「クエスト発生ってやつだな」


 


 楽しそうに言っている。


 


「……」


 


 少し考える。


 


 龍には、龍の涙ももらった。


 


 両親が健康になり、少し若くなった。


 

 

「……断れないな」


 


 そう思う。


 


「……分かりました」


 


 そう返す。


 


 受けることにした。


 


 九尾が、口で効果音を鳴らす。


 


「ピロリン、とかな」


 


「……ゲームのやりすぎ」


 


 小さく返す。


 


 新しいことが、また一つ始まる。





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