夏の終わりと夢
夏を惜しむ季節となった。
向日葵が重そうに実を結び
シジュウカラが種をついばんでいる。
「……もう終わりか」
小さく呟く。
最近、同じ夢を見る。
そこには、若い頃の自分がいる。
隣には、一人の女の子。
フードを被っていて、顔はよく見えない。
ただ、二人で歩いている。
それだけの夢だ。
そして、目が覚める。
「……なんだろうな」
あの女の子は、誰なのか。
朝から裏山に向かう。
子狐とカラスと一緒に、沢を登り。
しばらく歩くと
わさびが自生していた。
天然のわさびだ。
「……あったな」
子狐と一緒に採る。
籠いっぱいになる。
そのまま山を下りる。
祠の水源から伸びた水路。
そこに、わさびを植えられるようにしてある。
株分けをして。
子狐と、亀嫁と三人で植えていく。
「……根付けばいいが」
子狐を見る。
「……問題ないか」
そう思う。
残ったわさびは。
醤油漬けにする。
葉を塩もみして。
熱湯をかける。
細かく刻んで。
瓶に入れる。
醤油を注ぐ。
「……こんなもんか」
翌日から食べる。
子供の頃、親父が毎年作っていた。
よく食べていた。
だが
最近は、採りに行っていなかった。
「……懐かしいな」
それで、採りに来た。
亀嫁が言う。
「わさび、見ておきます」
「……頼む」
任せることにする。
祠へ向かう。
酒とわさびの醤油漬けを供える。
そのまま、実家へ持っていく。
母が喜ぶ。
「懐かしいね」
「昔はよく採りに行ってたよね」
そんな話をする。
少しだけ、時間を過ごす。
軽トラに乗り。
ご近所を回る。
わさびと、醤油漬けをお裾分けする。
温泉のこともあり
礼を言われる。
「完成が楽しみだね」
そう言われる。
「……そうだね」
軽く返す。
そのまま町のスーパーへ行き。
刺身の盛り合わせを買う。
帰宅して、夕食。
新鮮なわさびで、刺身を食べる。
「……うまいな」
それだけでいい。
カラスは
酒を飲みながら、わさびの醤油漬けをつまんでいた。
静かな時間が流れる。
食後、ゆっくりと過ごす。
机に向かう。
作りかけの財布を手に取る。
ラウンドファスナーの長財布だ。
仕上げに入る。
縫いを確認する。
コバを整える。
磨く。
ひと通り終える。
「……できたな」
小さく呟く。
今回使ったのは
馬革のコードバン。
これまで
安い革で何個も作って、練習してきた。
その上で
今回は、いい革を使った。
丈夫な革だ、長く使える。
「……いい出来だな」
軽く眺める。
そのまま、子狐に渡す。
「これ」
受け取る。
少し見て、笑顔になる。
「ありがとう」
嬉しそうだった。
「……よかった」
小さく思う。
次は
「自分の分、作るか」
そう呟く。
机に戻る。
静かな夜が続いていた。
そして
また、あの夢を見るのだろう。




