大寒と契約
暦は大寒を迎えた。
寒気は、いっそう深まっている。
早朝――
一面に降りた朝霜が、昇り始めた陽の光を受けて――
眩しく照らし出されていた。
「……寒いな」
小さく呟く。
神棚の前に立つ。
手を合わせる。
軽く拝んでから
子狐と一緒に、卵の回収に向かう。
小屋に入り。
卵を確認する。
「……全部だな」
小屋にある卵は、すべて回収する。
それ以外
外にある卵には手を出さない。
鶏たちと、そういう契約になっている。
だからこそ――
小屋の卵は、遠慮なくすべて回収する。
籠に入れて――
そのまま祠へ向かう。
水場の前に立つ。
「……やるか」
卵を水場に浸ける。
だが、ただの水ではない。
浄化だ。
汚れが、すっと消える。
表面が自然に整う。
「……すごいな」
思わず呟く。
この水場の亀。
玄武の血を引く、遠い子孫。
浄化の力を持っている。
このことは
正月、子狐から聞いた。
汚れが取れて、綺麗になると。
「……使えるな」
そう思った。
だから――
それを聞いた、その日に会いに行った。
子狐と一緒に。
目的は一つ。
交渉だ。
水場の前に立つ。
丁寧に準備してきたものを出す。
エビの乾物。
カラスのつまみだ。
「……頼む」
子狐に任せる。
頭を下げる。
俺も、頭を下げる。
子狐が話す。
「家や倉庫に来て浄化をして」
「送迎付き」
「定期的にお願い」
お願いをする。
エビの乾物を一つ、水に入れる。
亀が――
ぱくりと食べた。
もぐもぐしている。
しばらくして
何かを伝えてくる。
子狐が通訳する。
「定期的に、その食べ物と酒」
「あと、祠が欲しいって」
「……酒も飲むのか」
思わず言う。
「宴で、飲んでた」
子狐が答える。
「……なるほどな」
納得する。
「いいだろう」
条件を受ける。
さらに聞く。
「卵とか、果物とか」
「ここに持ってきたら、浄化して」
亀は――
子狐を通して答える。
「果物と卵も少し欲しい」
「それでやる」
「……分かった」
うなずく。
契約成立だ。
それからは
毎回、祠の水場で卵を浄化してから出荷している。
作業を終える。
子狐は、そのまま軽トラで出かけていった。
俺は、一人になり裏山に向う。
畑にする場所を整地していると
子狐が帰ってきた。
軽トラの荷台には、苗木が積まれている。
「……来たか」
行く前に頼んでいたものだ。
果物を増やす。
柑橘類や、他の果物。
種類は任せて、適当に買ってきてもらった。
「……いいな」
これからは――
出荷のついでに、少しずつ増やしていく。
子狐は――
毎日、イチョウの木の前で舞の練習をしている。
その効果も、少しずつ出てきていた。
「……他も頼んだ」
苗木にも、同じようにやってもらうことにする。
さらに――
亀への供えも必要がある。
果物も用意しないといけない。
祠も、すでに注文してある。
石像も頼んでいる。
「……忙しくなるな」
小さく呟く。
その前に――
「カラスのつまみも補充しないと」
思い出す。
亀用の乾物も注文しておくことにした。
やることは増えたが――
「……まあ、悪くない」
そう思いながら、作業を続けていた。
ふと空を見る。
カラスは、まだ帰ってきていない




