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年の瀬と迎春






 目覚めると――


 


 今年の終わりを告げるように、冷たい空気が満ちていた。


 


 静まり返った山の気配が、家の中にまで入り込んでくる。


 


 いつもと同じ朝。


 


 だが、どこか違って見えた。


 


「……寒いな」


 


 小さく呟く。


 


 薪ストーブに薪をくべる。


 


 火を起こす。


 


 ゆっくりと、部屋が暖まっていく。


 


「……」


 


 ふと気づく。


 


 カラスはいない。


 


 昨日から、帰ってきていなかった。


 


「……まあ、そのうち帰るか」


 


 深くは考えない。


 

 


 初めての、自分の家で迎える年末。


 


 気づく。


 


「……門松がないな」


 


 今までは


 


 実家で、親父が毎年作っていた。


 


 玄関に置かれていた。


 


 しめ飾りも、餅も、当たり前のようにあった。


 


「……用意するか」


 


 そう決める。


 


 裏山へ向かう。


 


 材料を取りに裏山に向かう。


 


 その前に、祠に寄り。


 


 軽くお供えをしてから、山へ入る。


 


 必要な材料を集め。


 


 門松を作る。


 


「……こんなもんか」


 


 完成したものを、玄関に設置した。


 


 昼過ぎ。


 


 予約していた、おせち料理を取りに行く。


 


 ついでに


 


 餅と、しめ飾りも買う。


 


 家に戻り、しめ飾りを飾る。


 


「……本当は三十日だよな」


 


 少し思う。


 


 だが、仕方ない。


 


 そのまま


 


 愛車の四駆。


 


 豆腐の車。


 


 トラック。


 


 ユンボにも、しめ飾りを付ける。


 


「……こんなもんか」


 


 ひと通り終わる。


 


 そこで、ふと気づく。


 


「……神棚、ないな」


 


 少し考える。


 


 とりあえず、木の板を置く。


 


 そこを仮の神棚にした。


 


 そのまま、スマホを取り出す。


 


 天狗と九尾にメッセージを送る。


 


「神棚に置く御札か、代わりになるものが欲しい」


 


 そう送る。


 


 すぐに返事が来た。


 


「祠のテーブルに置いておく」


 


「……早いな」


 


 小さく呟く。


 


 子狐と一緒に、祠へ向かう。


 


 石のテーブルの上には


 


 ヤツデの葉と、白い毛の束が置かれていた。


 


「……これか」


 


 子狐が言う。


 


「主の匂い」


 


「主の毛だね」


 


「……なるほど」


 


 軽くうなずく。


 


 祠で手を合わせる。


 


「ありがとうございます」


 


 そう言って拝む。


 


 持ってきた餅と酒を供える。


 


「明日、おせち持ってきます」


 


 それだけ伝える。


 


 家に戻る。


 


 神棚を二つに分ける。


 


 ヤツデの葉と毛の束を、それぞれに置く。


 


「……まあ、いいか」


 


 本格的な神棚や道具は――


 


 正月明けに買いに行くことにする。


 


 そのあと


 


 カラスにメッセージを送る。


 


「明日の朝、祠でおせち食べる」


 


 すぐに返事が来る。


 


 スタンプだけの、了解だった。


 


「……帰ってくるか」


 


 小さく呟く。


 


 翌朝。


 


 まだ暗いうちに家を出る。


 


 子狐と一緒に、裏山へ向かう。


 


 祠に着く。


 


 おせち料理と酒を置いて。


 


 そのまま、頂上へ向かう。


 


 そして


 


 初日の出。


 


 ゆっくりと昇る光を、静かに眺める。


 


「……いいな」


 


 小さく呟く。


 


 子狐はスマホを取り出し、写真を撮っていた。


 


 そのまま投稿しているらしい。


 


 祠へ戻るため、下山する。


 


 祠に着くと


 


 すでに宴は始まっていた。


 


 天狗と九尾。


 


 そして、カラス。


 


 さらに


 


 見慣れないものが一つ。


 


 亀だ。


 


 水場で泳いでいる。


 


「……あけましておめでとうございます」


 


 新年の挨拶をする。


 


 そのまま座る。


 


 亀のことを聞く。


 


 九尾が答える。


 


「玄武の血を引く、遠い子孫だ」




「こう見えて、血筋と家柄は一級品だ」




「冗談めかしつつ言い放った」


 


「……なるほど」


 


 納得する。


 


「たくさんいたから、一匹もらってきた」


 


「ここに放した」


 


 天狗が続ける。


 


「水を浄化する」


 


「落ち葉やゴミを食って、綺麗にする」


 


「……便利だな」


 


 素直に思う。


 


 しばらく過ごす。


 


 二時間ほど。


 


「……じゃあ、先に帰ります」


 


 一言だけ告げる。


 


 そのまま山を下りる。


 


 途中、実家に寄る。


 


 新年の挨拶をする。


 


 少しだけ、おせちを食べ。


 


 そして


 


 家に戻りそのまま、少し寝ることにした。






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