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秋の気配と出荷







 まだ残暑は残っている。


 


 だが――


 


 吹き抜ける風は、どこか冷たい。


 


 日が昇る。


 


 東の空が、ゆっくりと明るくなっていく。


 


「……行くか」


 


 カラスと子狐と一緒に、裏山へ入る。


 


 今日は――


 


 キノコ狩りだ。


 


「三時間後に戻るぞ」


 


 そう伝える。


 


 それぞれ、別れて山に入る。


 


 静かな時間が流れる。


  


 三時間後。


 


 再び集合する。


 


 収穫したキノコを広げる。


 


 選別作業に入る。


 


 良いものは――出荷用。


 


 小ぶりなものは――お裾分け用。


 


 傷のあるものは――自分たち用。


 


 土やゴミを落とす。


 


 袋詰めする。


 


 ラベルを貼る。


 


 箱に詰める。


 


「……よし」


 


 準備はできた。


 


 豆腐の車に積み込む。


 


 子狐が運転席に乗る。


 


「行ってくる」


 


「ああ、頼む」


 


 道の駅へ向かっていった。


 


 今月から、出荷を再開している。


 


 卵の出荷も始めてた。


 


「……出す気はなかったんだが」


 


 小さく呟く。


 


 だが――


 


 子狐が、すべて済ませていた。


 


 保健所への申請。


 


 必要な許可。



 講習など。

 


 家畜の登録まで。


 


「……抜かりないな」


 


 感心する。


 


「……もう全て任せていいな」


 


 そう思う。


 


 子狐が戻るまで――


 


 林道の整備に向かうことにした。


 


 しばらくして。


 


 子狐が戻ってきた。


 


 林道のところまで来ている。


 


「おかえり」


 


 声をかける。




「ただいま」


 


「他、松茸出てた?」


 


 聞く。


 


「小さいのが少し」


 


「……そっか」


 


 うなずく。


 


「ぼちぼち出てきたな」


 


「売れるといいな」


 


「うん」


 


 短いやり取りをする。


 


 そのまま、家に戻ることにした。


 


 家でゆっくりしていると――


 


 子狐が聞いてくる。


 


「車の整備する場所、倉庫使っていい?」


 


「いいけど……」


 


 少し考える。


 


「倉庫の横の土地、空いてるだろ」


 


「そこにプレハブ建てたらいい」


 


「……あー」


 


 子狐がうなずく。


 


「リフトもいるだろ」


 


「付けたらいい」


 


「工具も揃えていいぞ」


 


 ついでに言う。


 


「俺も他の作業で使いたいから、プレハブは大きめサイズのにしといて」


 


「わかった」


 


 すぐに返事が返ってくる。



 


 それから一週間後。


 


「頼んだ」


 


 子狐が言ってくる。


 


「……早いな」


 


 思わず呟く。


 


「完成は四ヶ月くらい」


 


「……そんなもんか」


 


 納得する。


 


「頼むな」


 


「うん」


 


 それだけ話して――


 


 俺は林道整備に向かった。


 


 歩きながら思い出す。


 


 梅雨の休みで、暇だった頃の話だ。


 


 子狐が言い出した。


 


「バイクの免許、取りたい」


 


「……バイクか?」


 


「大型二輪」


 


「……まじか」


 


 思わず言う。


 


 教習所のサイトを開いてみる。


 


 費用も時間も、それなりだ。


 


 だが――


 


「一発で受ける」


 


 子狐が言う。


 


「……いけるのか?」


 


「問題ない」


 


 即答だった。


 


「……なら行っておいで」


 


 許可する。


 


 翌日――


 


 子狐は試験を受けに行き――


 


 普通に受かって帰ってきた。


 


「……早いな」


 


 思わず呟く。


 


「マイナ免許証と、従来の免許証、両方にしてきた」


 


「……抜かりないな」


 


 免許証は、そのまま子狐に渡しておく。


 


「バイク、買うのか?」


 


 聞いてみる。


 


「買わない」


 


「……ん?」


 


 少し止まる。


 


「乗りたかったんじゃないのか?」


 


「違う」


 


 子狐はあっさり言う。


 


「免許証が欲しかった」


 


「……なるほどな」


 


 納得する。


 


「……賢いな」


 


 思わずそう呟いた。








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