梅雨の足音
梅雨が、もうそろそろ来そうだ。
梅雨になったら、山仕事も休みにする
最近は、道の駅への出荷はしていない。
やめたわけではない。
山菜採れなくなり、筍も終わった。
出す商品がないだけだ。
「……仕方ないな」
道の駅とは別に――
もう一ヶ所、出荷先を増やしていた。
道沿いにある、小さな共同直売所だ。
子狐が、道の駅で知り合った人から紹介されたらしい。
距離も遠くない。
試しに出すことにした。
だが――
「……無理にやるもんでもないな」
金のためにやっているわけではない。
出せるものがあるときに出せばいい。
子狐は、広告収入がある。
課金や買い物の金は、それで賄っている。
カラスは――
「酒代があればいい」
それだけだ。
通販で酒ばかり買っている。
なので――
小遣いと、丸太の売上で十分足りている。
たまに――
翡翠や水晶や石を拾ってきて、フリマで売っている。
「……そこそこの稼ぎだ」
だから――
「……また出せるようになったらだな」
再開すればいい。
焦る必要はない。
椎茸の原木栽培の準備は終わっている。
裏山に組んで、立てかけてある。
「……あとは待つだけか」
本来なら――
収穫は再来年あたりになる。
だが――
「……来年にはいけそうだな」
子狐の影響がある。
少し早くなりそうだった。
「……悪くない」
そう思った。
倉庫の近くに植えた、イチョウの苗木。
桃、梨、柿も――
まだ小さいままだ。
カラスと子狐と祠へ向かう途中、ふと聞いてみる。
「お前も、九尾みたいにこの苗木を大きくできるのか?」
「……あんなには無理」
子狐は首を振る。
「少し育ちを良くして」
「豊作する」
「……そっか」
納得する。
「大きくなればできるのか?」
「たぶん」
「……そっか」
そんな会話をする。
子狐と話した、数日後。
道具を取りに、倉庫に行ったら。
イチョウの苗木の前で――
「……」
子狐が、一人で踊っていた。
気づかれないように、少し離れたところで見る。
そこに、カラスが降りてくる。
「……あいつ、毎日やってるぞ」
「ここで、ずっとな」
「……そうか」
小さく返す。
子狐は、黙々と踊っている。
誰に見せるわけでもなく。
ただ――
苗木の前で。
「……」
その姿を見ていると――
少しだけ、泣けてきた。
しばらくして、踊りが終わる。
子狐が、息を整える。
そのタイミングで近づく。
「……よう」
声をかける。
子狐が振り向く。
「……見てた?」
「……まあな」
そう答える。
頭を軽く撫でる。
「……上手かったよ」
ポケットから飴を取り出す。
「ほら」
子狐に渡す。
嬉しそうに受け取る。
そのまま、舐めていた。
「……ありがとな」
小さく呟く。
そのまま作業へ向かう。
帰りに。
ログハウスの建設場所に寄る。
木材が組み上がっていた。
「……進んでるな」
だが――
まだ時間はかかりそうだ。
少しだけ眺める。
それから、そのまま家に帰った。




