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筍と子狐






 過ごしやすい季節になった。


 


 最近、我が家は筍料理が多い。


 


 旬の食べ物だ。


 


 今日の朝食は、筍の炊き込みご飯。


 


「……うまいな」


 


 自然とそう思う。


 


 ――ただ。


 


 これは、俺が整備した竹藪の筍ではない。


 


 家の裏山に、親父が手入れしていた竹藪がある。


 


 歩いてすぐの場所だ。


 


 裏口を出れば、目の前にある。


 


 わざわざ山に登る必要もない。


 


 寝間着のままでも採りに行ける。


 


「……楽だな」


 


 なので、俺が手入れしていた竹藪の筍はまだ採っていない。


 


「……なんか、もったいないな」


 


 そう思う。


 


 これからは椎茸の栽培も始まる。


 


 カラスや子狐も、山の幸を採ってくる。


 


 さすがに――


 


「……食いきれないな」


 


 量が多すぎる。


 


 なので――


 


「……売るか」


 


 道の駅で売ることを考える。


 


 だが――


 


「……やりたくないな」


 


 正直な気持ちだ。


 


 対人が苦手だ。


 


 そこで――


 


「……いるな」


 


 ちょうどいいのが。


 


 我が家には、優秀なヒキニートがいる。


 


 四六時中スマホを手放さない、子狐だ。


 


 最近はコスプレのおかげで、変化も上達している。


 


「……いけるな」


 


 俺の姿に変化してもらう。


 


 申し込みから納品、値札貼り、回収。


 


 ついでに経理と納税まで任せる。


 


「……完璧だな」


 


 そう思う。


 


 今は――


 


 俺の物真似の練習中だ。


 


 それと、林道で軽トラの運転も教えている。


 


 覚えは早い。


 


 某アニメや漫画の影響か――


 


 林道でドリフトの練習までしている。


 


「……やりすぎだろ」


 


 小さく呟く。


 


 だが――


 


「……優秀だな」


 


 本音が漏れる。


 


 移動手段を増やすことにした。


 


 翌日に、中古のカブも買ってきた。


 


 バイクのカブだ。


 


 市役所でナンバーをもらえば、すぐに乗れる。


 


 自賠責も五年で加入した。


 


 保険屋に電話して、原付特約も追加してもらう。


 


 保険料は月三百円ほど上がるだけだ。


 


「……安いな」


 


 そう思う。


 


 学生時代はバイク通学していたので、小型二輪の免許は持っている。


 


 子狐は、すでに車の運転は俺より上手い。


 


 今は林道でカブに乗って遊んでいた。


 


「……自由だな」


 


 小さく呟く。


 


 試しに――


 


 普通自動車の問題集を買ってやらせてみた。


 


 結果――


 


「……全部正解か」


 


 引っ掛け問題も含めて、すべてクリアしていた。


 


「……すごいな」


 


 思わず感心する。


 


 この子は、本当に優秀だった。


 

 


 子狐が言う。


 


「明日から出荷する」


 


「……まじか」


 


 翌日、早朝から二人で筍を取りに行く。


 


 そのままコンテナに筍を入れ、軽トラに積み込む。


 


 財布ごと子狐に渡す。


 


 中には免許証も入っている。


 


「……気をつけろよ」


 


「行ってくる」


 


 そう言って――


 


 軽トラは動き出す。


 


 ドリフトしながら林道を下っていった。


 


「……おい」


 


 小さく呟く。


 


 子狐が戻るまで、山で作業をしていた。


 


 二時間ほどして――


 


 軽トラが戻ってくる。


 


「おかえり」


 


 声をかける。


 


「どうだった」


 


「問題なかった」


 


 そう言って、財布を返してくる。


 


「……そうか」


 


 ひと安心する。


 


 でも荷台が気になる。


 


 段ボールが積まれている。




 荷台一杯に縦に三段積で、ロープで固定してある。


 


「……なんだこれ」


 


「お菓子とドリンク」


 


「箱で買ってきた」


 


「……そうか」


 


 財布の中を見る。


 


 札が――


 


 領収書に変わっていた。


 


「……まじかー」


 


 思わず声が出る。


 


「子狐」


 


「はい」


 


「荷台いっぱいの菓子とドリンクは買いすぎだ」




「あと、この領収書はおねがいします」




 領収書を手渡す。




「……はい」


 


 少しだけしょんぼりしている。


 


「……まあいいか」


 


 小さく呟く。




 お菓子とドリンクは、祠にもお供えをしておた。


 


 子狐のはじめてのおつかいは、無事に終わった。






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