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初日の出






 今日は、日の出前から裏山に入っている。


 


 林道を行けるところまで進み、そこから先は細い山道を登る。


 


 頂上を目指していた。


 


 カラスと子狐も一緒だ。


 


 カラスはショルダーバッグの中で寝ている。


 


 子狐は走り回りながらついてきていた。


 


 日の出前に頂上に着く。


 


「……寒いな」


 


 小さく呟く。


 


 持ってきたコーヒーを飲みながら、日の出を待つ。


 


 四十分ほどして。


 


 少しずつ空が明るくなってきた。


 


「……もう少しか」


 


 カラスを起こす。


 


 バッグから出してやる。


 


 やがて――


 


 日が昇る。


 


「……いいな」


 


 しばらく、そのまま眺めていた。


 


 十分に堪能してから、下山する。


 


 帰りに祠へ寄り。


 


 準備してきた、お餅を置いておせちといなり寿司、酒を並べる。


 


 軽く手を合わせる。


 


「……今年も頼む」


 


 それで終わりだ。


 


 ここで、初詣も済ませる。


 


 自分たちの分のおせちは弁当にして持ってきていた。


 


 カラスと子狐と一緒に食べる。


 


 カラスは、すでに酒を飲んでいる。


 


「……帰れるのか」


 


 少し不安になる。


 


 そんなことを考えていると――


 


 気配が変わる。


 


 天狗と九尾が現れた。


 


「……あけましておめでとうございます」


 


 一応、頭を下げる。


 


 二人も、そのまま座り込む。


 


 おせちを食べ、酒を飲み始めた。


 


「……自由だな」


 


 小さく呟く。


 


 横を見る。


 


 子狐がスマホを構えていた。


 


「……おい」


 


「投稿はするなよ」


 


 釘を刺す。


 


「……分かってる」


 


 一応、頷く。


 


 今度は――


 


 天狗と九尾がスマホに興味を持った。


 


 子狐が説明している。


 


 カラスも、自分も持っていると話していた。


 


「……お前ら」


 


 少しだけ呆れる。


 


 しばらくして――


 


 天狗と九尾がこちらを見る。


 


「……なんだ」


 


 何となく分かる。


 


 遠回しに、スマホを供えろと言っている。


 


「……まあ、いいか」


 

 

「奉納するか」


 


 軽い調子でそう言っておいた。


 


 二時間ほど過ごす。


 


「……先に帰る」


 


 そう言って立ち上がる。


 


 カラスは、酔いが覚めたら帰るらしい。


 


 子狐はそのまま残り、天狗と九尾と一緒にスマホをいじっていた。


 


「……ほんと自由だな」


 


 小さく呟く。


 


 家に戻る。


 


 両親に新年の挨拶をする。


 


 神棚に手を合わせ、軽く拝む。


 


「……今年も頼む」


 


 小さく呟く。


 


 そのまま部屋に戻る。


 


「……眠い」


 


 布団に入る。


 


 すぐに眠りに落ちた。


 

 


 昼に目が覚める。


 


「……よく寝たな」


 


 カラスと子狐は、まだ帰っていない。


 


 居間に行く。


 


 おせちと雑煮を食べ。


 


 特にやることもない。


 


 のんびりする。


 


「……今年も寝正月か」


 


 だらだらしながら、スマホをいじる。


 


 ふと思い出す。


 


「……ああ、あれか」


 


 奉納するスマホとタブレットを、それぞれ二つずつ注文しておく。


 


 ついでにSIMも付けるか迷う。


 


「……まあ、いいか」


 


 いくら使っても三千円で使い放題と宣伝しているキャリアを申し込む。


 


 祠で使えるかは分からない。


 


 だが、この辺は一応エリア内だ。


 


「……たぶん大丈夫だろ」


 


 適当に決める。


 


 夕方になる。


 


 カラスと子狐が帰ってきた。


 


「遅かったな」


 


「主たちからの土産」


 


 子狐が、小さな瓶を差し出す。


 


「……なんだこれ」


 


 中に透明な液体が入っている。


 


「龍の涙」


 


「……は?」


 


 思わず聞き返す。


 


「龍からもらってきた」


 


「……まじか」


 


 一瞬、言葉が止まる。


 


「これ、どうするんだ」


 


「飲めばいい」


 


 あっさり言う。


 


「……大丈夫なのか」


 


 聞く。


 


「あらゆる病を治す」


 


「死者も蘇る」


 


「……おい」


 


 フリーズする。


 


 とんでもないものだった。


 


「……返してこい」


 


 思わず言う。


 


「飲めばいいのに」


 


 軽い返事だった。


 


「……」


 


 少し考える。


 


 病が治るなら――


 


「……まあ、いいか」


 


 夕食のとき。


 


「珍しい酒がある」


 


 そう言って、両親にも出す。


 


 三人で飲む。


 


「……うまいな」


 


 味は、かなり良かった。


 


 だが――


 


 特に変化はない。


 


「……気のせいか」


 


 そう思って、その日は終わった。


 


 翌朝。


 


 朝食のとき――


 


「体が軽いな」


 


「腰が痛くない」


 


 両親がそんなことを言い出す。


 


「目もよく見える気がする」


 


 顔を見る。


 


「……」


 


 少しだけ、若くなったような気がした。


 


 だが――


 


「……気のせいか」


 


 何も言わない。


 


 そのまま飯を食べる。


 


 部屋に戻る。


 


「……やばいな」


 


 小さく呟いた。







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