秋口
夏が終わり、秋になろうとしていた。
ログハウスも完成した。
本来は、自分で使うつもりで建てたものだ。
だが――
「使っていい?」
子狐がそう言ってきた。
「……いいけど」
特に理由もなかったので、了承した。
結果――
「……なんでだ」
部屋を見渡す。
子狐が、いつものようにくつろいでいる。
ログハウスはあいつのものになったはずだ。
「ログハウス、使ってるのか」
「使ってる」
即答だった。
「……たまにだろ」
「うん」
悪びれもない。
結局、基本はこっちの部屋にいる。
「……まあ、いいか」
今さらどうこう言う気もない。
ログハウスには電気工事をしてもらい、電気は使えるようにした。
ついでに衛星リンクを契約して、取り付けてあるインターネットも使える。
この辺一帯、今年は豊作だった。
その礼も兼ねている。
「……やりすぎか?」
少しだけ思うが、まあいい。
外に出る。
伐採した丸太が、かなり溜まっていた。
カラスが乾燥させたものだ。
「……やるか」
斧を手に取る。
怪力を使い、丸太を割る。
スパスパと気持ちよく割れていく。
「……楽だな」
あっという間に薪の山ができた。
それを軽トラに積む。
近所を回る。
「持ってきたぞ」
声をかけると、喜ばれる。
この辺は高齢者が多い。
薪を用意するのも、なかなか大変らしい。
まあ、薪がなくても石油ストーブがあるので困るわけではない。
最近は新しい家に建て替えたところも多いが、古い家のままのところもある。
それに、灯油も高くなっている。
だから、お裾分けで薪を配っている。
「助かるよ」
そう言われる。
「……余ってるだけだ」
軽く返す。
配り終えて戻る。
売れそうな丸太は、別にしてある。
それは乾燥させず、トラックに積んで運ぶ。
近くの製材所に持っていく。
同級生が跡を継いでいるところだ。
「頼む」
「おう」
相場で引き取ってもらう。
たまに、前に祠と倉庫を頼んだ建築屋も買いに来る。
「いいの入ってるな」
そう言いながら、選んでいく。
「……まあな」
適当に返す。
売った金は、特に貯めてはいない。
カラスの酒代と――
供え物に回している。
「……循環してるな」
小さく呟く。
木を切って、売って、酒になって、供える。
妙な流れだが――
「……悪くないか」
そう思った。
翌日。
朝、目が覚める。
部屋を見渡すと――
「……いないな」
カラスと子狐の姿がなかった。
珍しい。
とりあえず朝飯を食べる。
食べ終わり、山に行こうと玄関を出る。
そのタイミングで――
「おい」
声がした。
振り向く。
カラスと子狐が戻ってきていた。
「……どこ行ってた」
「こっち」
子狐が言う。
「ログハウスまで来て」
「……なんだ」
素直についていく。
ログハウスに着く。
扉を開ける。
「……おい」
思わず声が出る。
中には――
キノコが山のように積まれていた。
「……なんだこれ」
「秋の味覚」
子狐が言う。
よく見ると、松茸も混ざっている。
「……すごいな」
思わず呟く。
量が尋常じゃない。
「山も豊作にしたから」
子狐が、誇らしげに言う。
「……なるほどな」
納得する。
本来なら、そろそろ松茸を探しに行こうと思っていた。
だが――
「……今年はいらないな」
これだけあれば十分だ。
ふと、別の塊に目がいく。
「……なんだこれ」
キノコの山とは別に、大きな塊があった。
よく見ると――
「……岩茸か?」
見たことはある。
だが、こんなサイズは初めてだ。
「これはどうした」
聞く。
カラスが答えた。
「俺だ」
「裏山の、人が行けない場所から取ってきた」
「飛んで、咥えてな」
「……なるほどな」
納得する。
「……全部、俺が買うか」
そう言う。
「値段は任せる」
「……いいのか?」
「いい」
即答だった。
「……じゃあ、それで」
そのまま買い取ることにした。
だが――
「どこで採った」
確認しておく。
「裏山」
「……他は?」
「採ってない」
即答だった。
「……そうか」
安心する。
よその山で勝手に採っていたら面倒になる。
「……ついでだな」
軽く呟く。
これだけある。
「近所にも配るか」
軽トラに積む。
いくつか分けて、お裾分けする。
「美味しそうね、いつもありがとね」
そう言われる。
「……うん」
適当に返す。
家にも持ち帰る。
「なんだいこれ」
母親が目を丸くする。
「キノコだ」
「……すごい量だね」
父親も覗き込む。
「こんなの見たことないぞ」
二人とも、素直に驚いていた。
「今夜はキノコだな」
そう言うと、母親が少し嬉しそうにする。
「いいねえ」
「ご馳走だね」
そんな会話が聞こえる。
「……まあ、たまにはいいか」
小さく呟く。
部屋に戻る。
「晩飯キノコだって」
ぽつりと呟く。
子狐が、少し嬉しそうにしていた。
カラスは、酒の方を気にしている。
「……分かりやすいな」
小さく笑った。




