初夏
もうそろそろ夏だ。
倉庫も完成した。
道具も車も、全部まとめて置けるようになった。
「……だいぶ整ってきたな」
山を見渡す。
最初とは別の場所みたいだった。
カラスは、毎日数時間だけ木材の乾燥をしている。
風を操り、一気に乾かしていく。
「……ほんとにやるんだな」
見ていて少し感心する。
一方――
「……お前は何してるんだ」
子狐を見る。
部屋で寝転がりながら、スマホをいじっていた。
「見てる」
「何をだ」
「動画」
「……そうか」
特に何もしていない。
まあいい。
スマホは、セットアップして渡してある。
カラスはタッチペンを咥えて操作していた。
器用なものだ。
子狐は、人間の子供の姿に変化して使っている。
耳と尻尾は、そのままだが。
「……それ、外ではやるなよ」
事前に言っておいた。
両親に見られたら、さすがに面倒だ。
「分かってる」
本当かどうかは怪しいが。
まあ、今のところ問題は起きていない。
木材の乾燥も、目処が立ってきた。
「……そろそろか」
小さなログハウスを建てる計画を立てる。
自分で使う分だ。
そこまで大きくはしない。
それと――
「椎茸もやるか」
原木栽培も考えている。
木はある。
乾燥もできる。
条件は揃っていた。
「……悪くないな」
やることは増えたが、嫌ではない。
むしろ――
「……楽しいな」
ぽつりと呟く。
カラスは外で木材を乾燥させている。
子狐は部屋で動画を見ている。
やっていることはバラバラだが――
「……まあ、いいか」
翌日から山仕事をしながら、ログハウスを建て始めた。
八畳ほどの小屋だ。
電気もガスも水道もない、ただの山小屋。
「……まあ、これでいいか」
自分で使うだけだ。
そこまで立派なものはいらない。
数ヶ月かけて、のんびり作る予定だ。
――そんなある日。
カラスと子狐が、こちらを見ていた。
「……なんだ」
「小遣いがほしい」
カラスが言う。
「……は?」
思わず聞き返す。
「必要だ」
「……何に使うんだ」
「使う」
答えになっていない。
子狐も頷いている。
「……まあ」
少し考える。
カラスは木材の乾燥を手伝っている。
あれは、かなり助かっている。
だが――
「……お前は?」
子狐を見る。
「自宅警備」
「……それだけだろ」
特に何もしていない。
だが、完全に追い出す気もない。
「……まあ、いいか」
ため息をつく。
「月三万でいいか?」
二匹が同時に頷く。
「分かった」
少し考える。
「ただし」
指を一本立てる。
「これから欲しいものは、小遣いから出せ」
「……分かった」
カラスが即答する。
子狐も頷く。
その直後――
「じゃあ」
子狐が言う。
「三万分、林檎のカードで」
「……は?」
「今すぐ」
「……お前」
完全に理解している。
「……まあ、いいか」
どうせ同じだ。
スマホを取り出し、購入する。
「ほら」
コードを見せる。
子狐の目が輝く。
「……やるな」
すぐに入力していた。
「……何してるんだ」
「ゲーム」
「……そうか」
最近、ずっとスマホを触っていると思ったらそれか。
「……ほどほどにしとけよ」
「分かってる」
本当かは怪しい。
カラスは外で、いつものように木材を乾燥させている。
子狐は部屋で、ゲームに夢中だ。
「……バランス悪いな」
小さく呟く。
だが――
「……まあ、いいか」
どちらも、それなりに役には立っている。
そう思いながら、工具を手に取る。
ログハウスの作業に戻った。




