表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/39

初夏





 もうそろそろ夏だ。


 


 倉庫も完成した。


 


 道具も車も、全部まとめて置けるようになった。


 


「……だいぶ整ってきたな」


 


 山を見渡す。


 


 最初とは別の場所みたいだった。


 


 カラスは、毎日数時間だけ木材の乾燥をしている。


 


 風を操り、一気に乾かしていく。


 


「……ほんとにやるんだな」


 


 見ていて少し感心する。


 


 一方――


 


「……お前は何してるんだ」


 


 子狐を見る。


 


 部屋で寝転がりながら、スマホをいじっていた。


 


「見てる」


 


「何をだ」


 


「動画」


 


「……そうか」


 


 特に何もしていない。


 


 まあいい。


 


 スマホは、セットアップして渡してある。


 


 カラスはタッチペンを咥えて操作していた。


 


 器用なものだ。


 


 子狐は、人間の子供の姿に変化して使っている。


 


 耳と尻尾は、そのままだが。


 


「……それ、外ではやるなよ」


 


 事前に言っておいた。


 


 両親に見られたら、さすがに面倒だ。


 


「分かってる」


 


 本当かどうかは怪しいが。


 


 まあ、今のところ問題は起きていない。


 


 木材の乾燥も、目処が立ってきた。


 


「……そろそろか」


 


 小さなログハウスを建てる計画を立てる。


 


 自分で使う分だ。


 


 そこまで大きくはしない。


 


 それと――


 


「椎茸もやるか」


 


 原木栽培も考えている。


 


 木はある。


 


 乾燥もできる。


 


 条件は揃っていた。


 


「……悪くないな」


 


 やることは増えたが、嫌ではない。


 


 むしろ――


 


「……楽しいな」


 


 ぽつりと呟く。


 


 カラスは外で木材を乾燥させている。


 


 子狐は部屋で動画を見ている。


 


 やっていることはバラバラだが――


 


「……まあ、いいか」


 



 


 翌日から山仕事をしながら、ログハウスを建て始めた。


 


 八畳ほどの小屋だ。


 


 電気もガスも水道もない、ただの山小屋。


 


「……まあ、これでいいか」


 


 自分で使うだけだ。


 


 そこまで立派なものはいらない。


 


 数ヶ月かけて、のんびり作る予定だ。


 


 ――そんなある日。


 


 カラスと子狐が、こちらを見ていた。


 


「……なんだ」


 


「小遣いがほしい」


 


 カラスが言う。


 


「……は?」


 


 思わず聞き返す。


 


「必要だ」


 


「……何に使うんだ」


 


「使う」


 


 答えになっていない。


 


 子狐も頷いている。


 


「……まあ」


 


 少し考える。


 


 カラスは木材の乾燥を手伝っている。


 


 あれは、かなり助かっている。


 


 だが――


 


「……お前は?」


 


 子狐を見る。


 


「自宅警備」


 


「……それだけだろ」


 


 特に何もしていない。


 


 だが、完全に追い出す気もない。


 


「……まあ、いいか」


 


 ため息をつく。


 


「月三万でいいか?」


 


 二匹が同時に頷く。


 


「分かった」


 


 少し考える。


 


「ただし」


 


 指を一本立てる。


 


「これから欲しいものは、小遣いから出せ」


 


「……分かった」


 


 カラスが即答する。


 


 子狐も頷く。


 


 その直後――


 


「じゃあ」


 


 子狐が言う。


 


「三万分、林檎のカードで」


 


「……は?」


 


「今すぐ」


 


「……お前」


 


 完全に理解している。


 


「……まあ、いいか」


 


 どうせ同じだ。


 


 スマホを取り出し、購入する。


 


「ほら」


 


 コードを見せる。


 


 子狐の目が輝く。


 


「……やるな」


 


 すぐに入力していた。


 


「……何してるんだ」


 


「ゲーム」


 


「……そうか」


 


 最近、ずっとスマホを触っていると思ったらそれか。


 


「……ほどほどにしとけよ」


 


「分かってる」


 


 本当かは怪しい。


 


 カラスは外で、いつものように木材を乾燥させている。


 


 子狐は部屋で、ゲームに夢中だ。


 


「……バランス悪いな」


 


 小さく呟く。


 


 だが――


 


「……まあ、いいか」


 


 どちらも、それなりに役には立っている。


 


 そう思いながら、工具を手に取る。


 


 ログハウスの作業に戻った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ