《はじまりの話》走 / 原 玲 1:手応え
[背景: 学校グラウンド]
教師: 原、タイム、少し縮まったな。
玲: ありがとうございます。
玲: (タイム……実感、あんまりないな)
玲: (先生、俺より嬉しそう)
教師: この調子なら、次の大会、上位狙えるぞ。
玲: はい、頑張ります。
玲: (……大会、あんまり興味ないんだけどな)
玲: (でも、そんなの、言える空気じゃない)
教師: 今日はフォームも良かったぞ。
玲: はい。
玲: (フォームとか、効率とか、戦略とか)
玲: (わかる、けど)
玲: (でも、俺が走りたかったのって、そういうことだっけ)
部員A: 全国いけるんじゃね?
部員B: 今年はチャンスだよな。
玲: (全国、とか)
玲: (上位、とか)
玲: (なんか遠いな)
玲: (小さい頃は、走り回ってるだけで、楽しかったのに)
玲: (体を動かしているだけで、それで良かったのに)
玲: (今は、どれだけ走っても、手応えがない……)
玲: (何が違うのかな……)
[背景: 通学路 朝]
チラシを配っている人: よろしくお願いします。
玲: (なんだろう)
玲: (何か配ってる)
高校生A: おい、アイドルVTuberだって。
高校生B: お前、やってみろよ。
高校生C: 無理だって。
高校生A: 捨てんなよ。
高校生B: 悪いやつ。
高校生C: 良いだろ、別に、ゴミだし。
[背景: 捨てられたチラシ]
男子高校生: ……。
[背景: 捨てられたチラシを拾う手]
玲: (あれは……誰だっけ)
玲: (見覚えはある。確か、隣のクラス……)
[背景: 通学路 朝]
チラシを配っている人: 拾ってくれてありがとうございます。
男子高校生: ……。
玲: ……。




