第6話 「閻魔大王、限界」
《地獄連携回線、接続中——》
天界の通信装置が、嫌な音を立てた。
「え……
なんか……
音、怖くないですか……?」
オチルが言い終わる前に、
画面が弾けるように開いた。
『――おい』
低く、重い声。
画面いっぱいに映るのは、
威厳、責任感、過労が凝縮された存在。
閻魔大王である。
『説明してもらおうか』
空気が、凍った。
「は、はい……
あの……その……」
オチルが言葉を探していると、
横から元気すぎる声が割り込んだ。
「了解ッス!!
地獄連携担当、アバレルです!!」
筋肉。
とにかく筋肉。
「問題は気合で解決可能ッスか!?」
『黙れ』
即却下。
続いて、別方向から突撃音。
「うおおおお!!
地獄と聞いたら即出動!!
ミサイル、行きます!!」
「ちょ、通信中!!
突っ込まないで!!」
遅かった。
『……神よ』
閻魔大王の額に、青筋が浮かんだ。
『最近な』
『地獄が混んでいる』
「え?」
『しかもだ』
画面が切り替わる。
そこには――
整然と並ぶはずの地獄が、
大混雑していた。
『理由が分かるか?』
オチルは震えながら答える。
「……えっと……
世界が……
ちょっとだけ……」
『ちょっとではない』
テナレテルが即座に補足する。
「進化生物の出現、
天候異常、
価値観の混乱により、
魂の判定が困難になっています」
『そういうことだ』
閻魔大王は深く息を吐いた。
『善悪の基準が崩れている』
『結果、全部グレーだ』
「グレーなら……
天国……?」
オチルが恐る恐る言う。
『増える』
「地獄……?」
『溢れる』
「……詰み?」
『詰みだ』
即答だった。
その時、アバレルが拳を打ち鳴らした。
「ならッ!!
地獄を広げればいいッスね!!」
『広げるな』
ミサイルが前に出る。
「了解ッス!!
じゃあ魂を間引きましょう!!」
「ダメぇぇぇ!!」
オチルの悲鳴が天界に響いた。
閻魔大王は、こめかみを押さえた。
『……絶対神よ』
「は、はい……」
『私はな』
『地獄を、
真面目に運営している』
その一言が、重かった。
イエルが、そっと割って入る。
「でも……
最近は……
誰も地獄を嫌がらなくなってます」
『……は?』
「住みやすくなったって(^^)……」
『誰だそんな改修したのは』
全員、無言でオチルを見る。
「ぼ、僕じゃないです!!
たぶん……
進化生物が……」
『ほう』
閻魔大王の目が、さらに鋭くなった。
『つまり』
『地獄のブランド価値が
落ちていると』
「言い方!!」
沈黙。
そして、閻魔大王は静かに言った。
『要望を出す』
「よ、要望……?」
『これ以上、
世界を面白半分で
弄るな』
オチルは全力で頷いた。
「はいっ!!
本当にすみません!!」
その直後。
《進退管理課:通知》
《新種生物、地獄見学ツアー開始》
「……え?」
全員が凍りつく。
閻魔大王は、静かに立ち上がった。
『……神よ』
『一度』
『直接、地獄に来い』
通信、強制終了。
天界。
沈黙。
ミサイルがぽつり。
「……行きます?」
アバレルが拳を握る。
「行きましょうッス!!」
オチルは泣きそうになった。
「……神って……
出張もあるんですね……」
イエルが微笑む。
「ありますよ
しかも大体、怒られに(^^)」
こうして――
次回、神・地獄降臨確定。
世界は、
天界と地獄を巻き込みながら、
ますますどうしようもなくなっていく。




