第5話 「ちょっと雨を降らせただけなのに」
「次の業務は……
天候管理……」
オチルは震える指でパネルを操作していた。
「雨を……
少し……
降らせるだけ……」
画面には、ある国の干ばつ地域。
(これはいいこと……
善行……
ポイント稼げる……)
オチルは慎重にスライダーを動かした。
降水量:+1
「よし……
完璧……」
5分後。
《天候異常警報》
「え?」
テナレテルの声が即座に響く。
「報告します。
該当地域、現在――」
映像が切り替わる。
大洪水。
「+1とは……?」
オチルの声が消えた。
「単位が違います」
テナレテルが冷静に説明する。
「神の“+1”は、
人類基準で+100です」
「そんな注意書きありませんでしたぁ!!」
さらに警報。
《副作用発生》
「まだあるんですか……?」
イエルがにこやかに頷いた。
「あります(^^)」
嫌な予感しかしない。
世界各地で異変が連鎖する。
別地域で豪雪
海上で謎の台風発生
砂漠に雷雲
「え、ちょっと待って!?
雨だけじゃ……」
テナレテルが即答。
「天候は連動しています」
「知らなかったです!!」
クレーム対応課、即フル稼働。
《神、雨頼んでない》
《干ばつは解消されたが国が沈んだ》
《雪降る予定なかったんだけど》
「誰か止めてぇ!!」
その時、イエルがぽつり。
「でも……
緑は増えましたね(^^)」
「評価そこ!?」
オチルは叫んだ。
「も、戻します!
元に戻せば……!」
進退ステッキを握る。
「天候は進退管理じゃありません」
テナレテルの冷静なツッコミ。
「ですよねぇぇぇ!!」
最終的に。
「提案します」
テナレテルが資料を表示する。
洪水地域 → 水の都として観光化
豪雪地帯 → 冬の名所
砂漠雷雲 → 発電利用
「……災害を……
観光資源に……?」
「はい。
神的解決です」
オチルは机に突っ伏した。
「……神って……
自然を守る存在じゃ……」
イエルが優しく微笑む。
「結果的に、
人類は適応します(^^)」
「それ、全部丸投げですよね……?」
その頃、天国。
サロンパス12神は天気を眺めていた。
「最近、景色いいな」
「神、センスあるわ」
――評価はなぜか高かった。
こうして、
“ちょっとの雨”は世界の名所を増やした。
世界は今日も、
ゆるく、雑に、
神に振り回されている。




