第4話 「神様、ちょっと出てきてもらっていいですか」
《クレーム対応課、起動しました》
無機質なアナウンスと同時に、
オチルの前に無数のウィンドウが開いた。
「え……ちょ……
多くない……?」
画面いっぱいに並ぶ、
“祈り”という名のクレーム。
《最近、隣人が増えました》
《会社の上司が目多すぎます》
《人類って私たちだけでしたよね?》
《神、仕事して》
「最後、完全に文句じゃないですかぁ!!」
「基本ルールを説明します」
淡々とした声。
テナレテルが横に立っていた。
「クレーム対応課は、
読むだけです」
「返事は……?」
「しません」
「解決は……?」
「しません」
「じゃあ何の意味が……」
「精神修行です」
地獄だった。
その横で、イエルがにこやかに頷く。
「大切なんですよ
“自分が神だと自覚する時間”」
「自覚したくないです……」
さらに警報。
《重大クレーム:至急》
画面が赤く点滅する。
《進化生物、記者会見を開始》
「え?」
全員が固まった。
映像が切り替わる。
そこには――
スーツ姿の多眼二足歩行生物が立っていた。
『我々は脅威ではありません』
『共存を望みます』
フラッシュ。
拍手。
人間、普通に納得している。
「受け入れてる!?
人類、順応力高すぎません!?」
テナレテルが冷静に分析する。
「違和感を“説明される前”に定着しました。
対処が遅れましたね」
「まだ5分ですよ!?」
クレームがさらに増える。
《多様性ってそういう意味?》
《神、説明責任は?》
《なんかもうどうでもよくなってきた》
オチルは机に突っ伏した。
「……僕……
神、向いてない……」
その時、イエルがそっと言った。
「でもオチル、
誰も死んでませんよ?」
「え?」
「世界は……
ちょっと変になっただけです」
さらっと言うな(二回目)。
テナレテルが続ける。
「クレーム処理方針を提案します」
違和感を日常化
文明に組み込む
なかったことにしない
「……それ……
解決なんですか……?」
「はい。
神として最も楽な解決策です」
オチルは、震える声で言った。
「……神って……
謝らない存在なんですね……」
「正確には」
テナレテルが補足する。
「謝ると負けです」
「ひどい世界だ……」
その頃、天国。
サロンパス12神は、
雲の上でお茶会をしていた。
「最近、地上賑やかだな」
「多様性ってやつだろ」
「神、頑張ってるな」
――全部オチルの仕事だった。
こうして、
クレーム対応課は“対応しない”ことで回り始めた。
世界は、
ゆるく、雑に、
めちゃくちゃになっていく。




